表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/236

またお客様

初めてのお茶会も無事終了し、

『今度は是非うちに来て下さいませね!!』

と口々に言いながら、上機嫌でお嬢様方は帰って行かれました。

とりあえず精神的なものがごっそりと削げ落ちた感が甚だしかったので、お片付けはそこそこに私室へ下がらせてもらいました。


いつもの定位置、ふかふかソファにダイブです。

「私、いつの間に清楚で可憐な奥様になっちゃったのぉ~?!」

手近にあったクッションをぎゅうっと抱きしめながら恥ずかしさで身悶えています。

「まあ、奥様。それは間違いではございませんわ」

じたじたする私を微笑みながら見守るミモザ。

「もうパーティーとか社交界にどの面下げて参加したらいいの? 恥ずかしすぎです! また今までのように引き籠りに戻るわ!」

クッションに顔を埋めていますが、頭(顔)隠して尻隠さず。

「しかしそれは難しいようですわ」

そんな私にダリアが申し訳なさそうに眉尻を下げて言いました。はて、何が難しいのでしょう? おかしなことを言うダリアに、私はクッションから顔を上げ、数度瞬きしました。

「なぜ?」


「はい。先日よりパーティーやお茶会のお誘いがどんどん届けられております」


なんと。

「NO~~~~~!!!!」

ひっくり返るかと思いました。頭を抱える私とは対照的にダリアは微苦笑したまま事実を述べてくれました。

「先日の夜会以来、社交界での奥様の地位がうなぎのぼりのようでございます。あの旦那様の目を覚まさせたということだけでなく、それよりも奥様自身の魅力がとても褒めそやされているようで……」

なんと。

「NO~~~~~!!!!」

それ以上言わないで? ほんとに幽体離脱しちゃうから!

顔をクッションに埋め、耳を押さえる私。黒歴史をみなまで言わないで?!

「まあまあ、奥様。すべてに参加なされる必要はありませんわ」

「ほんと?」

動揺しまくる私を宥めるように背を撫で、優しい口調になるダリア。

「ええ。すべてがすべて善意でお誘いくださっているところばかりとは限りませんから。フィサリス家と懇意にしているというだけでも世間では箔が付きますから、それを狙っての輩もおります」

優しい口調ですけど、言ってる内容は怖いです。

こわっ! 社交界こわっ!! これまでは斜陽貴族でしたから、そんな社交界のドロドロからはすっかりハブられてきましたので穏やかなものでした。超一流には超一流の苦労ってものがあるのですね。

ソファの上にも拘らず、思わずズサッと腰が引け頬がひくつきました。

社交界の裏を聞いてビビった私に、

「奥様がそうご心配なされなくても大丈夫ですわ! ロータスと私できちんと処理させていただきますから」

そう言ってぴかーっと微笑みました。ダリアの横ではミモザも力強く肯き、同じように微笑んでいます。

何をどう処理されるのでしょうか? ……いえ、いい笑顔のダリアやミモザにつっこむことはできません。うん、大丈夫。すごく安心の黒い笑顔です!

「……ありがとう。頼りにしているわ」

ああ、私はみんなに護られています!




そうこうしていると、旦那様の帰館を知らせに旦那様付の侍女さんの一人がやってきました。

「失礼いたします奥様。旦那様がお戻りになられました」

「ああ、もうそんな時間?」

コワイ社交界とか黒歴史にジタバタしている場合ではありません。今日はお茶会をしていたのでそれなりにおめかしをしているので着替えなくてもいいのですが、ソファでゴロゴロしていたので若干ドレスに乱れがあります。急いでソファから身を起こし、皺になりかけたドレスを直したりと身繕いをしていると、

