第1話 朝が来て
薄く赤めく清らかな朝。窓から溢れる光が暖かく部屋を照らします。
「ふわぁ……おはようござひま……ふ」
夜が朝に変わる瞬間、目が覚めました。今日もスッキリです。
太陽が起きた瞬間に目が醒めるのは生まれた時からの習慣ですが、前世のあの夜型生活から考えるとやっぱり自画自賛しちゃいますよね。偉いぜ私!
────もはや言わなくても伝わると思いますが、私、前世の記憶があります。
いや、前世って言っていいのかはわかりませんが。自分が死んだ時のことはあんまりよく覚えてせん。
ふと気が付いたら角の生えた美しい女の人に赤ん坊の姿で抱かれていたのです!
とってもびっくりしました。ドッキリだったら裁判に訴えるレベルでびっくりしました。
本当に美しい方だったのですが、私は驚いてしまって……
思わず体を反転させてしまい、その拍子に女性の手から落ちました。
危うく死ぬところでした。
ですが!その時は大慌てで女の人が落ちていく私を蹴り上げたので助かりました。
なんてアクティブな女性だと思いました。
その後、その女性が母であることがわかりました。
またもびっくりしました。初対面で私を一メートル……体感三十メートルほど蹴り上げた人ですから、びっくりなんてものじゃないほどです。ええ。
飲んでたミルクを吐き出してしまいました。
「ふふふ、お母さんだぞー」
「ぶふぉっ」
「うわ!?」
「けほ、ごほっ」
「なんだ、どうした!?大丈夫かミラ!?」
お母様と聞いた直後にミルクを口から吐き出す赤子。
思い出したらちょっと恥ずかしい過去です。えへへ。
それからちょっと大きくなってから改めて鏡を見てみると、私にも角が生えていました。びっくりです!
お母様に聞いてみると、
「ドラゴンとの混血だからな!」
と笑われました。なかなかに衝撃な出来事だと思うんですけど……ちょっと変な人みたいです。
まぁ悪い人ではないし、私は好きです。あのお母様。言葉遣いは少し……いえかなり……いいえ少々乱暴なのですが、暖かくて明るくて、自慢のお母様でした。
まぁ、なぜかは知りませんがここは人里から遠く離れた山奥なので、自慢する人なんていませんが。
人っ子一人いないんですよー!ここ!
すっごぉく、そりゃもう5時間ぐらい走ったところに一つ二つぐらい村があることぐらいでしょうか。
丸一日走り続ければもう少し行ったところに王都、というところがあるようです。
あぁそうそう、この世界私の元いた世界とは別のところなんですって。異世界、ということになりますねぇ。お約束なのです。
とは言ってもドラゴン云々は嘘であってほしいと思いますけどね。
いいえ、嘘だと思うことにしました。
さすがに今世ドラゴンはちょっと逞しすぎます……せめて爬虫類でお願いします!
というわけで、私は今日もお母様とこの人里離れた山奥にぽつんと立った修行場に住んでいます。なぜだかはわかりませんが……
今日も安定して平和なのです。……ちょっとつまらないのは、秘密です。