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団長と副団長

緊急お客様シフトであったにもかかわらず、相変わらず高スペックな公爵家うちの使用人さんたちはその底力をいかんなく発揮してくれ、短時間で対応してきましたよ! こんな苦労を旦那様は知らないんでしょうねぇ。いつか下剋上が起こらないことを切に祈りますけど。




私とミモザがサロンに着くと、もう食前酒やお茶、軽いおつまみとお菓子が用意されていました。エントランスにいた時間なんてわずかですよ。どんだけ早業よ? と感心するしかありません。

すぐにダリアから派遣されてきた侍女さんが二人、私たちに合流してきたので、サロンでのおもてなし開始です!


お茶をお淹れしたりお酒のグラスを配ったり、おもてなしをしながらざっと見たところ若い方が多いように感じました。そしてどの方もなかなかに整った顔かたちの方ばかり。強面系・甘い系・クール系・チャラ系等々、各種取り揃えているようです。騎士様になるための試験にはイケメン項目とかあるんでしょうか? そのような素敵な方たちが騎士様の制服をパリッと着こなしていらっしゃる姿は眼福ものです。騎士団といっても特務師団は頭脳派エリート集団ですから、ガチムチマッチョじゃなくてもいいのでしょう。

しかしこんなウハウハイケメンパラダイスの中においても、ミモザ以下侍女さんは顔色一つ変えずに淡々と仕事をこなしています。さすがは一流の使用人さんです。きょろきょろ周りを観察ばかりしてないで、私も見習わねばなりませんね!

女性騎士様は3人です。こちらも美人さんぞろいでよだれが出そうです……っと、あぶないあぶない。何か踏み外してはいけないことをやらかすところでした。いや、しかし美しいものは美しいと賛美していいのです! 三人ともにすらりと背が高く(わたしよりもね~!)出るところはしっかり出ておいでです。腰回りはさすがに騎士様というか引き締まっておられますが、それでも女性らしい綺麗なラインが制服の上からでもはっきりとわかります。軍規なのか、美しい髪は一筋の綻びもなくまとめられています。ああ、私の観察眼がどんどんエロオヤジのそれになっていきます……。いや、うん、ドンマイ! しかし旦那様、こんな別嬪さんを毎日間近に見ているくせに、よく私なんかを見る気になりましたね?

ちなみに旦那様のお綺麗さは、こんな美男美女パラダイスの中にあっても群を抜いていましたよ?


「すみません、ヴィー。今日家でお茶会をしているという情報をどこからか聞きつけた部下たちが『どうしても行きたい』と駄々をこねまして」

お客様にお茶をお配りしている合間に旦那様に摑まりました。ちょっと眉尻を下げて申し訳なさそうにしています。

「お気になさらず。みなが対応してくれますわ」

ニコッと優しく笑いながら言いますがもちろん社交辞令ですよ。来客はアポをお願いします。じゃないとみんなでてんてこ舞いな思いをしますので。

旦那様は私の嘘っぱちの笑顔にほっとした様に息をつきましたが、そこへ、

「うちの精鋭をなめちゃいけねーよ~! 団長!」

私と旦那様の間に割って入ってきた一人の騎士様。

「なんだ、ユリダリス」

すぐさまやわらかい表情を消し、低い声でじろりとその騎士様を睨む旦那様。

「情報収集あ~んど操作機関だよよ? お茶会開催情報とってくるのなんてお茶の子さいさいなもんだ」

旦那様の睨みなんて慣れっこなのか、全然どこ吹く風でさらりと笑顔で言い切る騎士様。

しかしおっしゃった内容、ちょっと待て?

情報収集なんてお茶の子さいさい? そりゃそうですよね、諜報機関ですから。じゃあ、公爵家うちの情報がダダ漏れってこと? それって、私がお仕着せ着て使用人さんに紛れてるっていうこともこの人たちにはバレてるってことでしょうか?! 

