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ESCAPE from 異世界ナイトメア  作者: プリン皇帝
6/12

第1章~サバイバル生活と化した俺の冒険~

小説のデータが2回飛びました。

SAN値が極限の中、3度目の正直で書き上げました。

突然だが、俺はマンガ、アニメ、ゲームやライトノベルが大好きだ。



「おいいいいいい!!!! ラグナ、てめーどういうつもりだぁぁぁ!!!!!!」



バトル系、サスペンス系、恋愛系など幅広い様々なジャンルの作品を見てきたが、俺が特に好きなのはアドベンチャー系の作品だ。

主人公がロマン溢れる新天地で気の向くままに大冒険を繰り広げるのが、見ていて本当に痛快なのだ。



「スタート地点がアウトゾーンってなんだ、どういうことだ!!! 『はじまりの町』的なセーフゾーンまで装備なしLv.1の貧弱ステータスで歩いて行けってか!!??」



最近の流行で言えば、現代社会で粛々と暮らしていた無個性な主人公がひょんなことから別次元の世界に転移、もしくは転生して大活劇を繰り広げる作品、いわゆる『異世界系』の作品がそれにあたる。



「装備もねぇ!地図もねぇ!チュートリアルもねぇ! だからセーフゾーンの方角はおろか自分の体力すらわかんねぇ! おい、はじまりの町に着く前にエンドロールが始まりそうなんだけどぉぉぉぉ!!??」



そのため、俺は近頃ずっと異世界という存在に憧れていた。

もちろん、異世界なんていうのは架空の存在で現実にはそんなものは存在しない、なんていうことは分かっていた。

だが、「もし本当に異世界があったら・・・」という空想は俺の頭からどうしても離れなかったのだ。



「おまえ、絶対履き違えてる!!! 『難ゲー』と『無理ゲー』を絶対履き違えてる!!! ラグナ、もし聞こえてるなら考えてみろ!!! ポ○モン一匹も渡されずに草むらに放り出されるゲームが楽しいか!? 意味もわからず1番道路で目の前が真っ暗になるゲームが楽しいか!? マサ○タウンであの世にサヨナラバイバイするゲームが楽しいか!?」



俺が今日まで抱き続けていたそんな空想は突然現実となった。

俺は神様との不思議な巡り合わせでファンタジー溢れる異世界に降り立つこととなったのだ。

これは紛れもなく夢でも空想でもない。

俺が今生きている『現実』だ。



「無駄に8個もエリア創ってんなら難易度の調節くらいしろ!! ナイフとか青銅の盾とか贅沢言わねーから『ひのきのぼう』と『おなべのふた』くらい支給しろや!! 


・・・あぁ、もう嫌だ、本当に、もう・・・もう・・・」



そう、俺は念願の異世界に降り立った。


降り立った・・・降り立った・・・のですが・・・


すみません。



「こんな異世界嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



もう日本に帰らせてください。







第1章~死霊と忍と、時々女神~







「ちょっ、ちょっと!!龍牙、しっー!しっー!大きな声出さないで! 変なモンスターとか出て来ちゃったらどうすんのよ!」


「はぁー・・・はぁー・・・す、すまん。この展開は流石に想像してなかったから心の整理が付かなかったんだ」


「も~、しっかりしてよね! この世界だとあなただけが私の頼りなんだから!」


「お、おぅ・・・もう大丈夫だ。つーか、今言いたいこと全部言ったから逆に頭ん中スッキリしたぜ」



そうだ。冷静に考えろ、俺。


俺はこんな所でグチグチ言って立ち止まっている場合じゃない。


本部の神々が調査の末に発見した規則を信じるなら、俺はこの世界で死んだら普通に死ぬ。

日本にはおろか天界にだって帰れない。そのまま永眠する。


それに、たぶん途中で異世界から出ることも出来ない。

天界から戻ってくる神々がことごとくボロボロなのが良い証拠。

少し探索しては安全なうちに天界に戻って情報共有、なんてチキンプレイが許されるならどれだけハードモードな異世界でもいつかはクリアされちまうからな。

恐らく、この世界の創造主であるラグナと直接会わない限りこの世界からの脱出は不可能なんだろう。



だとしたら、今の俺に選択肢はない。


『一刻も早く、生きてセーフゾーンに辿り着く』


それこそが今の俺がすべきこと。俺を頼りにしてくれているリーべのためにも、もちろん自分のためにも、だ!!










