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企みは何?

エントランスにひしめく騎士団の方々。『ただ今戻りました』じゃありませんよ旦那様!!

しかもまたみなさんにもみくちゃにされそうになったところを旦那様に抱き寄せられて難を逃れましたが。まったく。

「明日はお義父さまたちがいらっしゃるんですよ?」

背伸びをしてこっそり旦那様に耳打ちすれば、

「慰労会をやろうということになったのですが、僕はいいからみんなでやってくれと言ったらうちでやろうということになりまして……」

何だか歯切れの悪い旦那様です。目も泳いでいます。しかも慰労会って、何の慰労会なんですかね?

できれば使用人さんたちを慰労したいくらいなのに!

しかし現実はエントランスにあふれる騎士団の面々……。

「まあ、もういらっしゃってしまっていますから仕方がありませんね。とりあえずサロンでお待ちくださいませ」

今更追い返すわけにもいきません。諦観て大事です! そう旦那様に告げると途端に破顔ですよ!

「貴女ならそう言ってくれると思いましたよ!」

やっぱり何て切り替えが早いのでしょう、旦那様。もうキラキラした笑顔を向けてきます。ぶんぶん振りきる尻尾の幻影までもが見えてしまいました。

内心肩をすくめてやれやれと思いながら、旦那様付の侍女さんにサロン誘導をお願いしました。


ここからは前回も発動したお客様シフトオンですよ!!

幸い明日の用意のために飲み物や食べ物はいつもより多い目に仕入れています。まさかこんな状況で役立つなんて思ってもみませんでしたが。

「飲み物も食べ物もどっさりあるわね」

「はい」

ロータスがしっかりと肯いています。

「足らずが出たらまた明日にでも買い足すとして、まずはお客様にお出ししましょう」

「そうでございますね」

そう言うとロータスは踵を返し、カルタムたちのいる厨房へと向かいました。

ダリアはすでにシフトに入っています。

「さ、私たちもサロンに行きましょう!」

「はい!」

ミモザを後ろに従えて、気持ちは鉢巻きをキリリと締めて、私はサロンへいざ出陣です!




今回も使用人さんたちのいい仕事全開で、サロンで引き留めておくほどもなく宴会おもてなし準備が整いました。

前回同様立食形式です。まあ大人数だからその方が楽しいですし、むしろみんなで着席スタイルだとどうしても形式ばってしまいますからね。程よい抜け感がいいのです。

私は気が付けばまた綺麗どころトリオに囲まれていました。いつの間にでしょう? 私がお姉さま方を独り占めしてしまって申し訳ない気もするのですが、男の人とお話してもきっと退屈させてしまうでしょうからこの方がいいのでしょう。むしろ目の保養になりますしね!

まだ宴も序盤、まるきり正気のお姉さま方は、

「今日は突然お邪魔してしまって申し訳ないですわ」

と恐縮なさっています。これお土産に~、と言って今王都で話題の行列菓子店のお菓子を渡してくれました。使用人さんたちの話題にしょっちゅう上っていたので、私も一度は行ってみたいと思っていた菓子店の菓子折りですよ!

「そんなそんな、いつでもいらっしゃってくださってよろしいんですのよ? 歓迎いたしておりますわ!!」

今日イチの笑顔を向け、捧げ持たんばかりの勢いで菓子折りをいただきましたよ! うん、決してお菓子に釣られたわけじゃないですからね?

「でも明日は先代公爵様がいらっしゃるのでしょう?」

金髪キラキラのお姉さまが私の顔を覗き込むようにして聞いてきました。顔近っ! うっわ美形!! なぜか美人のいきなりどアップにドッキンドッキンしながら、

「え、ええ、まあ、そうでございますけど、準備はすっかり終えていますので」

とにっこり返せば、

「それはよかったです。ですが今日は早めに退散させていただきますね」

とさらに上いく笑顔で宣言されました。


しかし、やはりお酒が入るとお姉さま方は変わるわけで。


すっかりお酒が入って出来上がってしまったお姉さま方といつぞやの女子会再来です。金髪のお姉さま、銀糸のお姉さま、ブロンズのお姉さま、みなさま今日も大層いい飲みっぷりで、開始直後の『今日は早く帰るね☆』宣言などどこかにぶっとばしてしまった模様。

ちなみにほかの騎士様も楽しく飲みまくっていらっしゃいます。この勢いですと、明日の飲み物再手配は確実ですね。ロータス、こっそり青筋浮かべていないかしら?

「今日は朝から夕方までびっちり会議だったから終わって打ち上げ~! ってみんなで盛り上がっていたら、団長一人が『私は帰りますから、みなさんはお好きにしてください』って言うからですね~」

グイッとグラスを飲み干してしまった金髪お姉さま。いい飲みっぷりに慌てて次を足すべく、ボトルのワインを手繰り寄せました。

「そんな冷たいこと言わずに一緒に行きましょうよ~って誘ったんですけどね、いつもなら少しだけでも付き合ってくれるのに、今日に限ってどうしても帰るってきかないから」

気が付けば銀糸のお姉さまのグラスも空になっていたので、お二人のグラスに慌てて飲み物を注ぎ足す私。気が利かなくて申し訳ないですが、ハイピッチすぎてお酌が間に合いません!!

「じゃあ団長んちでやりましょうよ~ってみんなでダメもとで提案したら、あっさり許可! あっさり過ぎてびっくりしちゃったわ」

とはブロンズのお姉さまの証言。んんん? 今何か聞き捨てならんことが聞こえたように思いますよ?

