~残念なイケメンと出会う俺の冒険~
いや、どこに定期更新する義務があるん?
(じゃあお前の小説ブックマークから外していい?)
もちろん俺らは抵抗するで?
(どう抵抗するん?)
ステマで!
(君たち何回まで更新してるん?)
都合8回!
「・・・んなことはこの際どうでも良いか。このテントがモンスター避けになんなら、しばらくの間使わせてもらおう・・・」
俺はフラフラした足取りでそのテントの中に転がり込んだ。
「お~、明るい!照明も付いてる!なかなか本格的なテントだな。やっぱり誰かが定期的に使ってるテントなのか?」
目立った備品は無いが、作りは丈夫で外から見た通りなかなかに広い、かなりしっかりしたテントだった。
この中にいさえすればあんな凶暴なモンスターに襲われることはない。
俺はそんな安心感からテントの床に倒れこみ、体の力を・・・
「・・・うぉっ!!」
抜こうとした俺は床の異変に気づき、思いきり飛び上がった。
「何だ、何だ!このデカい魔法陣は!!」
テントの床には、テントの外側に赤いインクで書かれていた魔法陣とは模様の違う、大きな魔法陣が青いインクで書かれていたのだ。
「外の赤いやつとは明らかに模様が違う。こっちの方がずっと複雑だな・・・ 外の魔法陣がテントの周囲に向かって認識阻害の魔法を編んでるとしたら・・・こっちはいったい何の魔法を編んでるんだ?」
俺は何かこの魔法陣についての説明がないものかとテントの内側の壁を見渡した。
すると・・・
「おっ、何だこれ。貼り紙が・・・」
壁に不自然に貼り紙がしてあるのに気づいた。
「なになに・・・『蒼き魔法陣の起動、それ則ち安息の地への道を解放するもの也。魔法陣を起動したくば、魔法陣の中央に立ち、解放の呪文を口にせよ』か・・・ この『安息の地』っていうのはセーフゾーンのことで良いんだよな? だとすると、そこへの道が解放されるってことは・・・もしかしてこの魔法陣を起動すればセーフゾーンにワープできるってことか!?」
だとしたらこの魔法陣が編んでる魔法はさしずめ『空間転移』の魔法ってとこか・・・
いや、待てよ?そんなうまい話があるか?
ここは神々を自分から遠ざけるために作られた難易度ナイトメアモードの異世界。
わざわざこんな裏技的な装置を作るだろうか?
もしかしたらこの魔法陣は罠で、起動したら認識阻害の効果が解ける上に爆音が鳴り響いてモンスターが押し寄せてくる~なんてオチかもしれない。
しれないが・・・そんな大層な罠を作るならわざわざ認識阻害なんて付けないか。
そんなの付けずにスタート地点の近くに置いといた方がよっぽど罠として効率が良い。
だとしたら・・・これは本物ってことで良いんだよな?
まぁ、とは言っても罠の確率も0ではない。そういう思考の裏をかいた巧妙な罠かもしれない。
罠かもしれないが・・・本物の可能性があるならやらない訳にはいかねーよな。
リーベは俺なんかのために命を張ってくれたんだ。
ここで俺が罠の可能性にビビって何もしなかったら、それこそリーベに合わせる顔がない!
俺は1度大きく深呼吸をして魔法陣の中央に立った。
もしこの魔法陣が本物なら俺はこの森の先のセーフゾーンまでワープして行ける。
1度セーフゾーンまで行けさえすれば、恐らく冒険に必要な物はあらかた手に入るはずだ。
武器、防具、冒険に役立つ各種アイテム。このアウトゾーンの地図だってあるかもしれない。
そうすれば俺自身の安全がある程度確保されるし、スタート地点からリーベを安全にセーフゾーンまでエスコートすることだってできるだろう。
よし、もう迷わない!やってやろう!
意気込んだ俺は貼り紙に書かれている『解放の呪文』に目を通した。
『解放の呪文:アルバス・イスラバードの真名』
「・・・?」
アルバス・イスラバード?
