第11話 朝が来た
セシルくんに深夜テンションMAXな発言をしたその後。
寝起きのぼんやりとする頭で思い出した限りでは、その後戸惑うセシルくんに笑いかけつつ、お母様の部屋に案内しました。
「今日からここがあなたの部屋です!」
「え、あ……いえ、私に、部屋など」
「いい若いもんが遠慮しないの!」
そんなことを言いつつ、無理やり部屋に押し込みおやすみなさーい♪と自分の部屋に戻りました。
そして、就寝。
それから四時間後、起床。いつも通りに六時に起きました。
でもやや少ない睡眠時間のため、少しうとうとと…
うとうとと30秒ほどたった時でした。昨日の夜の出来事という精神攻撃を受けるのは。
「……あ。あっ、いやあああああああああああ!!」
優しく、同年代の男の子に微笑みかける幼女。挙げ句の果てに「私を親だと思ってください」発言。
戸惑い、「何言ってんだコイツ」的な視線を投げかけるセシルくん。
━━━━…恥ずかしいことって、一回思い出したらもう止まらないですよねー。一気にフラッシュバックしたよもう。
お風呂のこととかね。僕は男ですのね。うん。
…━━━━ああ!!死ぬ!!!羞恥で死ぬ!!!!
んキャアアアアアアア!と、もう悲鳴でさえない言葉を叫んでベットでごろごろと転がりました。
昨日の夜の自分をぶっ飛ばしたい。消滅させたい。ああああ!!!
そんな鳥を絞め殺したような叫び声に不安になったのでしょう。とんとん、とノックの音が聞こえました。
「わ、わ」
これ以上黒い過去を増やさないため、ちょっとまってくださーいと大慌てで最低限の身支度をし、ドアの前に出ました。
「あ、あの……?何か、ありましたか?」
「いっえー?何にもないですとも!さささ私もう朝ごはん作っちゃいますね!」
「は、はい。……あっ、あの!」
「はーい?」
「家事の……お手伝い…その、させていただけますか?」
「え?やりたいの!?」
「いえ、やりたいというわけでは!でも……その、えっと、恩人様に家事をやらせるわけには…!」
「恩人様ですかー!なんかいい響きですね、じゃあお言葉に甘えて♪よろしくねセシルくん」
「は、はい!」
もういい感じに誤魔化してしまおう、とちょっと早めに朝ごはんを作ろうとしたらセシルくんが手伝ってくれるそうです。
あぁ、いいですねっ、こういうの!仲良しな感じがします!
……昨日の全ては記憶の彼方にぶっ飛ばすことにしました。
わたしは なにも おぼえていません。
と言う事で、二人で台所へ向かいます。
あれっ?なんだか、部屋の間取りをセシルくんは完璧に覚えているようです。
右へ左へと、迷うことなく進んで行きます。
すごいです。一回しか行ったことないのに。
……昨日からちょくちょく思っていたのですが、賢い子です、セシルくん。
マナーも言葉遣いも完璧なのです。前世の私の子供時代、もっとお猿さんっぽかったですよ……
と言うより、得意なのがハンバーグしか無い今の私よりよっぽどすごいですー。
……うん。自分で言ってて傷ついた。これもう何回目でしょう……?
もうお母さんが出て行ってからひたすらハンバーグですからねー。
朝ハンバーグ昼ハンバーグ夜ハンバーグ。もうひたすらハンバーグ。材料変えてるだけ。
ハンバーグが私なのか私がハンバーグなのか。……あれ?これではどの道ハンバーグですね、私。……嫌だ!
そんな事を考えている間に、台所に着きました。
ハンバーグに乗っ取られるのを回避するため、と言うよりハンバーグでは無いご飯を久々に食べるため、セシルくんに何か作れる料理はあるかと聞いてみます。
「はい、まぁ料理は……大抵の物は作れますね」
はい、高スペックゼリフ!
なんだろう、セシルくんの中では当然のようです。私の心が削られて行きます!
「へ、へぇ……じゃ、じゃあ、今日の朝ごはんはセシルくんに作ってもらってもいいですか?」
「え?はい、大丈夫です」
「本当ですか!?」
「え、えぇ……あ、材料は……?」
「ありますありますいっぱいあります!」
てててっと冷蔵庫━━正確には自作の、昔使われていた氷冷蔵庫みたいな物━━の中を開きます。
「うわぁ……」
セシルくんの口からそんな声がこぼれました。……それもそのはず、です。
種類は正しいのかよくわからないですけど、
鳥肉豚肉牛肉鹿肉、ゴーヤ玉ねぎネギキャベツキュウリトマト何かよくわからない野菜っぽいもの、しいたけ紫きのこピンクきのこ緑きのこ馬肉兎肉蛇肉ワニ肉魔物っぽいものの肉なんか良く分からないものの肉、肉肉肉肉肉肉肉肉とにかく肉…
肉七割野菜二割きのこ一割ってとこでしょうか。
まさにハンバーグのためのハンバーグによるハンバーグの食材って感じです。
「えへへ、ここ一年間ハンバーグしか作ってこなかったもので…」
「え、一年……?朝も昼も夜も……?一年間……えっ?えっ……?」
ちょっと恥ずかしいですねー。やっぱり流石に不健康でしょうか?
えへへーと頬をかきつつ、セシルくんに作れそうかと聞いてみます。
「は、はい。これだけあれば……あ、調味料とかは……?」
「あ、それはこの辺にー」
塩、醤油(売ってた!)、砂糖、マヨネーズ(自作)味噌(売ってた!)お酢、胡椒、マスタード(っぽいもの)香辛料、ガーリック、七味を机に並べました。
「足りますか?」
「……はい、十分です」
「わぁっ!何作るんですかー?」
「えっと……知っている肉料理を、いくつか」
「えへへ、そうですかー、楽しみにしてますねー♪」
「はい、頑張らせていただきます」
「では、私庭にいますのでー、困ったことがあったら呼んでくださいね!」
「は、はい」
ひらひら〜と、セシルくんに手を振って台所を去りました。
━━━━さて、ひさびさに修行でもしましょうか。




