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DoUbT  作者: AkIrA
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CASE6.紛レモナイ狂気

「つっ…、」

「もうちょっとだから…頑張って?」

「…あぁ、」



流水で金弥の指先を洗う様に、火野から指示を受けた六美がそれを行う。

痛みに顔をしかめながらも、金弥はそれにじっと耐えていた。

時々漏れる苦し気な吐息が、六美の胸を締め付ける。


本当は今すぐにでも止めてあげたい。

しかし、この傷を放置すれば『敗血症』を起こすかもしれない、と火野に言われれば六美も心を鬼にするしかなかった。




「ねぇ、火野…そろそろ良い?」

「あぁ、其処に清潔ガーゼが出してあるからそれで剥がれた指を被ってくれるか?」

「うん」




言われた通りに六美は金弥の指を3本一緒にガーゼで巻いていく。

粗方巻き終わった所で火野が包帯を持ってきた。




「土橋。救急箱の中に消炎鎮痛剤が入っていた。飲ませてやってくれ」

「わかったわ…!」




少しだけでも金弥を痛みから救うことが出来る。

六美は急いで薬を準備するために走っていった。

その様子を見て金弥は苦笑する。




「昔っから…心配性なんだよな…」

「分かっているなら、あまり心配させるなよ」

「分かってる…ただ我慢がきかねぇ…」




六美の事となると堪える事が出来なくなる。

元々短気な方ではあるがそれが更に酷くなる。

どうしてもこの手で護りたいのだ。




「好きなのか?」

「そんな生易しいもんじゃねぇよ。」




金弥が目を閉じる。

痛みとは違う何かを耐えているような表情で。


金弥が何を抱えているのか、火野には解らない。

しかしそれはきっと火野には踏み込めない問題なのだろう。

踏み込めるとしたらたった一人だけ…




「金弥っ、薬…」

「さんきゅ」




心配そうに、金弥に薬を飲ませているそのたった一人。

火野は眉間に刻んだ皺を更に深くさせ、二人から目を逸らした。



その時…






「火野…」

「一宮、木ヶ山…」



保健室のドアが開き、紫月と四郎が顔を覗かせた。

火野は顎の動きだけで二人に中へ入るように促す。

二人はそれに従い中へと足を進めた。



「どう?」

「応急手当はした。…多分大丈夫だとは思うが…出来るなら一刻も早く脱出して病院へ連れて行きたいところだな」

「そっか…」




垣間見た紫月の表情は暗い。

自分達が去った後、何かしらの一悶着があったのだろう。

そして火野は紫月なら感情のみに縛られず会話できるだろう、と視線をそちらへ向けた。





「七瀬達は?」

「来るようには言ってきた。大分気が高ぶってるから…応じてくれるかは賭け。」

「……」





何かを思案するかのように火野は俯く。

考え事をする時の癖なのだろうか、火野は眼鏡のブリッジを人差し指の第2関節で押さえた。





「場合によっては…、酷な選択をしなければならないかもしれん…」

「酷な選択…?」




紫月が尋ね返す。

余程言いにくい事なのだろう。

火野は今までに無い歯切れの悪さで喋り始めた。




「…もう一度、一問目を思い出せ。」

「一問目…?」





箱を見つける。

その中には爪剥ぎ器と問題用紙が入っていた。

制限時間を告げる『放送』が流れる。

15分を与えられた。

そして再び、今度は解答時間を告げる『放送』。

『ダウト』を選出。

それを『審議』された。

『ダウト』が成立し、執行された。



其処で思い至ったのか紫月が顔を上げた。





「…もしかして、放送…?」

「そうだ。『放送』は2回だった。そして『放送』では問題の内容は語られない。」

「何だよ、解るように言ってくれよ!」





進んでいってしまいそうな会話を止めるよう、四郎が声を荒げる。

説明不足だと言うことに気付いた火野が、咳払いを1つして四郎に向き直った。




「つまりは…こうやって分裂してしまった場合、先に箱を見つけないと不味い事になるって意味だ。」

「不味い事…?」

「『放送』では問題の内容は解らないが解答時間は解る。闇雲に『ダウト』出来そうなシステムだ…しかし其処で問題になるのが『審議』だ。」



未だ飲み込めないといった表情をしている四郎を見て、紫月が火野の言葉を引き継いだ。



「審議があるって事は、間違った解答は出来ないの。さっきみたいな問題なら解答時間が来たときに誰かの名前を言っても間違いは無い…けど審議ってモノがある以上は必ずしもそんな問題ばかりじゃないって事」

「万一、間違えた解答をしたらどうなるか…」




銃をぶっ放したり爪を抉りとったりと、兎に角常軌を逸している。

間違えた解答をしようものなら、命の保証はない。

そうでなくても身の安全など保証されていないのだ。




「七瀬達と別行動するなら、アイツらより先に問題をみつけないとヤバいって事か…」

「あぁ…そして、さっき言った『酷な選択』っていうのは…」



火野が言葉を詰まらせる。

その場に居る全員が、火野の言わんとしている事を薄々ながら理解していた。

中々言い出すことが出来ない火野の言葉を奪ったのは金弥だった。




「つまりは。一緒に行動するつもりが無いなら、とっとと箱を見つけてアイツらを『ダウト』しちまった方が安全って事だろ…?」

「あぁ…」



オブラートに包むこともせず金弥が言ってのける。

火野は戸惑いながらも頷いた。

そんな火野に構わず金弥は言葉を重ねていく。




「あの馬鹿女、相当イカれてたからな。俺は賛成するぜ?」

「…しかし、それをすれば…間接的にアイツらを殺す事になるかもしれない…」




間接的にとは言え、殺人に加担するのはやはり気が重い。

しかし殺らなければ殺られる。

考えたくもないが、それが現実なのだ。

戸惑う火野の視界で、六美の黒髪が揺れた。




「私も賛成よ?その方が良いに決まってる」

「!」




薄く笑みを浮かべる六美。

女の紫月からみても、それはドキリとする美しさだ。

しかしその目にはっきり滲むのは紛れもない狂気。


金弥を傷付けられた事は、六美の起爆剤だったようだ。




「あの子の言葉を許せるほど、私は心が広くないの…」

「土橋さ…」

「ねぇ…火野…、一宮さん、木ヶ山君…貴方達は私の味方よね?」




凛と響く声は、ナイフのように紫月の心を深く抉っていった。


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