CASE4.Q1仲間ハズレハ誰?
教卓と黒板。
7つの机。
後ろには縦3段、横10列の棚。
掃除用具入れ、ゴミ箱…
普段目にする教室と同じ造りだ。
7人は各々教室を探し回った。
その時…
「…あった!」
掃除用具入れを調べていた紫月が声を上げる。
その腕の中には幅が50センチ程ある木箱。
「火野の言う通りだったな」
感心したように四郎が呟く。
教室の真ん中に7人が集まった。
「開けるね…」
机の上に置かれた木箱の蓋を紫月が恐る恐る開けた。
中には一枚の紙と何かの器具。
一見、ペンチのようにも見える。
「何…これ?」
「……」
一番物を知ってそうな火野へ視線が自然と集まった。
火野は眉間に皺を寄せて、その器具をじっと見詰めている。
暫し躊躇った後、火野が顔を上げた。
「多分…爪剥ぎ器だ。」
「っ…何でこんなもの…ッ」
此処まできたら、嫌な予感しかしない。
紫月が震える指で一緒に入っていた紙を開いた。
「第1問。この中で仲間外れは誰でしょう?…どういう事…?」
ザザッ…
ノイズが響き、マイクの電源が入る。
再び聞こえてきた無機質な声。
『見ツケタミタイダネ?ジャア第1問開始ダ。』
「…何をさせるつもりだ?」
『ソノ問題ノ答エヲ1人、解答時間マデニ選ブンダ。解答時間ガ来タラ選バレタ人間ヲ指サシテ『ダウト』ッテ言ッテネ。』
「選ばれたら…どうなる?」
四郎が『声』に向かって質問する。
一緒に入っていた『爪剥ぎ器』らしきものの存在をみれば、あまり良い予感はしない。
そして、その予感は見事に的中した。
『今回ハ3枚、指ノ爪ヲ剥イデ貰ウヨ。』
「何よ…それ…!」
『チャント執行サレタカハ僕ノ手下達ガ見届ケルカラ、逃ゲヨウナンテ思ワナイデネ?』
言い終わると同時に黒子達が、再び銃を抱えて戻ってきた。
教室の4角にそれぞれ立ち、紫月達を監視している。
逃げれば殺されるだろう事は容易に想像がついた。
『声』の持ち主は何がなんでもこのゲームをやらせたいらしい。
『ジャアゲームスタート!15分後ニ解答時間ヲ設ケルカラネ!』
ブチッ、
放送が切れ、静寂が訪れる。
15分後にはこの中の誰かの爪が剥がれるのだ。
想像しただけで目眩がしてくる。
「…仲間外れって…」
「…そんなの…答えなんてあるのかよ…?」
考え方次第で、誰でも答えになり得るのだ。
四郎は唯一、赤色の髪。
火野は唯一、眼鏡を掛けている。
日向は唯一、ネイルアートしている。
紫月は唯一、テニス部に所属している。
六美は唯一、髪を染めてない。
秀水は唯一、ヘアバンドをしている。
しかしそんな中で、最も唯一が多いのは…
皆の視線が一様に金弥へと集まる。
母親がイギリス人のハーフで、緑色の瞳に金色の髪。
ピアスを何個も開けている。
誰の目から見ても彼は個性的過ぎだ。
視線を受けた金弥は小さく舌打ちをした。
その視線を遮るように六美が金弥の前に立つ。
「金弥を『ダウト』するつもり…?」
「…だって、五木が一番仲間外れでしょ?」
「…!」
日向の言葉に六美の目の色が変わる。
「ふざけたこと言わないで!貴方達みたいな人間が、外見だけで判断するから…ッ!」
「でも現に五木は学校で浮いてるっつーか…」
秀水までもが日向に同意する。
怪しい雲行きに、紫月が慌てて割って入った。
「待って!七瀬さん、秀水君も!まだ時間があるんだからゆっくり考え…」