「あのぉ~。それがお客様がいらっしゃってまして……」

言いにくそうに上目遣いで進言する侍女さん。

「まあ、どなたですか?」

ダリアがいつものビシッとした侍女長の顔で侍女さんに聞くと、

「旦那様の同僚の方でございます」

いつものお仕事仕様の真面目な顔に戻って侍女さんが答えました。

「同僚の方ということは、騎士様?」

ミモザに着衣を直されながら、侍女さんに問う私。

「そうでございます。特務師団の方でございます」

「あら~! とりあえず急がなきゃね。……ありがとう、ミモザ。さ、行きましょう」

ぱぱっとミモザにメイクまで直してもらい、エントランスに急ぎました。しかしどういうことでしょう? 旦那様がお友達を連れて帰ってきたことなんて初めてのことです。


「お帰りなさいませ、旦那様!」

小走りに向かったエントランス。

いつもなら旦那様とロータスが話しているのですが、今日は。


「こんにちは~奥様!!」

「お邪魔しま~す!」

「わぁ! 本当にお綺麗な方ですね!」

「うぉ~、本物だ~!」

「幻の奥様だ~!!」

「キャア~、素敵な方です~!!」


ワイワイガヤガヤ。一体何人連れてこられたのでしょう? つか、『幻の奥様』って何ね?! ……こほん。動揺しました。

いつもは静謐なエントランスが騎士服を着た人たちでワヤワヤしています。私はエントランスに姿を見せるや否や、騎士様方に囲まれてしまいました。何名かは女性もいます。

「あ、あの~!」

ちょ、も み く ち ゃ し な い で っ !!

ひょろりと背の高い私ですが、それ以上に上背もありがたいもいい騎士様たちに囲まれてにっちもさっちもいきません!! 

私がアワアワしていると、

「こら!! ヴィオラに群がるんじゃない!」

そう言って旦那様が私の肩をぐいと引き寄せて包囲網から救出してくれました。

ほっ。助かった。

「お、お帰りなさいませ旦那様! これはまた盛況ですわね……」

苦笑交じりに間近にあるお綺麗な顔を見上げながら再度お帰りなさいを言うと、

「いきなりスミマセン。どうしても来るって聞かないもので……。特務師団の部下たちです」

げんなりしている旦那様。

「まあ、そうでございますか。それはおもてなししないといけませんね」

騎士様たちのお顔を見渡しながら私が言うと、みなさん満面の笑みでコクコク頷いています。若干生温かい目で見られている気がするのは私の被害妄想でしょうか?

「いえむしろ酒とおつまみを与えていれば大丈夫です」

そんな騎士様たちを半目で見据える旦那様に、


「ええ~!? 団長ひどい~!!」

「奥様天使~!」

「爆発しろ~!」


とまあ、ブーイングの嵐です。

まあとりあえず私の肩をがっちりと抱いたままの旦那様の手をべりっと剥がし、

「そうは参りませんわ。旦那様がお世話になっている方たちですから丁重におもてなしさせていただきます! みなさま、サロンで少々お待ちくださいませ。ローザ、みなさまをサロンにご案内してさしあげて頂戴」

「はい、奥様」

近くに居た旦那様付き侍女さんの一人に指示を出しました。




旦那様と騎士様をエントランスから追いやってすぐさま円陣です。

「ロータス、総勢何人いらっしゃった?」

「全部で15名です」

「さすがね! ありがとう。じゃあ、カルタムに食事の用意をお願いして。時間稼ぎにオードブルとかでもいいから! あ、お酒もふんだんにね」

「かしこまりました」

そう言うや否や厨房へと急ぐロータス。それを見送り次の指令です。

「ダリアは侍女さんを手配なんだけど、今日はサロンにも何人かまわしてね」

「わかりました。お茶の用意もすぐにいたします」

「ありがとう!」

そう言ってダリアも使用人ダイニングの方に消えていきました。

「私とミモザと、あとはダリアからの助っ人でサロンのおもてなしね」

残ったミモザに指令です。

「かしこまりました」


こうして『旦那様シフト』を応用した『急なお客様シフト』が緊急配備されたのでした。

しかし今日は何とも珍しくお客様の多い日ですねぇ……。

今日もありがとうございました(*^-^*)


今日(3/20)、と3/15、19の活動報告に5000件ありがとう小話を載せています。よろしければそちらものぞいてやってくださいませ(^-^)/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