「あら、旦那様が許可されたんですか? あっさりと?」

確認のためにもう一度聞き直すと、

「そうですわ!」

「絶対断られると思ってましたのに~」

「一回で」

それじゃあほぼ旦那様が騎士団の方をお連れしたみたいですよね? 押しかけたとかいう感じではありませんよね?

怪しいですね~……何をたくらんでいるのでしょうか。旦那様。




開宴当初の宣言虚しく、宴は結局夜更けまで行われ、騎士団のみなさまは急遽用意した客室に格納……もとい宿泊されていきました。一番上等の客室は明日のために取り置かれましたが、それでも十分に収容できるこのお邸の実力はすごいなと改めて感じました! そして普段からお掃除を頑張っていてよかったなと思った瞬間でした。

私も一日中動き回っていたのでもはやクタクタです。みなさんが酔っぱらっているのをいいことに、挨拶もそこそこ、自室に下がらせていただきました。明日は義父母が来るのですから、寝坊などできません!! でも夜遅くまで超過勤務を強いられている使用人さんたちには頭が下がります。申し訳ないけど寝させてもらいます! 明日がんばるから! と、誰に向かって言い訳してるのかよくわかりませんが。




翌朝。

騎士団の方々は、うちの備蓄の酒類をほぼ飲み干したくせに、誰一人二日酔いとか調子悪いとか言う人もおらずシャキーンと起きてこられました。それには驚かされましたよ。どんだけうわばみだ、この人たち! カルタム謹製バイキング朝食(今日だけ復活!)をぺろりと平らげて朝から元気ハツラツゥです。見ているだけでも腸内のテロリスト活動が活発化しそうです。

旦那様は義父母の到着を待ってから出仕するとのことで、部下のみなさんだけが先に王宮へと向かわれました。

さあお客様も無事送り出したことだし、後片付けして準備しなくちゃ。あ、その前にお茶でもいただくかしら? そんな時間ない? ……なんて呑気に思っていた私よ、カムバック!


嵐のように突然のお客様が去って、入れ替わるように義父母が到着しました。


お昼近くになるのかなと勝手に想像していた私の予想をはるかに上を行く早朝の到着に、

「昨日のお片付けは間に合うでしょうか? 準備が、備蓄が……」

と俄かに心配になり顔色を変える私の横では、

「大丈夫ですよ。心配することなんてないですから」

なんて呑気に答える旦那様。他人事だと思って! つーか、旦那様がお客様を連れてくるからこんなことになったんでしょうが! ……と、心の中で盛大にブーイングを垂れながらも、そんな旦那様に肩を抱かれてエントランスにお出迎えです。使用人さん一同もずらりのラインナップ。圧巻の総出お出迎え。


「「「「「お帰りなさいませ!」」」」」




到着早々、旦那様とお義父さまとロータスは話があるとかなんとか言って、旦那様の書斎へ籠られました。

私はお義母さまとサロンでお茶です。

「ご到着がお早くて驚きました」

素直にお義母さまに伝えれば、

「うふふ。実は商談で王都の近くまで来ていたのよ。サーシスには伝えていたんだけどね」

なんてカミングアウト。さらりと言われたのでそのままスルーしてしまうところでした。

「ア、アア、ソウデシタカ~」

旦那様、ご両親が朝早いうちに到着することを知っていたのですね。これはますます何か企んでいそうですね。

「今回は急でごめんなさいね。ちょっと抜き打ちできちゃったわ!」

と、にっこり首を傾げて微笑まれては毒気を抜かれてしまいます。何気に抜き打ちとか言ってますし? お茶目風味に言ってますが、振り回される私たちって……。

何だかいろいろ力の抜けてしまった私は、思わずぐったりソファにもたれこんでしまいました。

「あらあら、ヴィーちゃん? しっかりして~! お詫びと言っちゃあなんだけど、今日は素敵なお土産を持ってきたのよ! アネモネ、こっちに」

慌ててお義母さまが私の横に座り、ご自分のお付きの人を呼びつけています。

お義母さまに呼ばれた侍女さんが、高級そうな白い箱を手にいそいそとやってきました。

「奥様、こちらに」

「ありがと」

侍女さんから受け取った箱を私に見せながら、


「うちの領地産のピジョンブラッドよ。かなり品質のいいものが出たからヴィーちゃんにって思って加工

させたの!」


ぱかーっと開いた箱の中には燦然と輝く最高級ルビー。


それにも負けないお美しいお義母さまの微笑。楽しくってたまんなーい! と顔にかかれていますね。

それに引き替え、引きつり、笑みを貼り付けるのが精いっぱいの私。

もうやだ、公爵家ここの人たち~! 私に高額商品は必要ないんですってば~!!


公爵家の領地は豊かです。

農産物然り、鉱物資源然り。なかでも公爵領産のピジョンブラッドは最高級とされており、なかなか手に入らない逸品だと聞かされています(ダリア談)。

だから公爵家はお金持ちなんです。

まあそれはいいとして、そんな最高級品をポンと嫁の私にくれちゃうなんて……。

「……ありがとうございます」

断れない私はいい子ちゃんです。うう、まだいい嫁頑張ってます……。

震える手を叱咤して受け取りましたよ!





今日もありがとうございました(*^-^*)


そして企みはわからないまま……w

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