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宴はたけなわ

ロータスの先導でメインダイニングに移動すると、そこにはすでにお酒も美食もたーんと用意されていました。堅苦しいのもなんだということで立食形式にダイニングテーブルに料理が並べられ、周りに小ぶりなテーブルがいくつかセッティングされていました。


宴が始まるや否や、次から次へと消費されていく料理や飲み物たち。どの方もすらりと均整のとれたスタイルの持ち主ばかりなのに、どこにそんなに大量の食物が入って行くのかと不思議に思って見ていると、

「頭脳労働が専門とはいえ土台は騎士ですから、毎日訓練はありますのよ。ですから体力勝負なのでみなよく食べるんですよ」

と、いつの間にか私の傍に来ていた美しい女性騎士様が説明してくれました。とても騎士とは思えない美しいお姉さまなのですが、先程から豪快によく飲みよく食べておいでです。

「そうなんですか~。驚きました。みなさまとてもスタイルがよろしいので、どこにあの食べ物が収納されるのかと思っていましたの」

「団長もでしょう?」

サラサラ美しい金色の前髪をサイドに流しながら、ワインレッドの瞳で私を覗きこんでくるお姉さま。そんな瞳に見つめられたら、何だかイケナイ世界に目覚めちゃうかもしれないくらいに素敵すぎます。内心どぎまぎしながらも、お姉さまの言ったように旦那様のお食事風景を思い返すと。

「……言われてみればそうですね」

朝食はさすがに食べ切っていませんでしたが、晩餐は結構な量を食べています。私は途中で腸内テロに遭いギブアップしてしまいましたが……ああ、また自分で黒歴史をひも解いてしまいました。

心ひそかにがっくり項垂れる私でしたが、表面上は何気ない風を装っておきます。

「それから、団長はとても仕事のできる方ですのよ」

今度は少し癖のかかったブロンズヘアのお姉さまが横から入ってきました。そう言えば今日まで旦那様のお仕事関係など聞いたことなかったですね。先程副団長のユリダリス様が延々お話してくださったのが初めてです。つか、興味がなかったというのが一番ですが!

「あまりお仕事のことはお話にならないので、存じませんでしたわ」

興味ないから聞いてない~とは言えませんから、曖昧に微笑んで誤魔化しておきます。それに、家族であっても仕事にんむに関してあまり詳しい話をしてはいけない機関だとお聞きしていますので、私ごときが聞いても答えは返ってこないと思うのですよ。あ、スミマセン聞く気もありませんでしたが。大事なので二度言っておきます。

「戦闘の前線に立つことはありませんが、秘密裏に行動するのが私どもの機関です」

お次は銀の絹糸のような髪のお姉さまが、それはそれは麗しく私に微笑みかけていました。うん、いつの間に私の横にいたんでしょう?

