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お別れですか?

 王宮からフィサリス公爵家に使いが来たのは、寒い季節が終わり、暖かな柔らかい風が吹く頃でした。


「いいお知らせと、ガッカリなさるお知らせが届いておりますよ」

「え? なにその究極の選択的なやつは」


 ロータスが白い封筒を手に、こちらを見ています。


 なんだなんだ、珍しく悪戯っぽいことを言ってくるじゃないですか。


 いいお知らせと、ガッカリなお知らせ……?

 確かロータスはさっき、王宮からの使者が来てるからと言ってエントランスに呼ばれて行ったんだっけ。ということは、きっとどちらも王宮に関係のあることですよね。

 王宮から来た知らせで、私がガッカリするもの……といえば、ここはズバリ『パーティーのお知らせ』でしょう!

 でも『いいお知らせ』っていうのはなんだろう? 想像つかないなぁ。

 なんて、へっぽこ探偵ヴィーちゃんの迷推理が壁にぶち当たったのを察したのでしょう、ロータスが口を開きました。シンキングタイム終了のようです。

「どちらからお聞きになりたいですか?」 

「そうね、上がってから落ちるのはツライから、落ちてから上がる方にする」

「かしこまりました。では……近々王宮でパーティーが催されます。もちろん絶対参加です」

「やっぱりか〜。私の推理が当たったわ!」

 ほら、大正解でしたよ。てゆーかむしろハズレて欲しかったけど。


 パーティーかぁ。


 バイオレットを産んでから、ほとんど参加してなかったけど、こればっかりはしょうがないよね。だって王宮主催だもん。

「それで、今回はなんのパーティーなんですか?」

 私はロータスに尋ねました。

 というのも王宮では、プライベートは別として、ただむやみにパーティーすることはほぼないからです。

 どこかの国の偉い人きたから歓迎パーティーとか、王族の誰かの誕生日だとか、出陣式だとか、何かしら『名目』があります。

「それが今回の『いいお知らせ』でございます」

「ほほう! なんでしょう?」


「第一王女アルテミシア様の婚約披露の会ででございます」


「あら、それはおめでたい」

「本当に」

『第一王女様の婚約が決まった』から『パーティーする』んですね。いいお知らせとガッカリなお知らせ、どちらもバッチリ理解しました。

 ロータスから受け取った手紙にも書かれてあります。


 近々フルール王国第一王女・アルテミシア様が嫁ぐことになったので、そのお相手と、婚約の披露をする、と。(意訳)


 このお手紙は『お知らせ』でもあり『招待状』でもあったんですね。

「一の姫様にはおめでとうなんだけど、やっぱりパーティーは避けられないか〜」

「ふふふ。もう諦めましょう。今回は国内だけでなく、親交のある国からもお客様をお招きするようでございますよ」

「それものすごく盛大なやつじゃないですか! ……いつも以上に緊張しそう。早めに知らせてくれてよかったわ。覚悟を決める時間が要りそうだもの」

 一国のお姫様の婚約披露パーティーですもの、そりゃ盛大ですよね。

「そうでございますね。奥様は、パーティー自体も久しぶりでございますね」

「ああ、あんなに磨いてきた社交スキルが鈍っていそう」

 何しろ最近は『幻の奥様・リターンズ』状態でしたからね。

 笑顔の仮面、引きつらないかしら? 知らない人との会話、詰まったりしないかしら?

 ダンスだって、パートナーの足を……。


「ダンスも、最近はレッスンをしておりませんし」


 またまたニッコリ。いい笑顔のロータス、また私の考え読みましたね!

「そうそう、それそれ。体が鈍って……あっ!」

「パーティーまで十分時間がございますので、またしっかり練習しなおしましょう」

「はい……」


 うっかり藪を突いてしまったわ。




 仕事から帰ってきた旦那様にも婚約披露パーティーの話をすると、旦那様たちも今日、正式な発表を聞いたということでした。

「——って言っても、水面下ではこの話を知ってたけどね」

 旦那様はエリートですから、こういう極秘事項だってもちろん知ってたでしょう。そこは家族にもペラペラ喋らないのは流石だなぁと思います。……たまに(いや、よく?)それ言っていいんか〜い! 的なこと漏らしたりしますけど。

「今回は守秘義務守ったんですね」

「もし破談になったら困るでしょ」

「あ、確かに」

「王女の性格知って断ってくるってことも考えられたし」

「そこ!?」

 そんなに王女様性格悪いんですか?