「考えて何になるのよ!どうせこの中の一人が爪剥がされなきゃいけないんでしょ!?私は嫌よ!」
「だったら金弥を『ダウト』するのは良いって言うのね…?」
六美が鋭い目で日向を睨み付ける。
しかし日向も引き下がらない。
腕を組んで六美を睨み返した。
「わかったわ…どうしても金弥を『ダウト』するって言うなら、アタシを選んで!」
「六美…!」
それまで黙っていた金弥が、六美の手を引く。
その目は悲しげに歪められていた。
「…お前がそんな事するな。」
「だって!このままじゃ金弥がッ…」
「だからって…お前の爪剥がして良い理由にはならねぇ。」
金弥が六美をそっと抱き締める。
六美の目から大粒の涙が零れた。
「お前が痛い思いすんのは、俺が嫌だ。」
「…金弥…」
泣きじゃくる六美の頭をそっと金弥が撫でた。
そんな二人に日向が蔑むような視線を送る。
「何よ、生徒会副会長様と学校一の不良が実はそんな仲だった訳?」
「六美は幼馴染みだ…」
「幼馴染みぃ?ただの幼馴染みがそんなベタベタする?副会長ってば清純そうに見えて案外ヤること早いんだねー?」
「俺は何言われても良い…けどコイツを侮辱するのは許せねぇ!」
金弥が拳を握り締め、日向へ殴り掛かろうとする。
その目は本気だ。
慌てて火野と四郎が止めに入った。
「此処で揉めてもどうにもならんだろうが!」
「るせぇ!」
「五木!落ち着けって!」
揉み合う3人。
その時、再びチャイムが鳴り響いた。
あの『声』だ。
『解答時間デス。コールシテクダサイ。』
ニヤリ、と日向が口元を歪めた。
「待ッ…!」
「『ダウト』!五木金弥よ!」
紫月が止めようとしたが間に合わなかった。
日向の指は真っ直ぐ金弥を指す。
『ダウト、五木金弥。…受理致シマシタ。デハ審議シマス!』
暫くの沈黙。
そして結論が出された。
『正解デス!!第1問クリアー!!』
六美が膝から崩れ落ちた。
黒子達が爪剥ぎ器を持って金弥へ近付く。
覚悟を決めた金弥が火野と四郎を押し退けた。
「やってやるよ…」
「金弥っ…」
黒子達が金弥の左手を掴み、机の上に押し付けた。
暴れないように両側からご丁寧に体も固定される。
そして、金弥の親指の爪と肉の間に勢い良く爪剥ぎ器の先端が差し込まれた。
「ぐあぁあっ!」
激痛に、思わず漏れた叫び声。
容赦無く爪の内側を抉られて、金弥は身を捩る。
しかしそれで痛みが収まる訳ではない。
漸く根本に器具の先端がたどり着き、そのまま爪が引き抜かれた。
「ぁ、が…っ、」
気を失いそうな痛みに脂汗が額に滲む。
しかしまだ終わりではない。
今度は人差し指だ。
また先程と同じ様に肉が抉られる。
指から滴る血が床に染みを散らした。
「はぁっ、はぁ…あ」
最後に中指の爪が引き抜かれた。
ついに痛みが限界点を超える。
朦朧とする意識。
金弥の体から力が抜ける。
無感動に黒子達が金弥を投げ捨てた。
「金弥ぁっ!」
縺れる足で六美が金弥に駆け寄り、抱き起こした。
その指先からは夥しい程の血が流れている。
「ごめん…、ごめんね…」
「六、美…大丈夫だから…泣くな…」
六美は涙を拭うと、日向を鋭い相貌で見詰めた。
凍てつきそうな程冷たい瞳に日向もたじろぐ。
「許さない…」
「な、何よっ、」
「…貴女が金弥をこんな目に合わせた!絶対に許さないわ!絶対貴女をダウトしてやる…!」
対峙し合う二人。
不穏な空気が色濃くなる。
止める事が出来ない連鎖。
ゲームはまだ始まったばかり…