~急展開する俺の冒険~
投稿遅れました!もっと投稿ペース早めますね(笑)
「はい!次のお客様!こちらへどうぞ!」
「あ、あっ、はい!」
異様にテンションの高い店員のお兄さんについつい圧倒されてしまう。
「アルカナレボリューション5が一点ですので、6,480円になります!」
「は、はいはい。 じゃ、じゃあこれでぴったりで・・・」
「はい!ちょうどお預かりします!ありがとうございました!」
「フ、フヘヘ、どうも」
自分でもはっきりと分かる気持ち悪い笑みを浮かべた俺は、足早に店を出る。
「・・・買えた、・・・買えたぞ! グハハハハハハ!! 買った!俺の冒険、第三部完!!」
何が第三部なのか分からないが、俺は心の中でそう叫んだ。
そう、ついに手に入れたのだ、この「アルカナレボリューション5」を!!!
思えば長い道のりだった・・・ ここにたどり着くまでの冒険を思い出すと不思議と涙がこみ上げてくる・・・
炎天下の中バス停まで死に物狂いで歩いたっけなぁ。
バス停に座ってたら中学時代の同級生のグループに出くわして、「あれ?今日、おまえんとこの高校って休みじゃないよな?どうしたの?」って聞かれて気まずい雰囲気になったっけ。
バスに乗ったら乗ったで座ってる俺の前にミニスカートの女の子が立って乗るんだもん!
チラチラ見ちゃうのはしょうがないだろ!
何であんな汚物を見るような目で見下されなきゃならないんだ!
電車に乗ろうとしたら何か2年前と路線変わってて切符買うのにすごい時間かかるし、そのせいで後ろに並んでたおっさんにすごい睨まれるし・・・
何だよ、もう!社会はもっと俺に優しくしろよ!
電車に乗ったら乗ったですごい満員電車だし、俺の前に立って乗ってるすごい美人のOLが俺を人間の底辺を見るような目で見てくるし・・・
いや、良いじゃん、ちょっとくらい舐め回すような目で体を見ても! ちょっとくらい匂い嗅いでも!
こちとら2年間引きこもりやってたんだぞ!?
3次元の女に飢えてるんだよ!
つくづく現代人は短気すぎる! なぁ、そう思うだろ!?
・・・何だか途中からただの俺の社会批判になってしまったな。
とにもかくにも俺はそんな壮絶な冒険の末、このお宝を手にしたのである!
「いや~しかし手に入って良かったぜ! 色々あったが、終わり良ければ全て良しってな♪ さて、さっさと帰ってプレイしますか! 今日中にはストーリーモードをクリアしてーな~」
そんな独り言を呟きながら帰路につく。
午後4時、東京の大通りを鼻歌混じりで歩く俺はさぞ気持ち悪いことだろう。
心が清々しく晴れ渡っているのがしみじみと実感できる。
心が狭いことに定評のある俺だが、何だか今の俺なら他人の頼みごとだって無償で引き受けそうだ。
何なら余っている金を財布ごと募金箱に突っ込んで行ってやろうかな?
などと考えていた、まさにその時だった。
「何だか嬉しそうなそこのあなた! ちょっと良いかしら!」
突然、俺の後ろから透き通った女の声が飛んだ。
何だ?今、俺は女性に呼び止められたのか?
道中2度も女性に軽蔑された俺からすると、これはあまり嬉しくないサプライズだ。
誰だ?俺の知り合いか?こんな透き通った声の知り合いなんかいただろうか?
正体を確認するために後ろを振り返った俺は言葉を失った。
かわいい
自分と同い年くらいのその女の子を見て俺は真っ先にそう思った。
白いショートヘアーにハートの髪飾り、ピンク色の綺麗な瞳にはうっすらハートマークが浮かんでいる、綺麗な白い肌によく似合う黒と白をベースとした少しピッチリした服、浮き出る体のラインはまさに男子の理想通りと言って良いだろう。
いや、本当にかわいい。先程軽蔑されたOLが霞むほどのかわいさである。
「ちょっと聞いてる? あなたよ、あなた! もしもーし!聞こえてますかー?」
「は、はい!?な、な、な、何でしょうか!?」
だ、駄目だ!緊張する! 2年ぶりにまともに話すのがこんなにかわいい娘だなんて!
落ち着け、俺!平常心だ!平常心を保て!
「その~、ちょっと頼みたいことがあるのよね~」
「た、頼みごとですか? お、俺に? それっていったい・・・?」
その娘は何か言いたげに口を開きかけた後、何かに気づいたように口を閉じ、周りをキョロキョロしながら言った。
「う~ん、こう人通りの多いとこだと都合が悪いわね。ちょっと、一緒にこっち来てくれる?」
そう言って、その娘は薄暗い路地裏を指さした。
え!?こ、こんなかわいい娘と!?薄暗い路地裏で!?二人きり!?
そんなのもう・・・色々大丈夫なのか!?
何がとは言えんが・・・こう色々と・・・なぁ!?
「ちょっと、何してるの~?早く早く~」
「は、はいはい! ただ今!」
思いっきり声を裏返らせた俺はその娘に呼ばれるままにぎこちない足取りで路地裏に入る。
お父様、お母様、もしかしたら僕は今日大人の階段を上るかもしれません。
本当にすぐそこに商店街があるのか不思議に思うくらい路地裏は静まりかえっていた。不思議なものだ。
「あの~それで頼みごとって?」
その娘は改まったような顔で口を開いた。
「うん、それなんだけどね・・・ まぁ~、何ていうか・・・ とりあえずわたしと一緒に来て欲しい場所があるのよ。」
「え!?それっていったい・・・」
どこなんですか、と聞くより先にその娘は俺の手を両手で握りしめ、俺の眼をじっと見つめてきた。
「へっ!?あ、あの!?こ、これって!?」
その娘は上目遣い気味に俺を見つめてくる。
「ちょっと眼をつぶってて、ね?」
「は、はい!!」
こ、これって!もしかして!!キス!?キスの流れ!?
いやいやいやいや!!おかしい!!急展開すぎない!?
と、とにかく展開がよくわからんがとにかく今はキスする流れらしい!!
そ、そんなまだ俺は心の準備が・・・
「はい!眼を開けて良いわよ!」
「え!?眼を開けて良いってどういう・・・こと・・・え!?」
眼を開けた俺はただただ驚いた。
明るい。
さっきまで薄暗い路地裏にいたはずなのに、どういうわけか今俺は光り輝く部屋の中にいる。
光といっても眩しくなく、何だか包みこまれるような優しい光だ。
呆然と立ち尽くす俺にその娘はドヤ顔で語りかける。
「ようこそ!神々の住まう天界へ!そして、私は愛をつかさどる女神リーべ!これからあなたに使命を言い渡すわ!!」
やっと異世界編に入ります!
次の投稿をお楽しみに!