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DoUbT  作者: AkIrA
20/26

CASE20.Q6弱者ハ誰?


『ダウト、『七瀬日向』。受理シマシタ!審議シ…』

「待てよ!!」



『声』を遮ったのは秀水だった。

日向が驚きに目を見開く。




『何カナ?三井秀水クン…?』

「次の問題の答えを俺にしてくれ!望み通り死んでやる…その代わり…罰ゲームは今、日向と一緒に受けたい…!!」




意外な秀水の一言に皆が動けずいる。

秀水は床に手を付き、深く頭を下げた。

額を床に押し付け、姿すら見えない相手に懇願する。




「頼む…最期くらいは、日向を独りにしたくないんだ…!」

『助カルカモシレナイノニ、君ハソノ可能性ヲ捨テルノ?』

「そんなの、もう…どうでも良い…」





秀水は顔を上げ、日向を見詰めた。





「折角、両想いになれたのに…離れたくないよ。」

「し、ゅぅ…す、い…!」




日向が涙でぐちゃぐちゃになった顔で秀水に抱き着いた。




『分カッタヨ…問題ヲ渡スカラ、『ダウト』シナヨ』

「…ありがとう、」




現れた黒子から投げ付けられた箱を拾い上げ、秀水は中を取り出す。

そして其処に書かれた内容に、苦笑を浮かべた。




「『この中で一番、弱いのは誰?』…」

『…ジャア、『ダウト』シテネ?』

「待って…!!秀水君!」




紫月が止めに入るが、秀水の目は一向に揺るがない。

あの時屋上で泣いていた彼とはまるで別人だ。



「一緒に帰ろうって言ったじゃない!!何で…皆諦めるの…!!」



ピクリ、と秀水の手が動く。

日向も僅かに戸惑いを目に浮かべた。



「違うんだよ…紫月。」

「何が…ッ!」

「お前と俺は違うんだ…!!」



秀水は苦し気に表情を歪め、言葉を吐き出した。

そして日向の手を取り…









「…『ダウト』、三井秀水だ。」



吐き出した解答は当然のように受理される。

淡々と進んでいく話には口を挟む事すら許されない。

秀水も日向も覚悟を決めてしまったようだ。




『ジャア移動シヨウカ。ソノ鍵デ『プール』マデキテネ…』




箱に入っていた鍵を手に秀水達は歩き出す。

錆び付いた引戸を開けると、血生臭い空気がやや薄れた。




「来なくて…良いから、お前らは…」

「ふざけんなよ…秀水…!!」

「うるさい!!お前は…紫月と生きる事だけを…考えろよ…ッ」



そうでないと救われない。

秀水は日向の手を引いて走り出した。


どんどん小さくなる背中。

四郎は痛みに痺れる手を床に付いて何とか身を起こした。

しかし、まともに歩く事は出来ない。

ふらつく身体を紫月が駆け寄って支える。




「四郎…!」

「行くぞ…何とか止めるんだ…!」

「うん!!」




四郎の腕を取り、紫月達は二人の後を追った。










見下ろすのは、緑色に濁った水。

その中には無数の黒い影が蠢いていた。

時折見える背鰭が不規則な動きを見せる。




「これは…」

『オ腹ヲ空カセタ鮫ダヨ。罰ゲームハ、コノプールニ5分浸カルダケ!』




簡単に言って除けるが、この中に飛び込んだ瞬間に喰い千切られて死ぬだろう。

カタカタと、日向の身体が震え出す。




「日向…」

「…痛い…かな…?急に怖く…なってきた…」

「独りじゃないよ…何があっても。日向をもう独りになんかしないから…」




日向を正面から抱き締める。

今なら、あの時死を選んだ金弥達の気持ちが分かるような気がした。




「一緒に、いこう…」

「…ん。」




日向の手が秀水の背中に回される。

追いついてきた紫月達が視界の端に見えたが、日向も秀水もそれに気付かないふりをした。





「秀水…」

「ん?」

「大好き…!」

「俺も…愛してるよ、日向」





そして二人は迷う事なく、澱んだ水に身を投げた。


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