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welcome to our party!

 無事に一の姫様の披露宴が終わった数日後。

 今日はお客様がくるということで、私は朝から準備に追われてます。

「お菓子と、お茶と。お席はわたし庭園でいいかしら?」

「そうでございますね」

「はいはい、もっとテンション上げて行こう!」

「はぁ……」

 でも、張り切ってるのは私だけで、使用人さんたちはイマイチ乗り気ではありません。


 というのも今日のお客様がカレンデュラ様だから。


 明日にはアンバー王国に帰るらしく、帰る前にもう一度お目にかかりましょうということなのです。

 先日の来訪で、拒絶反応は少しはマシになったとは思いますが、それでもやっぱりカレンデュラ様が別棟にいた頃がどうしても忘れられない使用人さんたちにとっては、トラウマとも言える人ですからね。

 微妙な心境なので、あまり無理は言えないか。




 そして約束の時間に現れたカレンデュラ様。

「図々しくまた来ちゃったわ」

「いいえ、いらっしゃいませ! お待ちしておりましたわ」

「ありがとう。——さ、着きましたよ」

「?」

 馬車の中に向かって声をかけるカレンデュラ様。

 今日はお一人じゃないってこと?

 聞いてないよ〜!? ……じゃなくて。

「今日のご訪問はカレンデュラ様だけじゃなかったっけ?」

「そうお聞きしてましたが」

 私はロータスにこっそり耳打ちしました。

 ロータスも聞いてなかったみたいで、眉をクイっと上げています。

 ひょっとして、例の旦那様と一緒に来られたとか?


 それならめっちゃ見たい。(会いたい?)


 私が興味津々でカレンデュラ様の後ろを覗き込んでいると、予想に反して、降りてきたのは上品なかわいらしい方。しかも子連れ。


 ……この人、どっかで見たことあるけど……まさか、ね。


 なんとなくうっすら既視感のある美人さん。しかし使用人さんたちは『??』となっています。

 え〜と、どこでお会いしたんだっけ……一生懸命記憶の糸をたぐっていると、


「ごめんなさいね、私がここに出かけるって聞きつけてくっついてきちゃったの。アンバー王国の王妃、レティエンヌ様よ。そしてこちらは王太子アンジェ様。ほんと、お忍び~とか秘密で~っていうのが大好きな方でね」


 ため息をつきつつカレンデュラ様が紹介してくれた名前にビックリです。

 そうだそうだ、アンバー王国の王妃様だ! この間のパーティーで会ったばっかりじゃないの。まさかうちに来るなんて思いもしなかったから、強制的に別人だと思い込もうとしてたわ。

 ……じゃなくて!


 まさかの隣国王妃様(と王太子様)!!


「楽しそうだからついてきちゃった!(てへっ☆)」


〝ついてきちゃった☆〟じゃねって。

 あまりの大物ゲストに(しかもアポなし!!)血の気が引く思いです。

 てゆーか、うちの国の王族にしろ、隣国の王族にしろ、フランクすぎでしょ。いきなり臣下の家に押しかけてくるな。っと、本音が出ちゃいましたね。

 私が面食らってる横で、さすがのロータスも密かに慌ててるようです。そうは見せないポーカーフェイスが羨ましい。

 他の使用人さんたちもソワソワしています。

 私は気合い入れて準備してたけど、使用人さんたちはイマイチ乗り気じゃなかったから『完璧な準備』とはいえないのでしょう、王妃様の登場に、使用人さんが何人かサーっと消えていくのが目の端に映りました。支度をさらに完璧にするためですね、わかります。なんなら私も手伝いたい。