「・・・さて、それじゃあリーべ。今から早急に俺達がすべきことが何か分かるか?」



「早急にすべきこと・・・? そんなの一刻も早くセーフゾーンに・・・」


「いや、それはあくまで大目標。武器も防具も無く、セーフゾーンの方角さえ分からない今、モンスターが暮らすこの森林をむやみやたらに歩き回るのはどう考えても自殺行為だ。 それに・・・」


「それに?」



俺は木々の隙間からかすかに見える空を指差した。



「森の上空を見てみろ。木に隠れて見えづらいけど空が少し赤みがかってるだろ?」


「え~?・・・あっ、ほんとだ!赤い赤い! でもあれって夕焼け?それとも朝焼けかしら?」


「う~ん、気温を考えるとたぶん夕焼けだな。それに俺が天界に行ったのが午後4時位だったよな?だとしたら、今頃日本は午後5時位のはずだ。 まぁ、これは完全に俺の推測だが、きっとこの世界の時間と日本の時間はリンクしてんだよ。日本支部のラグナが創った世界だ、あり得ない話じゃねーだろ?」


「うんうん、確かにそうかも! ん?あれが夕焼けってことはつまり・・・」



俺は指をパチンと鳴らして『ご明察』と言わんばかりにリーべを指差した。



「そうだ、たぶんもうすぐ夜が来る。こんな人工物もなんもない深い森林だ。夜になったら自分の手の先すら見えなくなるぞ」


「えぇ~!!?? ど、どうするの?そんなときに夜行性の凶暴そうなモンスターに襲われちゃったりしたら!! 二人揃ってゲームオーバーじゃない!!」


「おいおい、そう慌てんなって! だから、そうだな・・・まぁ武器の調達とかこの世界の基本システムを調べるとか色々としなくちゃいけないことはあるが・・・まず第一にやんなきゃいけねーのは拠点作りだ。モンスターの目を欺けてゆっくり休息を取れるような拠点が無けりゃあ、夜を生き延びることも今後の作戦を立てることもできねぇからな」


「な、なるほど~!龍牙って頭良いのね!! やっぱりあなたを連れてきて正解だったわ!!」



リーべは目を輝かせながら体をグイッと俺の方に近づけてきた。


もう!いちいち仕草がかわいいなぁ、こいつ!


「おいおい、褒めても何にも出ねぇぞ?」


気を良くした俺は得意気に続けた


「よし!じゃあ拠点として簡素なテントでも作るかね。そこら辺の枝を重ねたり草を結んだりすりゃあ、迷彩効果のあるそれなりのテントができんだろ」


「おー!良いじゃない良いじゃない!なんだかサバイバル生活っぽいじゃない!!」


「ハハッ、まさか俺も異世界でサバイバル生活する羽目になるとは思わなかったけどな。 よし、じゃあまずテントの材料集めから始めるか! 時間をかけすぎるのもアレだし、このスタート地点の近場で手早く集めよう。俺はあっちでリーべは・・・」


「・・・ん?」


リーべは不思議そうに小首を傾げた。


「・・・ん?どうかしたか?何か気になることでも...」



「材料集めって私もやるの?」


「ん?あぁ、そりゃあそうだろうよ」


「えっ?でも私疲れちゃうわよ?」



「えっ?」



「えっ?」



急に何を言い出すんだ、こいつ



「・・・枝とか拾っててトゲとか刺さったら痛いでしょ?」



ホントに何を言い出すんだ、こいつ



「動くとお腹すくし・・・」


「おい、おまえ」


「お、おまえっ!? それって私のことっ!?」


リーベさん・・・もとい、リーベは状況が呑み込めないのか辺りをキョロキョロと見渡した。


「おまえしかいねーだろ」


「ねぇ!何!?急にどうしたの!?」


「おまえ言ったよな? 異世界だと俺とおまえは対等だって、そんで俺のことを身体をはって危険から守るって、言ったよな?」


「いや、まぁ、そりゃあ言ったけど!でもねでもね、龍牙よく考えて! 私は神様! あなたは人間! 私とあなたの間には何をどうしたって越えられない差があって・・・」


「だからその差が無くなるのがこの異世界なんだろーが。さっき自分でそう言ってたろ、矛盾してんぞ」


「ぐっ・・・!良いとこ突くわね! でもねでもね、私は神様ってことを差し引いても女の子なのよ! あっ、そうよ!神の力を失ったんですもの!私はただのかわいい女の子なのよ!? そりぁあもちろん重要な局面ならあなたが死なないように立ち回るつもりだけど、こういう泥臭い労働をするのはどう考えても龍牙の仕事でしょ? そもそも龍牙は私みたいな世界中の男たちを虜にしちゃうレベルの美少女と一緒に冒険できるっていう時点で幸せなのよ!?本当はお金を払ってもらいたいところだけど勘弁してあげる!ほら、私は休んでるからちょちょいと枝をグボハァァァ!!!!!」


俺の全身全霊の怒りを込めたボディーブローがリーべの鳩尾にクリーンヒットした瞬間、リーべはかわいい女の子の口からは絶対出ないであろう呻き声をあげてそのままぶっ倒れた。



「・・・すまん、リーべ。この世界ではFF(フレンドリー・ファイア)が有効なのかどうかを調べたくなったんだ。その様子を見るとどうやら有効みたいだな。 良かった、ストレスを溜め込まなくて済むぜ」


