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第4話 疑うべきは俺の記憶か

「山菱くんは本物なのかい?」

「確かめるために放課後、話しかけてみる」

「いいね。その場に立ち会えないのが残念で仕方がないよ」

「念のため会話は録音しておいてくれ」

「もちろんだよ」

放課後までは、どう話しを切り出すかで頭がいっぱいで

授業の内容は一切頭に入らなかった。

授業が終わり、立ち上がろうとした時、不意に声を掛けられた。

「礼司くん」

「……山菱」

まさか山菱の方から話しかけてくるとは想定外すぎて思考が止まる。

「音楽室に行く前にちょっといいかな?」

「……あぁ」

お互い一言も発することなく、屋上に出た。

「ドラム、最近良くなってきたよね」

「まぁ、家でもリズムキープの練習はしてるから」

「真面目だなぁ」

「……俺に用があってここまで連れてきたんだろ?」

「……うん」

しばしの沈黙。

「練習に遅れるぞ」

山菱は少し困ったように考え込んでから、口を開く。

「礼司くんってさ、僕のこと嫌い?」

「え?」

「練習中に声を掛けてこないどころか目も合わせてくれないじゃん」

まてまてまて。

なにを言ってるんだこいつ?

まるで最初からバンドを組んでいたような口ぶりだ。

試されてるのか?

どう答えるのが正解だ?話しを合わせる?突き放す?

「僕は礼司くんと仲良くしたいと思ってるんだけど……無理なのかな」

「お前のことをまだよく知らないんだ。それにこう見えて人見知りでさ」

山菱はキョトンとして吹き出す。

「人見知りはわかるかも」

「悪かったな」

「なんか急に変なこと言ってごめんね」

「気にしないでくれ。それより俺からも聞いていいかな」

「もちろん」

「気を悪くしたり、答えたくなかったら答えなくていいんだけど」

「なんか怖いなぁ」

山菱はケラケラと笑っている。

「いつから復学したんだっけ?」

「ゴールデンウィーク明けからだよ」

「どうしてしばらく学校に来なかったんだ?」

「ちょっと入院しててね。出遅れたお陰で友達を作るのが大変だったよ」

「病気なのか?」

「うん。元々身体があまり強くないから」

答えにおかしいところはない。疑うべきは……俺の記憶か?

「礼司くんが忘れててもおかしくないよ。僕は影も薄いし、

お前いたんだ?ってよく言われるくらいだから」

「いや、こっちの記憶力がないだけなんだ。なんかごめんな」

「いいよ。嫌われてなかっただけで嬉しいから」

いい奴だ。いい奴過ぎて胡散臭い。

「さ、そろそろ練習にいかないとみんなに怒られるね」

「最後にもうひとつ。どうして俺と仲良くなりたかったんだ?」

「実は礼司くんの配信動画を見たことがあってさ。

きみが歌うバラード好きなんだ」

「なんか照れるな」

「だから……文化祭の後も一緒に音楽をやりたいんだけど、無理かな?」

「考えておく。あぁ、山菱って喧嘩したことある?」

「喧嘩って殴り合いかい?あるわけないよ。暴力する人は好きじゃない。

どんな理由があっても力で解決したら全員悪人だ」

山菱の口調は段々熱を帯びてきて屋上の柵を何度も蹴っている。

眼鏡が光を反射してどんな表情をしているかわからなかった。

「変な事いって悪かった」

俺が肩に手を置くと物凄い勢いでその手を払われた。

「あ……なんか熱くなっちゃってごめん」

「気にするな。早く行こうぜ」

俺と山菱はそのまま一緒に音楽室に行き、猛練習をしてから帰宅した。

「おかえり」

「先輩は山菱との会話、どう思った?」

「身体が弱くて、気も弱い。バンドの担当はギター。実力はかなり高い。

違和感はないと思うけどね」

「追加で利き手は左だ」

「理由は?」

「眼鏡をあげるとき、必ず左手を使っていた」

「オカルト要素もなかったね。情報をまとめると、

今回の異常は礼司くんの脳だった。って結論になるかな」

「先輩はその結論にどれくらいの確率だと思う?」

「10%だね」

「じゃあその結論は捨てよう」

「情報は揃ってるように見えて全然足りてないからね」

「嘘をついてるのは俺か山菱か」

「ほかのバンドメンバーの様子はどうだったんだい?」

「山菱と仲が良かったよ」

「じゃあ嘘をついてるのは礼司くんだ」

「昨日紛失した財布が今日見つかったよ」

「急になんだい。私が説明したとおりだったろう?」

「財布は学校近くのコンビニのゴミ箱から」

「ん?」

「犯人はまだ見つかってない」

「好きな人の財布を盗んだ子がいうわけないじゃないか」

「俺の隣にいた奴は別の子に今日告白して振られてたよ」

「……」

「なんだっけ?瞳を見ればわかる。だったっけ」

「わ、私は70%だって言ったよ!」

「さっき俺と山菱の会話に違和感はなかったって先輩いったよな?」

「いったよ!礼司くんは私を信じてくれないのかい!?」

「信じてるよ。だけど忘れっぽい」

「どういうことだい?」

「山菱は暴力行為に嫌悪感を示してたよな」

「……あ」

「俺は夏休み前に停学をくらってるんだ。イジメをしていた奴を殴って」

「殴った場所は、礼司くんのクラスの教室だったね」

「授業中にそんなことをした奴と仲良くなりたい平和主義なんていると思う?」

「礼司くんが暴れた事を知らない。

もしくは礼司くんと仲良くなりたいこと自体が嘘だね」

「そういうこと」

俺とAI先輩は、この時、違和感に気付いたつもりになっていた。

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