表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DoUbT  作者: AkIrA
21/26

CASE21.最期ノ問題

大きな水飛沫が紫月達の目の前で上がる。

プールの水がみるみるうちに真っ赤に染まっていく。

鮫が秀水と日向の身体を次々に喰い千切り、断末魔の悲鳴すら一瞬で消えた。

見ていられない光景に、思わず膝をつく。


ついに残るのは、紫月と四郎の二人だけになってしまった。



「四郎…」

「…大丈夫…、帰るのはお前だ…」

「!」



四郎は諦めようとしている。

自分の命を。

それを認識した瞬間、紫月の頭に血が上っていく。



「ふざけないで!!そんなの四郎の自己満足でしょ!?」

「紫月…」

「一緒に帰るの!!私は諦めてなんか無い!!四郎の独りよがりに私まで巻き込まないで!!」



言い切る彼女を見て。

四郎は自分の発言が軽薄だった事に気付いた。

紫月の言葉は直球で、四郎の弱さを射抜く。


今までも、人が変わったかのように弱さを責め立てる発言を紫月はする時があった。

それは彼女の強さであり、弱さでもある。




「四郎は私と帰るの…絶対!」

「紫月…」




涙を流しながらそう言い切った彼女を、本当なら抱き締めたかった。

しかし、もう四郎の手足は痺れて感覚が無い。

泣き続ける紫月を見上げる事しか出来なかった。




『サァ!最後ノ問題ダヨ!!』



プール脇のスピーカーから、何の前触れも無く声が響いた。




『最後ハ体育館デ問題ヲ出スカラネ。10分後ニ現地集合ダヨ』




「…行くよ、四郎。」

「…あぁ…」



紫月が四郎の脇に肩を通して持ち上げる。

体格差でふらつくが、何とか歩き始めた。

これで最後なのだから、と自分に言い聞かせて。










やっとの思いで辿り着いた体育館には、更に衝撃的な光景が広がっていた。

元々あった金弥達の遺体に加え、火野が入れられた血塗れのアイアンメイデン。

そして赤い水が滴る腕と、ハイソックスを履いた足が逆さまに吊るされていた。




『ジャア最後ノ問題ヲ出スヨ?解答者は…一宮君!』




呆然とする紫月の足元に箱が投げ付けられた。

白い紙が床に舞う。




「…『犯人ハ誰?』…」

「え…」

その内容に二人は言葉を失う。

生き残っているのは、四郎と紫月だけ。

自分で無いなら相手が犯人になってしまう。

それは考えたくも無い結末だ。




『制限時間ハ無イカラネ?但シ『ダウト』出来ルノハ1回ダケ!!正解スレバ出シテアゲル…デモ…』



声が不気味に響く。



『間違エタラ、2人共サヨナラダカラ…ジャア頑張ッテネ!!』



ブツリ、と放送が途切れる。

紫月は四郎を。

四郎は紫月を、それぞれ見詰めた。

しかし、不意に四郎が紫月から目を逸らす。




「違う…お前じゃない。」

「奇遇だね。私もそう思ってた…」




紫月は四郎の事を信用していた。

きっと好きだと告げられるずっと前から。

彼が真っ直ぐ偽り無い事は誰より解っている。



じゃあこの中に犯人は居ないのではないか…?



そんな疑問が浮かび上がる。

犯人が居ないなら『正解』は出来ない。

『正解』が出来なければ、『死』ぬしかない。




犯人は、誰一人として此処から出すつもりは無いのだろうか…?



何か、違和感を感じた。




(…何か、あるはず…)




紫月は意を決して、もう一度並べられた死体を見詰めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