オレとヤツのチョコ事情
内容がらっと変えましたよ
オレは昔から大雑把な性格だ。
細かい分量とかちまちま量るの苦手だし、すり切り一杯がすり切れてなかったりする。
そんなオレにお菓子作りなんてゆうスキルがあるはずもなく、某お菓子企業の陰謀イベントも貰う専門で、オレから誰かに手作りチョコなんて渡したことがない。渡すとしても、既製品をほいっとパスするだけだ。
一方のツレは細かい男で、手先も器用で、計測器なんてなくてもピタリピタリと適量を測れてしまうスーパーチート。お菓子を作れば当然のように素人離れ、玄人が裸足でかけてく愉快なサザ○さんになる。
よって、バレンタインは毎年、ツレからプロ級の美味しいチョコ菓子でオレが餌付けされる日になってます。
間違ってるのは知っている。
でも良いんだ。
だって美味しいんだもん。
「むぅぅ……。」
「どうだ?」
「うん、悔しいけど一番美味い。」
オレのコメントにドヤ顔するツレ。
水色のエプロンがよく似合ってますね、はい。
「てゆうか、チョコレート正直甘ったるくて苦手だし、カカオ多いやつは苦いから好きくないんだけど……。」
「けど?」
「お前のはなんか美味いんだよなぁ。」
今年は白い粉砂糖のデコレーションが綺麗なトリュフ5粒(この個数がまた丁度良い。こんにゃろう見抜いてやがる。)と、意外とフランクにウーピーパイだ。
ウーピーパイってのはオレも今日初めて知ったんだけど、ココア系の柔らかーいケーキ生地にクリームを挟んだお菓子のこと。指でつまんでパクリとかぶりつける、そんな気楽なお菓子だ。
ツレの場合は、このココア生地の表面を色とりどり、味選り取りみどりなフレーバーチョコでコーティングして、ついでにくだいたマカダミアナッツとか、スプレーチョコとか、フレークラズベリーとかで飾り付けしてます。
どんだけ器用なんですかおまいは。
いや美味しいけどさ。
中の生地がしっとりふわっ、とした口触りで、その周りのチョココーティングがカリカリッと気持ちのいい歯ごたえだから相性抜群。
中のクリームは甘さ控えめで、舌に乗せるとふわんといい香りがしてとろんと蕩ける。
カリッ、サクフワ、とろりん、で3回美味しい。
また一緒にトッピングされてるナッツとかベリーとか、もう、ね。
お前、今の職場やめてパティシエなれば良いんじゃね?
「どれが気に入った?」
「緑のピスタチオ味。」
「ふむ。」
「あと、王道のチョコバナナ。これ、意外とくどく無くて良いよね。」
「あー。そうかそうか。」
工夫した甲斐があったと嬉しそうにツレが頷く。
そりゃごくろーさまです。
てか、
「毎年、レベルアップしてる気がするんですけど。」
「去年より今年。当然だろう?」
「えぇ……もうお前の目指す方向が良く分からんですよ。」
「俺の目指す方向なんてずっと同じに決まってるだろう?」
「何かあったっけ?」
首をひねったオレに、ツレが苦笑いする。
「お前に喜んでもらう、だよ。」
「……。あ、はぁそうですか。」
「……流すにしても、もうちょっと温かみのある反応をくれ。流石に辛い。」
「いや、そう言われても……こいつ、自分の顔に自信あるからほざけるんだろうなぁ、としか。」
「違う。いや、その前に、今の渾身の訴えがほざいたことされてないか……っ?!」
「レベル高いと、お返しが面倒なんだよなぁ……。」
何か頭抱えて苦悩しているツレを放置して、俺はパクッとピンクのウーピーパイをかじる。
ラズベリー味。
苺じゃないのか。
「お返し何が良い?」
「それな」
「あ、現物払いはダメですから。」
「……。」
マジで狙ってやがったなコイツ。油断も隙もねぇ……。
「じゃあ、キ」
「それも現物に含まれます。イエス、ショタコン。ノー、タッチ。」
「俺はショタコンじゃない。」
「どーだか。」
「お前は立派な女だろうが。俺はお前以外無いぞ。」
「合法ショタ。」
「あのな……あんまりそういうこと言うなら、物理的に、体で、証明するぞ。」
「すみませんでしたぁっ!!」
「……これはこれで傷つく。そんなに俺とするのは嫌なのか……」
嫌です。痛いの嫌い。
それはさて置き、第三希望を聞いてみることにした。
「お前が健康で元気で幸せならそれで良い。」
「あれ、いきなり高尚なテーマに。何の罠だろう。」
「罠じゃ無いって……俺本当に信用されてないな……。」
「日頃の行い。」
「うっ。」
「いや、でもそんなこと言われてもオレの気がすまないっつーか……うーん……。」
「まあ、紛れもなく本心からの願いだからな。頼むから、俺が仕事に出ている間も元気でいてくれよ。」
そんな風にツレが真面目な顔をするから、オレは肩をすくめてチョコで言葉をごまかした。
取り敢えず、今度のホワイトデーには大雑把でもできる何か美味い保存食をツレに作ってみよう。
燻製ベーコンとかウィンナーとか、肉食系男子に良さそうなレシピを探してみよう。
チョコを食べながらそうオレは思った。