 ちょっと時間稼ぎに庭園を案内しつつ、頃合いを見てお席に案内しました。




 わたし庭園にしつらえたお茶の席。

 カレンデュラ様と隣国王妃レティエンヌ様と一緒にお茶を楽しんでいます。

 ほぼ初対面の隣国王妃様とこうしていきなりお茶とか白目剥きそうだけど、ここは今まで培った社交仮面で切り抜けますよっと。

 私たちの側では、アンジェ様がバイオレットに自国の本を読み聞かせてくれています。


「むかしむかしの王様が……」

「おーしゃ?」

「レティは王様って言えるんですね。僕はアンジェですよ」

「あん?」

「まだ難しいかな? お兄ちゃんでいいよ」

「おにー?」

「うん」


 優しくレティの頭を撫でる王子様。

 アンジェ様は十三歳ですが、二歳にもならないバイオレット相手にも優しく接してくれています。いいお兄ちゃんですね。

 そんな二人の様子を楽しそうに見ている王妃様。

「私もレティって呼ばれてるから同じね。親近感が湧くわぁ」

「まあ、それは恐れ多い」

「いいじゃないの〜。レティちゃん、ほんとかわいいわ」

「ありがとうございます」

「色素は公爵様に似てるけど、顔の作りは貴女に似てるのね」

「そうみたいです。将来地味子にならないか心配で心配で」

 なんなら色素が私似で、造形が旦那様似だったらどんなによかったことか……はぁ、ため息。

「はぁ?」

 カレンデュラ様、そんな心底『なに言ってんの?』って顔しないでください! 母は真剣に心配してるんですよ!

 まあ、顔は大きくなったら変わるし? ワンチャン期待もあるでしょう。

「そのうち旦那様に似て美人になればいいんですけど」

「まあ、顔はともかく性格はパパに似ないといいわね」

「あ、同意です……いやいや、優しいですよ! ちょっと愛情過多なだけですよ!」

「あはははは!」

 お腹を抱えて笑うカレンデュラ様の横では、王妃様が、

「?」

 首を傾げています。

 おっと。王妃様は旦那様のこと知らないんですよね。おかしな情報植えつけてはいけません(旦那様の黒歴史を蒸し返すともいう)から、話を変えないと。

「アンジェ様はとてもお優しいんですね。レティの相手を嫌がらずにしてくださって」

「アンジェは一人っ子だから、弟妹欲しいっていつも言ってるの。だから今日は妹ができたみたいでうれしいんじゃないかしら?」

「ああまたそんな、恐れ多い」

「でもほんと、レティはかわいいわねぇ。先日も言ったけど、私も娘が欲しいのよね〜……そうだ!」

 王妃様が『閃いた!』って顔してるけど、嫌な予感しかしないのはなぜ。

「なんでございますか?」


「レティをうちの息子のお嫁さんにしたら、かわいい娘もできるしアンジェも喜ぶしで一石二鳥だと思わない?」


 王妃様、突拍子もないこと言い出さないでください! ひっくり返るかと思ったわ。

「ええ、と、それは、さすがにいろいろ問題が多いんじゃないかと思いますが……。きっとアンジェ様にはもっとふさわしいお嫁さん候補がいると思いますし、なによりレティはまだ小さいので……」

 やんわりお断りするけど、それより何よりうちの旦那様が了解するとは思えない!

 私がしどろもどろになっていると、


「母上、公爵夫人を困らせてはいけませんよ。そりゃあレティはかわいいですけど、勝手に縁談進めてはいけません。ご両親だけでなく国同士の話し合いもありますし、なによりレティの気持ちが大事でしょ」

「ソウデスネ」


 アンジェ様が救いの手を差し伸べてくれました。息子に諭されてる王妃様かわいい。

 てゆーか、王子様のしっかりしてること! こんな聡明な跡取りがいるなんて、アンバー王国の将来は安泰ですね。




 楽しい時間はあっという間に過ぎるもの。

 その後は何事もなく(!)アンバー王国の話などを聞かせてもらったりしていましたが、


「レティ! また勝手に出て行って!! 心配するじゃないか」

「カレン、そろそろ帰るよ」


 うちの旦那様に勝るとも劣らない美形の国王様と、ロマンスグレーが素敵なおじさまが迎えに来て、カレンデュラ様たちは帰って行きました。




「レティの縁談が飛び出した時にはびっくりしちゃった」

「まだ一歳でございますからね。あの時は内心、慌てましたわ」

 お茶会のお世話をしてくれていたステラリアが苦笑しています。

「だよね〜。てゆーか、レティが国外に行っちゃったら、サーシス様、泣いちゃうんじゃないかしら」

「そうでございますね」

 アンジェ様が止めてくれてよかったです。

「ねえねえロータス」

「なんでございましょうか」

「カレンデュラ様、確か〝金持ちおじいちゃん子爵と結婚した〜〟とか言ってたけど、旦那様、全然お若かったですよね」

「確か五十代後半だそうですよ」

「見えなかった!!」

 


今日もありがとうございました(*^ー^*)


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