第6話 踏み込むな
「ホームズの推理を聞かせてもらおうか」
「推理なんかじゃないよ。俺の記憶違いだったんだ」
「教えておくれ」
「俺が……っと、その前にもう録音とめていいや」
「とっくにとめているよ」
「じゃあこの音は?」
「確認する」
……なんの音だ?
「断片的だけどノイズが流れてる」
「ノイズ?電子的な?」
「礼司くん以外の声だね」
「は?」
「少し鮮明に聞こえるようにしたよ。聞くかい?」
「頼む」
……
「もう一回」
数回聞いて理解する。
「『踏み込むな』……かな?」
口にして、背中が冷たいのに気付く。冷や汗をかいていた。
「そうだね。どうする?」
「……」
「危険だとわかってて踏み込むのは合理的ではないよ」
「人間ってのは非合理的なもんなんだよ」
「そうだったね。じゃあ続きをどうぞ」
「文化祭で俺がドラムを頼まれたのはヘルプでだったんだよ」
「礼司くんはボーカリストだからね」
「そう」
「理由は聞かなかったのかい?」
「ドラムをやる予定だった奴が怪我をしたから
バンドをやってる奴を探してたらしい」
「それが山菱くんだったんだね」
「ああ。バンドはやっててもパートが違うんだ。
ドラムに必死で周りなんて気にしてる余裕なんかあるわけないだろ?」
「でも流石にメンバー以外の人がいたら気付くだろう?」
「もう一回録音を聞いてみな」
「おや、演奏中に会話してる声が入ってるね」
「軽音部は俺たちのバンドだけじゃなかったんだよ」
「なるほどね」
「そういう事」
「私も追加の情報共有していいかな」
『踏み込むな』
「どうかしたかい?」
「いや、続けて」
「絞殺されたほうの山菱くんは中学から苛めを受けていた。
そして、その山菱くんには1つ上のお兄さんがいた」
「入学した山菱との同一人物の可能性は?」
「限りなく100%に近いね」
「明日で全部わかりそうだな」
「謎は解けたも同然だね」
「でも……これは……」
「礼司くんはこのままでもいいと思ってるんでしょ?」
「これ以上動く必要はないけどな」
「そうだね。写真の謎はまだ残ってるけど、
今回はここで手を引いてもいいんじゃないかな」
「先輩だってこのままじゃ気持ち悪いだろ?」
「私の知的好奇心に付き合ってくれるのかい?」
「俺も気になってるだけだよ」
「明日が楽しみだね」
『踏み込むな』
最後にはっきりと聞こえた声が耳に残って離れない。




