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お見合いパーティー?

なんだかいろいろ準備させられたこの三日。主に体力・体術方面ですが。

再び夜会の日がやってまいりました。ちょー気が重い。

とりあえず旦那様たちが警戒していたような王宮からの襲撃はなく、穏やかな日が続きました。ええ、それはそれはお稽古に集中できましたとも! ……一体私は何を目指してるんだろう、なんて疑問を胸に抱えつつ。


朝食をとりにダイニングに向かうと、すでにそこには普段着の旦那様がいました。って、なんで普段着?

「おはようございます。旦那様、今日はお仕事に行かれないのですか?」

「ああ、今日は休みです。だから夜会も一緒に行けますよ」

「そうなんですね!」

だから普段着でしたか。相変わらず旦那様のお休みの日を把握していない私です☆

夜会。旦那様が一緒ならば心強いですね! さすがに誰も声をかけてこないでしょう。




旦那様がいらっしゃるので、今日のお稽古は軽くダンスで済みました。ロータス先生のダンスレッスンの方が楽……げふげふ、好きだと思えるようになった私ってすごいなぁ、なんておかしな感慨にふけってしまいます。

旦那様も、ロータスから「かなり鈍っておられますね」とダメ出しを喰らってからは時折レッスンしていたので、もうそんなにキビシイ激はとんできません。

ふふふっ! 二人して成長です!

ダンスの後は庭園に出て旦那様とお外ランチをし、そのまま日向ぼっこしたりと、とってもまったりと過ごせました。もうすっかりリラックスモードに入っちゃったので、いまさら夜会とかだるいです。ほんと、もう行かなくてもよくね?

なんて思っていたのは私だけのようで、

「そろそろお支度いたしましょうか」

ノーとは言い難い微笑みを浮かべたダリアが迎えに来てしまいました。

「もうすっかりお屋敷でまったりモードだったわ……」

私ががっくり項垂れていると、

「まあまあ、そう言わずに。今日さえしのげばいいことですよ、ちょっとだけ頑張ってください」

旦那様に諭されてしまいました。わぁ……旦那様に言われちゃったよ。最近は「もう夜会に行くのやめましょうか」「イイデスネ~!」なんていう流れがお約束化してきてたのに。(そしてロータスに怒られるのもお約束ということで)

旦那様が先に立ち上がり、私に手を差し伸べました。ありがたくそれを取り、私も立ち上がります。

「はい、わかりました」

地味子が社交界に出ようと思ったら、お支度に時間がかかるのです。主に特殊メイクとか特殊メイクとか特殊メイクとか。たまにドレス。

ここでぐだぐだ言っててもダリアやステラリア、他の侍女さんたちに迷惑がかかりますね。

諦めた私はそのまま旦那様に手を引かれ、大人しく本館へと戻りました。




今日もドレスを盛りつけられて、私自身もデコレーションされて。

ドレスは今日も臙脂色で、前回とはデザイン違いのようです。旦那様が制服で参加してもいいようにということだったのでしょう。

しかしなにより、軽くて柔らかなシルクのドレスがうれしいです! なにせこの数日、生地も重いわ飾りも重いわの盛り盛りの盛装をさせられていたもんでね。軽くて締め付けないドレスがとっても楽チンです!

「わぁ! 重くもないし、窮屈でもない!」

うれしくなって、その場でくるくる回ってみます。これならダンスもラクラク!

靴だって、練習用の「常につま先立ちだよコレ」というようなピンヒールではなく、ヒールの高さも半分ほどの足に優しいヒールの高さです。

「これなら足も疲れない!」

これならコーナーもばっちりまわれます! って、違うか。

私が、そんな他愛のないことに喜んでいると、

「今日のドレスもよくお似合いですわ。ではお飾りもつけましょうね」

ステラリアが首飾りと耳飾り、そしていつもの指輪をつけていきます。キラキラ素敵な旦那様とお揃いの指輪。そして……いざとなったら凶器の指輪。使わないことを祈るだけですよ、ホント!

私が指輪をじとんと見ていたら、察したのか、ダリアとステラリアに苦笑されました。


支度を終えて階下に降りると、旦那様はもうお支度を終えてサロンで待っていました。

いつも待たせてスミマセン。

「お待たせしました!」

旦那様は、今日は制服ではなくビシッと夜会服を着ています。最近制服姿ばかりでしたので、久しぶりですね! ダークカラーがよくお似合いです。制服姿も素敵ですが、こういう正装もやはりかっこいいなと見惚れてしまいます。ちなみに今日の私とのお揃いは、首元のタイとポケットチーフです。ええ、もはやお揃いはお約束です。

「そんなに待っていませんよ。そろそろ行きますか」

私がソファーに掛けて待つ旦那様にご挨拶すれば、旦那様は手にしていた書類を机に無造作に置いて立ち上がりました。

「はい! あら、お義父様たちは一緒じゃありませんの?」

「母上が王妃様のストレス解消に呼び出されたとかで、今日は先に出て行きました」

「あらー。そうなんですね」

王妃様のストレス解消のためのお話し相手でしょうか? ストレスの元凶は……言わずもがなでしょうね。社交のプロである王妃様を、前回の夜会では見事に引きつらせていたあの方々。王妃様の心労、いかばかりか。


