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奥様生活開始!

いやー、最高級寝具の寝心地はやはり最高級でありました。広々としたベッドは眠り心地抜群だったし、皺ひとつない真っ白なシーツは清潔感バリバリで肌触りもばっちりでした。う~ん、公爵家の使用人さんたちいい仕事してますね~! この技、ぜひとも伝授していただきたいところです。


もそもそとベッドから起き出したものの、はたと気が付いたことがありました。着替えやらこれからどうすればよいのやら、まったく解らないんですよ。これが実家ならば、まずは身支度を整えるのですが、いかんせんここは公爵家よそさまのいえ。勝手に動いていいものやらどうなのか。というか、どこに服が仕舞われているのかさえ判らない有様です。これは今日誰かに説明していただかなくては不便極まりなしです。

夜着のまま腰に手を当て周りを見回していた私でしたが、


コンコンコン


小気味よいノックの音の後、

「奥様、お目覚めでしょうか?」

という男の人声が聞こえてきました。男の人ということは執事さんでしょうか? さすがに夜着姿を見せるのはよくないと思い、私は慌てて夜着の上からガウンを羽織り、

「はい、起きてます」

と返事をしました。

「失礼いたします」

という声と共に部屋に入ってきたのは、執事さんと思しきパリッとした壮年の男の人と女の人が2名でした。女の人は昨日私のお世話をしてくれた人たちです。ちょっと年かさの人と若目の人、どちらも髪をきっちりとまとめていて、お仕着せの紺色のワンピースに身を包んでいます。

3人は扉の内側にキチンと一列に並ぶと、

「「「おはようございます、奥様」」」

ぺこり、とお辞儀をしてきました。腰の角度は45度。素晴らしく教育されていますね!

って、そんなことはどうでもいいです。つられて私も頭を下げかけましたが、いかんいかん私は奥様だよ、と思いとどまり、

「おはようございます」

とだけ挨拶しました。

「わたくしは執事のロータスでございます。今日から奥様のお世話をさせていただく者たちを連れてまいりました。こちらが侍女長のダリアで、こちらが奥様付き侍女のチーフのミモザでございます」

素直に頷いた私を満足気に見た執事さんは、年かさのほうをダリア、若い方をミモザと紹介してくれました。

というか、私一人に侍女さんが二人なんて贅沢ですね~。実家では侍女なんて贅沢品ですから、みんな自分のことは自分でやってましたよ! コルセットはさすがに家族で助け合っていましたが。服くらい自分で着られます。一応お化粧とかも……『一応』の範囲でできます。要は見られたらいいんですよ。オバケじゃなければね。

でもここは公爵家。侍女の一人や二人や三人は当たり前なのです。貴族セレブは自分のことは自分でしないの、これ常識。

「ダリアとミモザね。よろしくお願いしますね」

私は二人に向かって微笑みました。

「至らないこともございますが、精一杯お勤めさせていただきます」

「何のご遠慮もなさらずに、なんでもお申し付けくださいませ」

二人も笑顔で話しかけてくれます。

ダリアは、ぱっと見アルプスの少女につらく当たっていた女史のような方だったので、性格もそんなだったらどうしようかと一瞬身構えましたが、どうやら杞憂のようです。ミモザは、見たまま、若いかわいらしい人のようです。


私たちの和やかな自己紹介を静かに見守っていた執事さんは、

「この屋敷のことはわたくしがすべて取り仕切っておりますので、気になることがあれば何なりとおっしゃってくださいませ」

そう言って恭しく手を胸に当てて礼をしました。

「わかりましたわ」

私が頷くと、

「では奥様。朝食の用意ができておりますのでお支度ができ次第食堂の方へお出ましくださいませ。では一旦わたくしは失礼させていただきます」

そう言ってもう一度礼をすると部屋を出て行きました。




「まずは着替えなんだけど……」

私が最後まで言い終えないうちに、

「はい、こちらでございます。どれでもお気に召したものをどうぞ」

そう言ってダリアが入り口とは違う扉をすっと開けました。いや正直、私はそれを隣の部屋に通じる扉だと思ってたんですけど、違ってたんですね。開けられた扉の中は、もはやクローゼットというよりも衣裳部屋でした。下着から靴まで揃っています。グラデーションでドレスが並んでいる様は圧巻です。でも、こんなに着ないというか着れないと思うんですけど? 何着かをヘビロテで充分です、私。


「……」


圧倒されて動かない私を、ダリアがそっと背を撫でてくれます。

「よろしければわたくしどもが奥様にお似合いなものをお選びいたしましょう」

「……お願いするわ」

今までの生活とはあまりにもかけ離れているので、私はめまいがしました。


淡い水色のドレスを選んでもらい、そのままダリアとミモザに支度をされながら、

「そう言えば、旦那様はお食事どうされるのかしら?」

鏡越しに聞くと、

「旦那様はお連れ様と一緒にすべての生活を別棟でされております」

ダリアが冷たい声で一息に言いました。てか、それまで穏やかだったダリアの顔が一瞬にして能面みたいになりました。目がイってます。しかも背後からブリザードが噴出してきたようにも見えるのは私の気のせいではないでしょう。同じくミモザからも同じような空気を感じました。

こ、怖い!! つか『お連れ様』って誰ね?!

「あ、あの、『お連れ様』って誰のことですか? 昨日お友達かどなたかがいらっしゃったの?」

ダリアたちの雰囲気にビビりながらも私は聞きました。

「別棟の、旦那様のお気に入りのお方です」

恋人とか彼女とは呼ばないのね?! ダリアの声が低くて怖いです。その横に控えるミモザも半眼。ブリザードのようなオーラが漂ってます。

「彼女さんのことですよね?」

「そうともいいましょうか」

ひえ~~~!! 返答が冷たいです!

「ちなみにお名前は……?」

「カレンデュラ様と申しましたでしょうか?」

なぜに疑問形? 『それが何か?』的な返答?

「ダ、ダリア? ミモザ?」

ビクゥっと怯えた私に気が付いた二人は、

「ま、まあ、申し訳ございません奥様!!」

「奥様はお気になさらずとも大丈夫でございますのよ、おほほほほほ……」

と、元の柔らかい雰囲気に戻り、かつ、慌てて取り繕っていました。


あれ? 旦那様と彼女さん、使用人に嫌われちゃったりしてます?



今日もありがとうございました!(*^-^*)


予想を超えるお気に入りにまだガクブルしてますが、楽しんでいただけるように頑張ります! ありがとうございます!

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