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夢見の人  作者: 貴遊あきら
序章
1/52

執務室にて

この小説は、自サイトの連載小説を登場人物や一部設定を使用し、新しく構成しなおして書き始めたものです。元の小説の既読の方がいらっしゃいましたら、違和感を覚える可能性を否定できません。先にお詫びさせてください。それ以外についてはほぼ別の作品となっています。

勢いで書き出したことには元の小説とそれほど変わっていません。そのあたりもご容赦いただければ、……ホッとします。

 重厚な作りの執務机の上にだらしなく足を組み、ルーカス=シェラス=クィルは表情を厳しく引き締めながら、向こう側に立つアーサー=ベネットを見やった。アーサーは胡乱なまなざしを向け、引きつりそうになる口元を真一文字に引き延ばす。


「状況はどのようになっているかな、アーサー君?」


 子供をあやすような声に、アーサーは盛大なため息をついた。


「気持ち悪いです」


吐き捨てるように答えた。

 発言の意味がよくわからないな、とルーカスはほほ笑んで見せたが、上品で紳士然とした言葉遣いと表情とが彼の態度にまったくそぐわないせいか、それとも彼の本性を知っているからか、アーサーはきびきびとした口調で返す。


「分厚い外面を被るのならば、脚を下ろしてからになさってください。ご機嫌が悪いのは承知しています。それと先ほどの愚問を撤回してください。回りくどいのはお嫌いでしょうお互いに」


 ルーカスはとたん、上品な面差しにうんざりするような渋面を浮かべた。唇を不機嫌そうに曲げ、脚を組みなおしては、苛立たしさを隠そうともせずに革靴の踵を滑らかな天板の上に叩きつける。アーサーが心底呆れたように肩を揺らして、深いため息をついた。


「とっとと報告しやがれ。あのクソガキはどうした?」


「依然行方が知れません」


その答えにルーカスは苛々と爪を噛む。


「毎度のごとくほっつき歩いてんじゃねぇかと思ったが、違うってことか。あっちもこっちもきな臭ぇな。まったく面倒くせえしうぜえし」


 ぶつくさと悪態をつきながら、後ろ頭に手を組み、上品な色合いの皮張りの椅子を前後にゆすりはじめる。子供のような態度のルーカスを、アーサーは軽く無視し始めた。これが52にもなる立派な大人ではなかったら、困ったものだと頬を緩ませる程度の可愛げがあっただろうに。


「それと、報告するべきことがもう一つ」


「なんだってんだ」


と、噛みちぎった爪を吐き捨てた。

 それはこちらのセリフだ、とアーサーは心の中で反発した。喧嘩を売りたいのか。笑顔を取り繕うと、キリリと胃が引き絞られるように感じた。


「さきほどお客様がいらっしゃいました。なんでもお約束がどうとか」


 言い終わるかどうかと同時に、奇天烈な声を上げてルーカスが椅子から飛び起きた。


「ちっ、忘れてた! まーたちくちく言われちまう!」


 狂ったように頭をかくルーカスに、アーサーは小さくため息をつく。これでどうしてやっていけるのだろうとつくづく思うが、実際何とかなっているのだからすごい、と。ルーカスは軽く息を整えると、ぐちゃぐちゃになった髪を撫でつけた。にっこりとした笑みを張り付ける。極上の接着剤、とアーサーは呼んでいた。


「すまない、取り乱してしまったようだ。では案内してくれるかい、アーサー君。お客様はどの部屋にお通ししたのかね?」


「一の応接間です」

「すばらしい。さすがアーサー君。君は素晴らしい」

「よしてください。吐き気がします」


 真顔で返したアーサーに、ルーカスは穏やかな笑みを浮かべて返した。


「あとで覚悟しておきなさいね、アーサー君。君の悪態は本当に素敵だ」


 おそれいります、とアーサーは返し、執務室の扉を開けてやった。

前書きも挙げた理由から、サイトより距離を置いて、ということでこの場をお借りしています。一度火がついたらどこまで持つか、見切り発車もいいところですが、燃え尽きるまで走りたいと思います。お暇つぶしになれば幸いです。

1/7 行間に変更を加えました。

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