……あれ? 気が付けば女性騎士様が私の周りをすっかり囲んでいます。ビバ☆ハーレム!! ……ではなく。コホン、失礼いたしました。また女子会状態です。




「団長の采配は的確ですし、無駄がない」

「ソウナンデスカ」

「男女の差別もないですし」

「マア」

「てきぱきと手際もいいんですよ」

「ヘェ」


なぜかお姉さま方はよってたかって『団長がいかに有能な方なのか』ということを滔々と語り聞かせ始めました。


「アノ潜入作戦のときはもはや壊滅を覚悟しましたけどね~」

苦笑する金髪のお姉さま。『アノ』とか言われましてもさっぱりわかりませんが、ふんふんと適当に相槌を打っておきます。

「そうそう。間一髪のところで団長の策略がうまくハマって、気が付けば全員無事生還」

どこか遠くを懐かしげに見ている銀糸のお姉さま。

「ほんと、アノ時は鮮やかな采配だったわねぇ~」

うっとりとほほ笑むのはブロンズのお姉さま。


戦での功労や、文武両道だとか、仕事上の評判だとか。


私は「はあ」とか「まあ」とか「そうですの」くらいしか口を挟めません。さっきもそうでしたが、今日はやけに旦那様の話を聞かされる日ですね。

飲んで、食べて、また飲んで。どんどん饒舌になっていくお姉さま方。上機嫌で旦那様のお話に興じておられます。そんなに旦那様を褒めちぎるということは。


「あの~? みなさまは旦那様のファンの方でしょうか?」


やっと私が隙を見て口を挟めば。


「まっさかぁ!」

「そうそう! 上司としてはいい方ですけど」

「プライベートは、ねえ!」

「「「それに私たち、既婚ですのよ!」」」


三人そろっていい笑顔で答えてくれました。そしてそこからは、


「結婚してからも愛人を堂々と連れまわすなんて、ないわよねぇ」

「ほーんと! うちの旦那なら絞めてるわ」

「こんなに素敵な奥様蔑ろぉ? ざけんじゃねぇって感じよね」


どんどん飲むペースを上げながら、今度はプライベートな旦那様の評価をしだすお姉さま方。しかも先程までとは打って変わって結構辛辣です。さっきまであんなに『旦那様がいかに素晴らしいか』を説いて聞かせていたのに、なんという変わり身の早さでしょう! そしてだんだんと目が座ってきているのはきっと気のせいではないでしょう! だ れ か た す け ろ っ !!


ハイピッチで飲み進めるお姉さま方を止めることなどできない私が涙目になっていると、

「うわっ! お前ら奥様に何言ったんだ?!」

焦った声がして振り向くと先程のユリダリス様。

「え~、団長がいかにヘタレかっちゅ~ことを説明……あれ?」

すっかり酔っぱらってぽやんとしているお姉さま方。それを聞いてさらに焦ったユリダリス様が、

「ちょ、まずいっちゅーの! おい! こいつらを奥様から引き剥がせ~!!」

近くにいる騎士様に指令を出しました。

「「「はい!」」」

「こらっ! 私たちはまだ奥様とお話するんだから邪魔すんなぁ!」

お姉さま方を回収しようとする騎士様と、そうはさせるかと踏ん張るお姉さま方。

「せっかくオレがサーシスのいいところを嫁さんに語って聞かせたのによ! お前らオレの努力を水の泡にする気かっ!」

「え~、私たちも語りましたよぉ?」

「途中からちょっと方向がずれただけですぅ~」

「ちょっとじゃねーだろ!」

「本当のことじゃないですか~」

「それがだめだっちゅーの!」

ユリダリス様が頭を抱えていました。


「ヴィー! 何があったんですか!」

酔っ払いさんたちがワヤワヤ揉みあってるのを他人事で傍観していると、向こうで話をしていた旦那様が急いでこちらにやってきました。

「ええと、お姉さま方が酔ってしまわれたようです」

苦笑いしながら旦那様に事実を報告します。

「ったく、こいつらは……」

そう言うと旦那様は片手で顔を覆い、天を仰ぎました。

「まあ、楽しそうでよかったです」

「で、あいつらは貴女に何を言ってきたのですか?」

少し身をかがめ私の目を覗き込んでくる旦那様。

「んと。いろいろです」

あはっと笑って誤魔化そうとしたのですが、

「いろいろとは?」

なおも追求してくる旦那様。

「まあ、旦那様の功績や采配に始まりまして、仕事面においてはいかに優秀な方かということを嫌というほど聞かされましたが、いったんプライベートのことになるとそれはもう辛口コメントのオンパレードで。筆舌に尽くしがたく……」

「ヴィー?」

「なんでしょうか?」

「もうやめて? さすがに立ち直れなくなりそうですから……」

聞きたがったから答えたのに、私の話を最後まで聞かずにさえぎった旦那様はよく見れば涙目。

「まあ、旦那様は部下のみなさまに愛されているということで……」

「……そうは思えませんが……」


そういうことにしておきましょう!

今日もありがとうございました(*^-^*)/


引っ張ってしまった騎士団乱入編、やっとお仕舞(^^;)

アゲたかったのか、サゲたかったのか。はたまたアゲてサゲたのか(笑)

……確実にサガったと思われます!

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