第5話 お出かけ
あれから、1年の月日が流れました。
一気に飛びましたが、特に変わりのない1年間でしたからそんな重要ではないです。
朝起きて、朝ご飯作って素振りして、家事して素振りして……その繰り返しですね。
それで、寝て朝起きて…二週間に一度には王都に行って…です。
お母様がいた日とあまり変わりなく三百六十五日の月日が流れました。
今日は、王都に行きます。
二週間に一度は行かないと、水が腐ってひどいことになってしまいますしね。
外に出て、軽くストレッチしてから走り出します。
……1年経った私は、1年前よりはるかに足が早くなりました。
お母様が、私の足の速さに合わせてくださっていたことがよくわかってしまいます。
丸一日かかっていた距離は、今は半日ですもの。
朝出れば、お昼頃にはついてしまいます。
私の二倍ぐらい大きな瓶に生活排水を詰めて、片手で持ち上げつつ山へ走って王都に向かってもです。
……お母様の、特訓の成果でしょうか?あ、1年前のドラゴンは思い出さないようにしています。私、ドラゴンではないです。そんな逞しいのは嫌です。
一生懸命走って、そろそろ飽きてきた頃。
木々の隙間から白い門が覗いてきました。
それが見えて来るともう王都はもう少しです!
「着きましたーー!!」
着きました!
思わず嬉しくなってしまいます。ばんざーいっと両手を広げながら門をくぐります。周りの人にくすくすと笑われていた気がします……恥かしい……
━━━━あ。
ちょっと説明しますと。この世界は、大きな大陸があって、その中にたくさんの国や村がある感じです。それで、王都はその中で1、2位を争うぐらい大きな国ですね。貿易が盛んな魔法都市で、いろいろな人たちがこの国に集まってきます。賑やかないいところですよー♪
街はだいたい五つに分かれていて、一つが冒険街。
冒険者という人たちが多くいるところです。賑やかさはナンバーワンですが、ちょっと治安が良くないです。
それで、その隣が商店街。
そのまんまな名前ですね。大きな商店街みたいなものです。いろんなものがたくさん売ってて、売り買いも自由です。楽しいところですよー♪
そして、その隣が貴族街。
貴族様のフリースペースって感じですね。優雅なお店は大抵ここにあります。
ちなみに、その真ん中にででーんとおおきなおおきな、宮殿があります。王族様や騎士様がいるところです。優雅で素敵なところですよー♪
そして、その隣が学園街。
全国各地から集まった子供さんが暮らす、大きな寮制の学園です。貴族様のお子さんは大抵がここに入りますねぇ。あ、ちなみに早い人は6歳から、あとは12歳からが普通ですね〜。
そして、最後が庶民街。
王都に暮らすほとんどの一般市民さんがここに暮らしています。
前世の団地を思い出す、とても平和なところですよ!
まぁこんなところですかね。私はいつも商店街しか行きません。
今日は、商店街の奥にある『不要水回収場』というところにしか用事はないですが、ついでに店を見て周るつもりです。
「おじさーん!生活排水持ってきましたー♪」
回収場と立てかけてある大きな建物に声をかけます。
「はーい!」
毎回10分もしないうちに返事が返ってきます。
ぱたぱたぱたと音がして、中から頭に黄色いバンダナをつけたおじさまが出てきました。
この方こそが、生活排水のエキスパート。生まれた時からお世話になっている、ラグおじさんです!
なんと、10ギルというほんの少しのお金でたくさんの生活排水を引き受けてくださるのですから!
私のような田舎暮らしさんにはヒーローのような方です!!!
そんなことを考えている間に、ラグおじさんは瓶を抱え、どこかに注ぎ、そして私にまた返してくださっていました。この間、約5秒。熟練の技です!
「いつもいつもありがとうございます、あ、これ10ギルとあとお野菜です。採れたてのを持ってきたので、食べてくださると嬉しいです!」
「おや!ありがとう。一家で美味しくいただくよ。」
他愛のない話を終えて、お暇しました。
ラグおじさんはいつも温かな笑顔で迎えてくれるので心が暖かになります。
母が旅に出た孤独な7歳児(私)の癒しです!
さて、心があったまったところで今度は商店街で気がすむまでお買い物しましょうか!
これは、一ヶ月に1回、私が自分のために設けているごほうびなのです。
森から一生懸命鉱石を掘り起こして、売って溜まったお金で服や家具や武器や装飾品などを気がすむまで買い占める、これが私の最ッ高の癒しになっています!
素敵なドレスも欲しいと思っていたし、美しい宝石になどにも興味はあります♪
何を買おうかあれこれ想像するのも楽しいですよね、お買い物って。
そんなことを考えながら、私は商店街を歩き回るのでした。