表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DoUbT  作者: AkIrA
18/26

CASE18.Q5目立タナイノハ誰?

『ダウト、『火野蓮二』…受理シマシタ!審議シマス!!』



あぁ、また嫌な時間がやってくる…

四郎は動かない自分の体を呪った。

状況は好転などせず、逆にどんどん悪い方向へと転がっていく。




『正ー解デス!!ナンテ美シイ潔サ!!見事デシタ!!』




現れた黒子達に両脇を抱えられ、火野があの『処刑道具』へと押し込まれていく。

何の抵抗も無く、それこそ死のうとしている人間では無いかのように。

あっさりと彼は『鉄の処女』の中へ抱かれていく。

姿が消える直前、火野がうっすら苦笑いのような表情を浮かべた。




「諦め…良すぎだろ…」




呻くように四郎が呟く。

その呟きに紫月が小さく首を横に振った。




「昔から…そうなの…火野は何でも独りで決めちゃうから…」

「…紫月…?」





まるで昔からの知り合いだと言っているかのような紫月の台詞。

今までそんな接点が二人にあるなんて四郎は知らない。

学校でもそんな素振りは無かった。


じゃあ何だと言うのだ。

疑問を視線に変えて、隣に立つ紫月を四郎は見上げた。

しかし、紫月は四郎の方を見ようともしない。




「火、野…ッ!!」

「!!」




その名を叫んだ瞬間、ぼろり、と紫月の目から涙が零れる。

次の瞬間、黒子がレバーを大袈裟な動きで下に倒した。

ガタッ、と箱が大きく揺れる。

「…!…!!」




ガタガタと揺れる箱。

小さく声が響いているが、鉄の壁に阻まれていて叫び声か呻き声かすらの判別が付かない。

暫くすると、その揺れも止まり『それ』の下から真っ赤な液体が流れ始めた。

徐々に拡がっていく赤が、火野の命が尽きていく事を示していた。










「嘘…よ…こんなの…ッ」

「紫月…!」




紫月が下がりっぱなしになっていたレバーを上げ、掛かった鍵を外そうと扉を揺する。

しかし、当然ながら鍵はびくともしない。

手の平から血を流しながらも、その動作を紫月は繰り返す。

見兼ねたかのように、彼女の手を掴んだのは意外にも日向だった。





「いい加減にしなよ…」

「火野を…助けなきゃ…」

「もう無理だよ!!死んでんの!!こんな…ッ、生きてる訳無いじゃん!!」




日向の手は震えていた。

血の池が足元に拡がっているのだから。


日向の言葉に、漸く紫月は手の動きを止めた。

そして力が抜けたのかその場にしゃがみこむ。

そんな紫月から手を離すと、日向がスピーカーを見上げた。




「もう無理…!!やるなら早くやってよ…!」

「日向ッ!?」

「耐えられ無いのよ…ッ…こんな空間!!」





人が死ぬゲーム。

最早ゲームと呼んで良いのかすら解らないが。


火野や金弥、六美の様にあっさり『死』という運命を受け入れられる程大人ではない。

かといって、これ以上『生殺し』ともいえるこの状況に耐えられる程精神が強い訳でもない。

日向に出来る事と言えば、叫んで気持ちを紛らすぐらいだ。

現実に嫌気がさす。







――貴方ハ、普通ノ子ナンダカラ…







「!?」

「日向…?」




不意に脳裏に浮かんだ言葉。

頭を振ってそれを掻き消そうとするが、耳に付いて離れない。

心配そうに見詰めてくる秀水に助けを求める視線を送る。





「秀水…」

「だい…」




大丈夫、そう秀水が言おうとしたその時…





『次ノ問題ノ時間ダヨ!!』

「!!」




容赦なく始まるゲーム。





『次ハ…『七瀬日向』君、君ノ『番』ダヨ…?』

「ひッ…」




一人の黒子が日向の足元へ箱を投げつけた。

衝撃で箱が開き『白い紙』と『鍵』が床へ落ちる。

事実上の『死刑宣告』だ。





『ジャア、解答時間ハ50分後ダカラネ!!』

「何で…さっきより短いんだよ!?」

『『罰ゲーム』デ少シ予定時間ヨリ、オシテルカラネ…仕方ナイ事ダヨ?』





秀水は押し黙る。

これ以上食い下がれば、金弥の二の舞だ。

六美と心中した金弥の様に、日向を道連れに自分が死ぬ勇気が秀水には無かった。

この期に及んで情けない自分に歯噛みする。





『モウ質問ハ無イヨネ?ジャア第5問開始~!!』





逃げる事は叶わない。

ただ絶望へと進むしか無いのだ、と実感した瞬間。

酷い脱力感に秀水は襲われ、その場に膝を付いた。


紫月は先程の状態から動かず、拡がる血溜まりをじっと眺めている。


四郎に至っては既に自ら動く事すら出来ない。

ただ悔しげに顔を歪めていた。



横目でそんな彼等を見ながら、日向は緩慢な動作で足元に落ちた紙を拾い上げた。



心の何処かではまだ自分が『死ぬ』等とは考えられなかった。

もしかしたら、そんな淡い期待を抱きながら紙を開く。

其処に書かれていた文字に、日向は黒く縁取られた目を見開いた。






「この中で…最も…『地味』なのは誰…?」






――貴方ハ、普通ノ子…ダカラ…イラナイノ…





また頭の中に『声』が反響した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