そう思うに至り、さーっと血の気が引いた心地がしました。『すわ、公爵家のスキャンダル?! 公爵夫人がお仕着せを着て使用人に紛れて生活している?!』そんな見出しが頭の中にババンと浮かんできました。ああ、非常にヤバいです! 

そんな顔色の変わった私に焦った騎士様は、

「あ? ええと情報源は招待客のお嬢様方ですよ? ここのお邸のガードは鉄壁ですからね。俺たち相手にいい勝負ができるんですから、よっぽど優秀な使用人たちですよ! なんならうちにスカウトしたいくらいです」

私の電波を受け取ったかのような弁明をしてくださいました。

「まあ、そうでしたか」

あ~もうびっくりしました。どうやら私の普段の素行は知られていないようです。ほっとして息を吐き頬を緩めます。やっぱり公爵家うちの使用人さんは完璧なプロフェッショナルなのですね!

「ここのお邸は覗こうにも巧みに計算された生垣に阻まれて垣間見することも叶わないし、使用人は口が堅い。出入りの商人にも邸の噂すらしないですからね。ほんと、厄介です」

ベリス、グッジョブ! 使用人さん、グッジョブ!

苦笑いする騎士様ですが、上司の家をスパイしなくてもいいと思うのですけど?

「うちを探るな」

やはり旦那様も同じことを思ったのか、こちらは苦虫を潰したような顔になっています。

「だって聞いても教えてくれないじゃねーか。あ、でも公爵家で一番情報漏えいしてるのは団長だけどね~」

にやりと笑う騎士様。

私は騎士様の一言に思わず吹きそうになりました。せっかく使用人さんたちが情報を隠しても、当の公爵本人が愛人連れて社交界にホイホイ出て行ったりしたら……ねえ。ロータスたちの苦労が水の泡……。

ついこの前まで愛人連れてたと思いきや、今度は正妻連れて、しかも衆人環視の中で盛大にのろけをやったりする。イタイ。イタすぎますよ旦那様……。頭を抱えたくなりました。

そんな騎士様の言葉に、

「うるさい。もう黙れユリダリス!」

ますます苦い顔になる旦那様です。

「はいは~い。ああ、奥様、ご挨拶が遅れましたが、オレは副団長をしているユリダリスと申します。ユリーと呼んでください! 団長とは仕事でこそ上司部下の関係ですが、プライベートでは悪友ですので、そちらでもお見知りおきを!」

ひょいっと肩をすくめて仏頂面の旦那様を華麗にスルーした騎士様が、私に向かってキラキラとした素敵笑顔で名乗りました。この方もとても整った顔をされています。いたずらっ子のような浅葱色の瞳は今は笑いを湛えて細められています。

「ユリー様で……「ユリダリスでいいですよ!」ユリダリス様ですね。初めまして、ヴィオラと申します」

旦那様の声が被さってきたので、『ユリダリス様』と呼ばせていただくことにしました。

「コノヒト、プライベートじゃ褒められたものじゃないですけど、仕事はできるんですよ。こう見えても」

「こう見えてもは余計だ。しかも褒められたもんじゃないってどーゆーことだ」

「そーゆーことだろ。みなまで聞きたいか?」

「……」

心当たりがあるから目を逸らし黙り込む旦那様です。わかりやすすぎますよ。

そんな旦那様を楽しげに見たユリダリス様は、

「特務師団の前は第一小隊っていう隊に属してましてね、あ、オレも一緒ですけど……」

なんでか知りませんが旦那様の経歴から戦果などを得々としゃべり始めてしまいました。何とも居心地悪そうな旦那様と、何が言いたいのかよくわからない私。とりあえずお付き合いさせていただきましたが。




しばらくしてロータスがサロンに姿を現し、食事の用意ができたことを告げました。

ユリダリス様の『旦那様講義』がやっと終わりです。ふぅ。何の罰ゲームだったのでしょう?

今日もありがとうございました(^-^)


騎士団メンツの襲撃、今回で終わらせたかったのが長くなってしまったので結局分割。また中途半端なところで終わってしまいゴメンナサイ!

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