第8話 いらっしゃい
「着きましたよー!」
「…………!!!!」
しばらく全速力で走り続けましたら、思ったより早く家に着きました。大きな小瓶の中身が無くなったからでしょうか?かっるいわー。
暖かな家の中に入り女の子を下ろします。
額に浮かんだ汗をぬぐってニコッと笑顔で女の子を見ました。
涙目でした。
唇を噛んでプルプルと震えています。
「え!あ、どうしたの!?」
「何者、いや化け物ですか貴方は……!!」
上目遣いで睨んできます。どうしたのでしょうかいったい。
「化け物なんて失礼ですよー?」
「うぅ…すみません…」
謝ってくれました。でも納得はしてない感じです。んー?
ま、いっか。
「ま、いいです♪えっと、ここが私のうちでーす!いきなり連れてきてごめんなさいです…」
「いえ、むしろ、そのありがとうございます、です。」
思わず持って帰ってきてしまいました。今更ですが、予定とかあったらどうしましょう?
「えっと、予定とかってあった?平気?」
「予定はありませんでした。家を失ってばかりでどうしようと…」
「そ、そっか…」
なんだかヘビィな話なのです…
「じゃっ、まずどうしよう?お風呂?ご飯?どっちがいい?」
「えっ!いや、あのご挨拶とか…は…」
「あっ!」
そういえば自己紹介とか忘れてました。
本当に勢いで持ってきてしまった……申し訳ないです。
「あ、私はここに住んでて、えっと名前はミラっていいまーす!7歳です!」
「あ、えっと私は…セシルと申します。…7歳です。」
「よし、じゃあよろしくね!」
「は、はい…」
「よぉし、じゃあ…お風呂はいる?」
「えっ!いやその、あのほかの方は…」
「1年前にお母様が旅に出ちゃって、それから私一人だよー」
「えっ」
「んー?」
「本当に私来てよかったのですか?」
「お金も部屋も余ってるし、君ぐらいなら養えるよー!ちょうど寂しかったし!」
「は、はぁ…そうですか…」
目を白黒させてセシルちゃんは頷きました。
「オッケー♪じゃ、お風呂はいろっかぁ!」
「え、あ、はい?えっ」
ぐいぐいとセシルちゃんの手を引っ張ってお風呂場に案内しました。
裸の付き合いって、私大事だと思うんです♪
お風呂場です!
「ここで服を脱ぎまーす」
脱衣所で服を脱ぐと、セシルちゃんは下を向いてもじもじしています。顔も赤いのです。
照れてるのかしら?
「何ですか?照れなくても大丈夫ですよー?」
「えっ、で、でも…あう」
最近の女の子はー、もー。
なーんて考えつつ、じゃあ脱がせちゃうぞ!みたいなノリで服をたくし上げます。
「ちょ、ちょっと待ってくださいこっこ、心の準備が!」
「お風呂に入るのに心の準備なんていりません!」
勢いよくシャツっぽい物を脱がせます。
「わあああああ!」
セシルちゃんは顔が真っ赤で、気の毒なぐらいです。
そ、そんなに嫌なのでしょうか?なんだか申し訳なくなって来ます。
………………………女同士だから、とかそういう問題ではなかったのかしら…?
「うぅ…ぐすん。ぐすっ。」
あああ!?泣き出しちゃいました。
やばいやばい、えとえっとどうしましょう?
「ご、ごめんなさい!そんなに嫌なら無理しなくてもいいわ!」
脱がせたシャツを差し出し誠心誠意謝ります。
シャツを受け取り、顔を真っ赤にして下を向きつつプルプルと震えるセシルちゃん。
「あう、ぐすん、ごめんなさい。ごめんなさい。」
「こちらこそ。本当にごめんなさい!女同士だし、別にいいかしらって思って……」
「え」
突然セシルちゃんがこっちを向きました。
そして、信じられない!という顔でこっちを見てきます。
「……?どうしたの、セシルちゃん?」
「ーーーーーーーーーーーーっ!!!」
赤い顔をもっと赤く染めて、セシルちゃんは叫びました。
「僕は、男です!!!!!!!!!!!」
「え」
おとこ
おとこ
…………おとこ、男?
「えっ、あぁ、男の子だったの!?」
「お、女に見えますか…!?」
「え、えへへ…?」
「ぐすん」
「あの、なんていうか、本当に、ごめんなさい。」
「ひぐっ」
「ふ、服着るね。」
「はい…」
「わ、私ご飯作ってるから。お風呂から上がったら呼んでね。」
「はい……ぐすん」
「じゃ、じゃあねーごゆっくりー」
バタン、と扉を閉めます。
無音の中で、セシルくんの膝から崩れ落ちる音が聞こえました。
…
……
………
…………
…………………
………………………っ!!!
うわああああああ!やらかしたあああああ!!!!!!!!!!!!!!
五月三日、文章を直しました。大変申し訳ございませんでした!ご指摘ありがとうございました!詳しくは、活動報告まで。