 王妃様譲りの美貌と、明るく気品あるお姫様だと思いますけど? 


「相手はアンバー王国の貴族で、フルールとの国境に接した領地の持ち主だ。あちらの国とは今後も仲良くしておきたい」

「今までも協力してもらったりしてますもんね」

「……ああ」

 旦那様、今ちょっと視線外しましたね?

 アンバー王国といえば、旦那様の元カノ・カレンデュラ様を匿ってもらったりしたんですよね〜。

 オーランティアとの戦の時に、敵国むこうの情報をもたらしてくれたのがカレンデュラ様でした。

 戦が終わって元の平和が戻っても、いちおう身辺の安全確保のためにと、フルール王国と同じくらい平和なアンバー王国に移り住んでもらったのでした。

 大丈夫、今ではすっかり過去の話ですよ! 気にしてないですよ!

「辺境伯は、王女の性格込みで『いい』と言ってる変人らしい」

「いやいや変人て」

 王女様がどんな性格か知りませんけど、ちょっとは包み隠しましょうよ。

「そんなありえない人物だから、王女はしっかり捕まえておいて、逃げられないようにすることだな」

「末長く仲良くすることはいいことです! サーシス様、王女様を嫌いすぎません?」

「いや? 嫌いというよりあのプライドの高さとか気の強さが好みじゃないってだけだよ」

「ソーデスカ」


 王太子様のこともあまり好きじゃないみたいだし……旦那様、王族のみなさんと相性悪い?




 婚約が公表されてからは、どんどん準備が進められていく様子が伝わってきました。

 

「王女様のドレスを仕立てるために、王都の仕立て屋は大忙しみたいですよ」


 世間の様子を、このヒキコモリーヌである私に教えてくれるステラリア。ステラリアの情報源は主に元同僚。休みの日にお茶したりして最新王宮情報を得ているみたいです。

「お姫様のお輿入れは大変ねぇ」

 衣装に宝石類に……と、詳しいことは私には見当がつかないけど、きっといろんなものを持っていくんでしょう。

 公爵家からも採れたてホヤホヤの『ヴィオラの瞳(ヴィオラ・アイ)』を献上しました。きっと立派なお飾りに仕立て上げてもらうんだろうなぁ。

 私なんて持ってくるもんなんて全然なかったから、ほぼ裸一貫状態で……。

「奥様の時も準備は結構大変だったんですよぉ」

「ナンカスミマセン」

 自分の時を回想してたら、すかさずミモザが教えてくれました。


 クローゼットの中にぎっしり詰まったドレスの数々に腰抜かしそうになりましたね! 金持ちすごい、って。


 どれもこれも豪華なものばかりだから、お金も時間もかかったことでしょう。

 まあ、私のことは置いといて。

「ドレスといえば、今度のパーティーにはどれを着ようかしら」

「早めにドレスの注文をしておかないと、パーティーに間に合わなさそうです。マダムに連絡しておきましょう」

 ステラリアは作ることを前提に言ってるけど、別に作る必要なくない?

「あら、新調しなくても手持ちがたくさんあるじゃない。それにマダムたちだって王宮からの注文で、きっと今頃てんてこ舞いになってるはずよ?」

「でも、旦那様がなんと言うか」

「大丈夫。サーシス様とお揃いコーデのものをちょっと手直しして着ることにすれば、文句は言われないって」

「……確かに」

 ドレスのリメイクは得意です。旦那様の『ポイント』さえ押さえていれば、問題ないでしょ。


 ということで、私たちも準備をし始めた頃、また王宮から連絡がありました。




 再び受け取った手紙に目を通しているロータスの眉間にしわが寄っています。

 ロータスにそんな渋い顔させるような内容、気になりますねぇ。

「王宮は、何を言ってきたの?」

「それが……『ステラリアを返して欲しい』と言ってきております」

「はい!?」


 ステラリアを返せ、ですって!?


 いったい、どういうことでしょうか??

今日もありがとうございました(*^ー^*)


大変お待たせしてしまいました m(_ _)m

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