ということで、私と旦那様は二人で馬車に乗り込みました。




「今日は王太子様のお相手を、候補の中から見つけるということなんですよね?」

「そうですよ。王太子だけでなく、妹君の方も。ですから、今日の夜会はそんなにたくさんの客が招待されていません」

「まあ、そうなんですか」

やはり王太子妃候補ですから、身分の低い方はご遠慮願いますってところなのでしょうか。

いや、あの王太子の嫁になってくれる人ですよ、この際身分だのなんだの選り好みしてる場合じゃなくね? ……ごほごほ。あら、つい本音が出てしまいましたわ~。おほほほほ~。

私が一人ツッコミをし、一人笑って誤魔化していると、

「言ってしまうと、今日は伯爵以上の者しか招待されていません。仮にも王太子妃候補と王妹降嫁先ですからね、あまりに爵位が低いのもアレですから」

旦那様が説明してくれました。

やっぱりか! 私の考えが当たってました。

「王太子妃候補は、やはりバーベナ様が筆頭なのでしょうか?」

フィサリス公爵家に次ぐ名門公爵家のご令嬢ですし、年回りもいいし、アノヒトを置いて嫁候補なんてありえないでしょう。

すると、

「それなんですが、バーベナ嬢もセロシアと同じく全力回避しましたよ! それも、『わたくしには心に決めたお方がいます!』とかなんとか言ったらしくて! あはははっ!!」

旦那様がおかしそうに笑いながら教えてくれました。兄だけでなく妹もか! アルゲンテア家、職権乱用しすぎ!!

でも。

「心に決めたお方って……」

じとんと旦那様を見ながら言うと、

「いやいや! 僕じゃないですよ!『まだそんなことを言ってるのか!』『もうサーシス様じゃありません別の人です!』『じゃあここに連れて来い!』『今から探すんです!』『はぁ~?!』ってなやり取りが繰り広げられたらしいです」

慌てて、さらに詳しく説明してくださいました。

「それって……」

心に決めた人、いなくね?

「さすがに公爵殿も、あの夜会での騒動やそれ以外での振る舞いを見、そしてバーベナ嬢の性格を鑑み、総合的に判断して『このカップルはないな』と思って、バーベナ嬢は候補から外されたらしいですよ」

「じゃあ、結局、心に決めたお方って……」

「これから探すそうです」

なんじゃそら。

「……。では、お妃候補の方はどうなったんですか?」

「他の公爵家から一人、侯爵家から二人の、合計三人に絞られました」

三人ですか! 誰がジョーカーを引くのでしょうか?! 

ちなみに、いつもの夜会四人組だと、アイリス様とナスターシャム侯爵令嬢は候補に入っていてもおかしくないですよね身分的に。おかしくはないけど、でも、複雑な気分です。

誰かな~と、私が考えていると、

「ああ、そういえば。貴女のお友だちのサングイネア侯爵令嬢、彼女も候補に入っていましたね」

ちょっと思い出すふうで、旦那様がポツリと言いました。

たった今その名前が浮かんだところだったので、ドキッとしましたよ! 旦那様、私の考え読んだ?!

でもやっぱりアイリス様、候補に入ってました!!

「アイリス様が、ですか?」

ひょっとしたらお姉様がいらっしゃるかもしれないからと思い、旦那様に確認したのですが。

「はい。セロシアが、ちらりとそんなことを言ってました」

やはりアイリス様でした。旦那様、名前を聞いたうえでしっかり頷きましたよ。


「わぁ……。できれば選んでほしくない気がします」

「貴女のお友だちですからね、僕も同感です」


馬車の中がしばし、何とも言えない沈黙に包まれました。




王宮の大広間は、旦那様の言ってた通り招待客が限られているらしく、前回ほど人であふれかえっているということはありませんでした。

王太子妃候補はあげていますが、それ以外でもお気に召したお嬢様がいたらオッケーということだそうで、王太子様と釣り合う年齢の令嬢を持つ伯爵以上の身分のお貴族様とご令嬢、そして、妹君と釣り合う殿方(とそのご両親、身分は同じく伯爵以上)が招待されているそうです。ナニソレお見合いパーティーか。


旦那様といつものように手をつなぎ、国王様の元へご挨拶です。

もちろん陛下の横には、今宵の主役であるオーランティアの王太子様がいらっしゃいますけどね!

前回みたいに、射抜くように見つめられるのも絡まれるのも懲り懲りです!

すっかり王太子様に対して苦手意識が植わっている私ですが、旦那様はそうではないらしく、

「陛下、今宵のご招待、ありがたく存じます。オーランティア王太子殿下もご機嫌麗しく」

いつものことなのか、流れるように無駄のない騎士の礼をしています。う、美しい。

私もあわててそれに倣い(でも慌ててるように見せないのがミソ!)、深々と頭を下げます。

「よく来てくれたね、フィサリス公爵、そして公爵夫人」

国王様がにこやかに挨拶を返してくれている横で、王太子様もごく普通に挨拶を返してきています。あ、ちょっと拍子抜け?

「ごきげんよう、フィサリス公爵、そして公爵夫人」

前回のようなレーザービーム視線を寄越すわけでもなく、いたって普通です。

これは旦那様の言ってた通り、前回のことを反省して改心したのでしょうか?


とりあえず、王太子殿下にも深々と頭を下げた私。

また夜会が始まりました。


今日もありがとうございました(*^-^*)

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