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調印式、もとい、結婚式

衝撃の商談成立から一年の婚約期間を置いて、私たちは結婚しました。

もちろん契約のことは家族にはナイショにしておきましたよ。あまりの鬼畜っぷりに家族が卒倒しかねないですからね。耐えられるのは私くらいなものでしょう。

当初の予定では半年後に挙式のはずだったのですが、なにやら南の国境付近できな臭い動きがあったらしく、軍部が動いたのです。もちろん公爵様も出動ですよ。で、落ち着いたところで、ということで一年も開いてしまったのです。あやうく婚約やら公爵様の顔やらいろんなことを忘却の彼方にぶっとばすところでした。




そして冒頭に戻り、結婚式当日。


私たちは特別に王宮内にある神殿そうほんざんで結婚式を挙げることになりました。なんてったってアイドル……いや、こほん、公爵様の結婚式だからだそうです。ふ~ん、大貴族おえらいさんになると扱いが違うんですね~!

私は公爵家が用意してくださった、最高級のシルクを惜しげもなく使用したなんともゴージャスなウェディングドレスを身に纏い、これまた王子様もかくやというほどの美男っぷりを見せつけている公爵様の横に並びましたよ。ええ、ええ、衣装とアクセサリー以外は平凡な私です。こんなキラッキラの美形の横に並んでるなんて、世の中何か間違ってますよね。重々承知していますから、きっつい視線で睨まないでくださいませんかね? お嬢様方。体中あちこちチリチリ焼け付く気がします。ジェラーシー光線ハンパないです。


なんとか視線に射殺されずに済み、神官様の誓いの言葉に嘘八百で宣誓し、いよいよ結婚証明書にサインです。これにサインしちゃうと結婚が成立しちゃうという、ペラッペラのくせにひじょーに重たい紙切れなのです。一般的に、神官様たちあいにんの前で宣誓し、そのまま証明書にサインすると、それは神官様の手で王宮内にある神殿そうほんざんに納められてしまいます。

ちなみに離婚するときはその格納庫の中から証明書を発掘しないといけないので、非常に面倒だからものすごく嫌がられます。『あー、うちの証明書はよくわかる場所に格納しといたほうがいいですよー』と後からそっと耳打ちしたほうがいいかしら。

何のためらいもなく公爵様がサインをされ、その羽ペンを私に手渡してきます。おまけの甘ったるい笑顔は名演技ですよね。私の引きつり笑いは堪忍して下さい。受け取ったペンで、私もサインしました。


これで『法的には』夫婦となってしまいました。


しかしまあ、私の中では『結婚式』というよりも『超派手な条約締結・調印式』みたいな認識です☆




その後に続く披露宴も、私にとっては苦痛の時間でしたね。はっきり言って何の罰ゲームだ? ……って、借金返済のための罰ゲームですね。はい。ごめんなさい。そうです、甘んじて受け入れなくてはいけません。

相変わらずビシバシ飛んでくるお嬢様方からのレーザービームにチリチリと肌を焼かれ、やれ仕事の同僚だ上司だ部下だ、やれ社交界の友人だとかに愛想笑いで挨拶して、挙句の果てには王族ご一同様にまで御目文字おめもじして。ああ、一生分の社交をした気分です。自慢じゃないけど今までほぼヒキコモリーヌだった私なんだからっ!

そんな私の心の叫びがダダ漏れだったのか、

「大丈夫かい? 疲れてしまった?」

私の肩を抱き寄せ甘ったるい笑顔で聞いてくる公爵様。ハイ、思いっきり公衆みなさんの面前ですよー。

おおっと、そうかもう任務ミッションは始まってたのですね! 危なくまたトリップするところでした。

「いいえ、大丈夫ですわ」

儚げな微笑みでにっこりと微笑み返します。うん、満点だと思いますけど。

「ならよかったよ」

さらに上をいくキラキラスマイルで微笑み返す公爵様。糖度増しましたね。げへっ、甘っ。


そんな寸劇を繰り返していたら、美味しそうなお食事もデザートも、一口たりとも私の口には入りませんでした。がっくり。




寸劇万歳な披露宴も終えて夜。

私は初めてフィサリス家に足を踏み入れました。

公爵様、いえもはや旦那様ですね、にエスコートされて入った玄関には、ずらりと使用人たちがお出迎えをしてくれていました。さすがはお金持ちですね、たくさんの使用人がいます。うちなんて片手で足りちゃうくらいなのに。


「「「お帰りなさいませ、旦那様、奥様!」」」


ザザーッっと音がしそうな勢いで頭を下げられますが、それにビビってしまう私は貧乏人です☆ しかも『奥様』て! 恥ずかしくて硬直するわ。

しかし旦那様はそんな使用人さんたちのことは華麗にスルーして、

「今日からここで生活してもらいます。部屋に案内しましょう」

そう言うと、私の手を引き二階へ続く階段へと私を誘いました。




連れてこられたのは何とも素敵にだだっ広いお部屋です。ちゃんとソファや机、物書き用のデスクもあります。そして存在感ありありなベッドは、一体何人が寝転べるのでしょう? 少なくともうちの家族は全員収まりきるでしょう!! 天蓋なんかもついちゃっています。

白を基調としたその部屋は控え目ながら贅を尽くしたものでした。今までそんなものよそ様の家でしか見たことなかった私は、思わず頬をつねりそうになりましたが、あわやのところでとどまりました。ああ、そもそもここはよそ様のおうちですね!

きょろきょろと挙動不審な私に苦笑をもらしながら、

「ここが夫婦の寝室です。ここを貴女は自由に使ってもらって結構ですよ」

旦那様は言いました。

ほう、夫婦の寝室ですか。とはいえニセモノ夫婦な私たちですから、自由に使っていいということは、つまりは私だけの『私室』と考えていいってことですね。そこは理解しましたので、旦那様の方を向いてこくりと頷いて見せます。

「わかりました。え、と、旦那様はどちらでお過ごしですか?」

あまり深いところはツッコまないようにしたいですが、基本情報は聞いておかないと困ります。

「私は離れ――庭園の端に別棟があって、そちらに居ます」

「彼女さんもですよね?」

「そうです」

「わかりました。なるべく近寄らないでおきますね」

「……」

なぜかビミョーな表情をされます。私、何かおかしなことを言ったでしょうか?

「どうかされましたか?」

「いえ。あまりに淡々とされているので……」

「だってそういう契約でございましょう?」

「そうですね。では、私はこれで」

「ハイ。お疲れ様でございました」

「……」

またビミョーな顔をされてしまいました。


旦那様が出て行き一人になると、私はう~~~んと伸びをしました。

今日一日疲れましたよ。結婚式があって、披露宴があって。仲睦まし気に振舞うのはさすがに最後まで慣れませんでした。最後の方は引きつってましたね。ばれてないといいのですが。

それから旦那様と入れ替わるようにして入ってきた二人の侍女さんに世話をされて、私はようやく寝支度を整え、そのままベッドへダイブ☆

明日からはいよいよお飾りの奥様発進ですよ。ま、グダグダ考えるのは明日からに……グゥ。


今日もありがとうございました!(^ω^)


思わぬお気に入り登録の数に打ち震えております!嬉しい限りです!

とっても励みになりますので、また頑張ります m(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] ちょっと読み直してみたらまた読み進んでいます。凄く面白い!!クスクス笑い、心がホンワカ♡♡♡
[気になる点] >なんてったってアイドル 年がばれる(笑)
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