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思わぬ便り

 公爵家的にはステラリアの移籍騒動が収まり平和が戻ってきたのですが、王宮は一の姫様の結婚を間近に控えて多忙を極めているようです。

 結婚式自体はアンバー王国の、お婿さんの自領で行われるのですが、披露宴をフルール王国の方でもやるそうなんです。

「向こうで結婚式して披露宴もして、なのにまたフルールでも披露宴して……って、王族は大変ですね」

 ニシヘヒガシヘ引っ張りだこ。おまけにずっと社交の場とか、どんな苦行でしょうか。

 想像するだけでもゾッとするわ。

「まあ、仕方ないね。そのおかげでこっちも大忙しだ」

 私が姫君の苦行……ではなく婚姻に関するあれやこれやを勝手に想像してガクブルしている横で、旦那様はため息をついています。

 旦那様たち近衛騎士団の方々は、その披露宴の準備でてんやわんやだから。

 フルールの披露宴にも友好国からの賓客がたくさん来るので、その警備計画とかに追われるらしく、最近は帰りも遅かったりします。

「アンバー王国での結婚式には陛下や王妃様も参列なさるんですよね? サーシス様も警護で同行されるんですか?」

「それは回避したよ。陛下のお出ましなら隊長の出番でしょ。王太子殿下ガキンチョも行くけど、僕まで一緒に行ったら王宮の警備が手薄になるから行けないよ。あー残念だなー」

「サーシス様、最後棒読みになってますよ」

 旦那様、さも『仕方なく』みたいな感じで言ってるけど、『出張回避』でウキウキしてるのバレバレですからね! まったく……仕方のない人です。


 そうこうしているうちに、一の姫様のお輿入れ隊は出発していきました。




 結婚式&披露宴が終わればすぐフルールにやってきて、また披露宴です。

 旦那様たちの忙しさもピークに達してきました。

「今回はややこしい国(・・・・・・)を招待していないから全然マシ」

 とは旦那様の言。『ややこしい国』はもう存在しないので、招待しようがないですけどね!

 

 アンバー王国の披露宴が終わった頃、フルールにも賓客が続々と到着してきました。


 友好国から来た客様、そしてアンバー王国から来るお客様。……って、向こうでも出席してるから二度手間じゃね? とは口が裂けても言わないけど。

 そんな中、ロータスが一通の手紙を持ってきました。


「誰からかしら?」

「アンバー王国のオブシディアン子爵夫人からでございます」

「アンバー王国のぉ? オブシディアン子爵夫人んんん??」


 素っ頓狂な声が出ました。 

 え? 誰それ全然知らない人なんですけど??


「サ……サーシス様、宛、とか?」

 まさかの浮気発覚!? ……って、もう何度目よこのネタ。

「いいえ、奥様宛でございます」

「私ぃぃぃ?」

 もういい加減飽きたネタではなく、見ず知らずの人から私宛の手紙。なんなんでしょうか??

 恐る恐るロータスから封書を受け取り、手紙を取り出すと。


 まさかのカレンデュラ様から!!


「ロロロロロロロータス!」

「奥様、少し落ち着きましょうか」

「無理無理無理無理! だって、これ、カカカカカカ……カレンデュラ様からですよ、これ!」

「ええ?」

 驚くロータスに手紙を見せました。


 手紙には、私が元気にしてるか、自分はまだアンバー王国にいて平和に暮らしてる、近くフルールに行くからお茶でもどうか、ということでした。


 そして最後に書かれていたサインが、『オブシディアン子爵夫人カレンデュラ』だったんです!!

「カレンデュラ様、結婚してたのね〜」

「…………」

「あからさまに嫌な顔しない!」

「はあ」

 珍しくロータスの顔に表情が出てます。まあ、ロータスだけでなく、ダリアや他の侍女さんたち全員ですけどね!

「姫様の披露宴に出席するためにフルールにいらっしゃったのね」

「まあ、そうでしょう」

「こちらに来る時は連絡してくださいねって言ってたの、忘れないでいてくださったんだ〜」

「そうですね」

「ちょっとくらい会えないかしら? やっぱりお忙しいかしら?」

「さあどうでございましょう」

「ロータスの反応が冷たい! ……まあ仕方ないとして。ねえ、お茶にお誘いしてもいい?」

「お屋敷に、で、ございますか?」

「ええ、そう」

 いつもと違って戸惑いを見せるロータス。

 ダリアたちもしれっと視線そらしてるし。


 って、もうかなり時間経ってますよ! そろそろ忘れてあげましょうよ!

 

 私は全然忘れてるっていうのに、ロータスたちにはまだわだかまりがあるようですね。

「……もしかしたら、その子爵様と上手くいっていなくて、また公爵家こちらに舞い戻ってきたいというような魂胆をお持ちかもしれませんよ?」

「はい?」

 どうしたロータス!? こんな疑心暗鬼なロータス初めて見たよ!

「奥様に危害を加えることを……」

 さらに言い募ろうとしたので。


「じゃあ、得意の調査してみたらいいじゃない」


 私はきっぱりと言いました。とか言いながら、うちの諜報部隊のことは未だによく理解してないんだけどね!

「調査、でございますか」

「ええ、そう。いつもみたいにちゃちゃと調べちゃったら、カレンデュラ様の魂胆がわかるんじゃない?」

「まあ……はあ」

「とことん調べて、それでロータスたちが『クロ』って判断するなら諦めるわ。スルーする」

 私が珍しく強気に出るからか、ロータスは少し考えてから、

「かしこまりました。少しお時間をください」

 静かに言いました。

「とことん調べちゃってくださいね!」


 大丈夫、カレンデュラ様はきっと以前のカレンデュラ様じゃないと思いますよ!

今日もありがとうございました(*^ー^*)

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