アルバス・イスラバードって・・・あの?
つい最近、神アニメとしてネットで話題になった『氷槍のヴィッセル』に出てくるあいつだよな?
そうそう、敵の第2幹部として登場した時に主人公たちに自己紹介をしたけど、名前が長すぎて主人公たちに『アルバス・イスラバード』でまとめられたんだよな。
そのシーンが面白くて俺自身何度も見たし、ネット上にも「おまえら、氷槍のヴィッセルに出てきた例のアイツの名前覚えたかwww」みたいなスレが乱立したから、名前は鮮明に覚えてるが・・・
ムズくね?
これ分かる奴、この異世界はおろか日本にだってそうそういねーぞ?
まぁ、裏技を解放する呪文だから難しいのも当然か・・・
俺は一息で名前を言うためにまた大きく深呼吸をして、口を開いた。
「アルバス・クラッスス・オルガネート・ジャン・フォン・マクベス・ヴァスヴァンドゥ・ソニーテルス・ルクレティウス・ルクセンブーク・モスマック・ロッテリア・ロイヤルガスト・ジョニーズ・サイラーク・イスラバード3世!」
俺が早口で名前を捲し立てると、足元の魔法陣が黒く輝き出した。
てっきり青いインクで書かれた魔法陣だから、光は青いもんだと思ってたが・・・
だが足元の空間が徐々に歪み出したのを見るに、どうやら罠ではなさそうだ。
待ってろよ、リーベ!借りは必ず返すぞ!
俺が必ずスタート地点におまえを助けに行くからな!
俺がそう強く決意した瞬間、俺の視界は暗黒に包まれた。
どれくらいの時間が経っただろうか。
俺の意識は朦朧としたままではあるが静かに覚醒した。
まだ少し頭がガンガンする・・・
ダメだ、これはダメなタイプの頭痛だ。
よし、もう少し寝ていよう。
と、引きこもり生活によって極限まで鍛えられたサボりスキルを発揮しようとした瞬間、俺の頭にふと涙を流すリーべの顔が浮かんだ。
そうだ、こうしちゃいられねー!!
俺は一刻も早くリーべを助けに行かねーといけねーんだ!!
リーべの顔により完全に意識を覚醒させた俺は勢いよく上体を起こして辺りを見渡した。
するとそこは・・・俺の部屋?
いや、雰囲気は俺の部屋っぽいけど飾ってあるフィギュアとかタペストリーが俺が飾ってるやつと全然違うな。
見た感じ、二次元オタクの部屋っていうのは間違いないだろうが・・・これはどういうことだ?
セーフゾーンに着くんじゃなかったのか?
これはいったい・・・?
「オフ会0人ってwww0人って何だwww」
色々考えていた俺の背後から突然男の声が飛んだ。
驚いた俺は勢いよくその方向を振り向いた。
すると、そこには・・・
「こいつはwwwこんなに面白い人間が下界にいたとはwww」
黒髪長髪でキリッとした目のイケメンが、普段の俺レベルにだらしないジャージ姿で、パソコンで動画を視ながら、腹を抱えて笑っていた。
傍らには食いかけのポテチやらティッシュのゴミが散乱している上に、部屋の反対側にはいくつものゴミ袋が無造作に積まれている。
・・・こいつが誰かは知らんが、これだけは言える。
こいつは世に言う、『残念なイケメン』というやつだ!!
「はー、腹が痛いwwwこいつ我を殺す気かwwwゴッドスレイヤーwwwこいつにゴッドスレイヤーの称号を与えようwww」
その残念なイケメンは床に置いてあった飲み物を取ろうと、視線をパソコンから離した。
「いやはやいやはや、笑いすぎた・・・ん?」
そこでやっと残念なイケメンは俺の存在に気づいた様子だ。
そいつは不思議そうな顔で俺に尋ねた。
「誰だ、貴様は?」
「こっちのセリフだ!!」
この残念なイケメンが誰か、もう分かるよね。