「良くなーーーーーーい!!!!!!」


リーべはフラフラした足取りで、しかし勢い良く立ち上がって叫んだ。


「おい、うるせーぞ、静かにしろ! 変なモンスターが寄って来ちまうだろーが!」


「どの口が!どの口が言うのよ、このDV男!! あんた今自分が何したか分かってんの!? 神を・・・神に暴行を加えたのよ!?」


「ちげーよ。自分のことを神だと思ってる精神異常クソビッチに暴行を加えただけだ」


その言葉を聞いた瞬間、リーべが血相を変えて俺に掴みかかってきた。


「あ、あんた今なんつった!?あたしのことクソビッチっつった!? 私みたいな純潔の象徴である愛の女神をクソビッチ呼ばわりした!? あんた天界でのあの素直な態度は何だったの!?とんでもない本性を隠してたのね!?」


「神様相手に無礼を働いたら何されるかわかったもんじゃねーからな、確かに猫被ってたのは認める。でもな、別におまえが人間の身体になったから殴ったわけじゃねーぞ?別に普通の女の子相手なら何されても暴力なんて振るわねーよ」


「はーー?? じゃあ何で今さっき私はあんたにぶん殴られたわけ?」



とうとう堪忍袋の緒が切れた俺はリーべの胸ぐらをグイッと掴み返した。



胸元がバックリ開いたリーべの服の胸ぐらを掴むなんて冷静に考えればセクハラ以外の何物でも無いが、頭に血が昇っていた俺はそんなことを気にもせず思いきり怒鳴り散らした。



「おまえが自分の見た目の良さとか女の権利を盾にして男を利用しようとするどうしようもない性格ブスだからだよっ!!!!

おまえ、こんな命がけの異世界で女の権利を主張してギャーギャー喚くとかふざけてんだろ!!頭沸いてんのか!!」


「うっ、うるさい!うるさい! 私は偉いの!かわいいの!龍牙も含めて男はみんな私の下僕なの!!私に良いように使われてればいいの!!」


「このやろ!てめぇも猫被ってやがったな!! あぁ~もうイライラする!!分かった分かった!話が進まねぇ!おまえはここで休んでろ! 俺が拾ってきて・・・」



俺はクソ自己中なリーべに愛想をつかし、枝を拾いに行こうとリーべに背を向けた。












俺はその瞬間、後悔した。








リーべを煽って口論になり、くだらないことで大声を張り上げたことを激しく後悔した。






俺たちはあまりに大声を出しすぎた。






モンスターを誘き寄せる程に。





遠くから、いや、遠くではない。


距離にして20mほどだろうか。


その地点から、ゆっくりと、ゆっくりとモンスターが歩いてくる。


スタート地点一帯には背の高い草が茂っているため、その姿形は分からない。


だが、ぼんやりと分かる。かなり大きい、四足歩行の獣系モンスターだ。





「なーによ、急に黙りこくっちゃって。今さら自分の罪に気づいて謝ったって許してあげな・・・・・・何よ、あれ?」





どうやらリーべも気づいたようだ。




だが、どうする?

この距離じゃ今から逃げても遅い。

装備品が無くアイテムも何も無い今、戦うのも得策ではない・・・




いや、はたしてそうか?

この世界の創造主ラグナは、確かにスタート地点をアウトゾーンに設定する難易度履き違えバカ野郎だ。


しかし、最初の草むらにプレイヤーが倒せないレベルの敵を配置するだろうか?


いや、あいつは期間こそ短いが様々な日本のゲームをプレイした本物のオタクだ。

ことゲームの常識に関してはそこまでバカではないだろう。


見た感じ強そうなモンスターだが、これは・・・フェイク!!

ゲームのいろはも分からぬ本部の神々をビビらせるためのフェイクだ!!


そうさ、おそらくこのモンスターは強くない。装備なしの素手でも十分倒せるはずだ。いや、多少強くてもリーべと二人で戦えばどうにかなる・・・が、あんなこと言っちまったんだ。リーべは戦闘に参加してくれんだろうな。


しゃーない、ここはとにかく俺一人で・・・


「な~んか強そうなモンスターね。まっ、でも二人なら何とかなるかしら?」


「はっ!?」


「な、何?今度は何も変なこと言ってないでしょ!?」


「い、いや、おまえ、俺と戦ってくれるのか? 俺、今さっきおまえのことぶん殴ったのに・・・」


「ふん!それについてはまだ許してないけど、今は戦わなきゃまずいでしょ!? あんたみたいな最低DV男でも私のせいで死なれちゃ目覚めが悪いのよ!!」


「はっ、全く頼りになるんだかならねーんだか・・・ まっ、とにかく嬉しーぜ!!」





大丈夫だ。


何の根拠も無いがそう思える。


なぜだろう、俺たちはたぶんレベル1。確率的に言えばたぶん負ける確率の方が大いに高い。俺とリーべの間にはまだ何の絆も芽生えていない。なんならさっき亀裂が入った。なのに、本当になぜだろう、この戦闘はきっと上手くいくという馬鹿げた安心感がある。






俺たちのすぐ近くまで迫ったモンスターが草むらから身体を出した。


それと同時に俺とリーべは拳を構えた。







大丈夫、俺たちはこんな奴に負けはしない!






そう意気込んだ俺の目にモンスターの頭上に浮かんだ半透明のウィンドウが映る。











《キラータイガー Lv.34》












あっ、俺死んだな。

寝ます。

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