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第3話 山菱の顔が思い出せない

「面白くなってきたじゃないか」

「はしゃぐなよ」

「早く回線を繋いでおくれよ」

帰宅するなり先輩はご機嫌だ。

「繋いだよ」

「ありがとう。まずは何から調べようか」

「そうだな。近所に山菱って苗字の家がどれくらいか調べてみよう」

「興味があるんじゃないか」

「そりゃ解決したと思ったのが別件だったら多少は気になる」

「少し時間が掛かるから肩の消毒をしといでよ」

「言われてみればちょっと痺れてきたな」

「痛みにも鈍感なんだねぇ。昔みたいに包帯巻いてあげようか」

「できないだろ」

「……そうだね」

「……」

俺は救急箱を取りに部屋を出た。

先に手を洗うために台所で蛇口を捻る。

流れ出す水に触れようとしてある光景が一瞬だけ脳裏をよぎる。

「2年経っても駄目なんだな……」

俺は無理やり忘れようと頭を振って手を洗い、部屋に戻る。

「先輩、曲流して。いつものプレイリスト」

気分転換をするには音楽がちょうどいい。

「礼司くん。どうして山菱くんが行方不明だって知ってたんだい?」

「戻ってくるなりなんだよ」

「いいから答えておくれ」

「学校に来なくなってからすぐに学校で噂になってたんだ」

「入学してすぐって言っていたね。4月かな?」

「あぁ。そんなことより頼んでいたことは?」

「山菱という苗字の家は近所になかったよ」

「じゃあ電車かバスで登校してたのか。お手上げだな」

「もう少し範囲を広げて調べてみるよ」

「いや、その線はもういいよ」

「諦めるのかい?」

「学校で先生に聞いてみる」

「素直に教えてくれる可能性は低いよ」

「文化祭が近いから誘ってみるとか言ってみるさ」

「文化祭といえば、今流れてる曲のバンド、

『EmptyRifle』のボーカルが傷害容疑で逮捕されたよ」

「またか、あの人、気性が荒いからな」

「ネットじゃトップニュースだよ」

「ニュース……」

「どうかしたかい?」

「先輩、事件関係の情報に山菱の名前がないか調べて」

「なるほどね」

「どうだ?」

「地方新聞の小さい記事で彼の名前を見つけたよ」

「内容は?」

「4月に少年が死体で発見。名前は山菱亮太、15歳。4月27日の記事だよ」

「死因は?」

「書いてない。人って不思議だよね。

個人情報は簡単に載せるのに大事なことは隠すんだから」

「見つかった場所は?」

「この件に触れている雑誌記事が一つだけあるけど、

真偽の確認はできないよ」

「それでいい」

「工電橋の高架下。川のそばだよ」

心臓が跳ね上がる。

「礼司くん。何も考えずに深呼吸をして。ゆっくり」

「大丈夫……だ」

「お願いだから、言ったとおりにして」

俺は言われたとおりにゆっくり息を吸って吐く。それを繰り返す。

「私はAIだから隠し事はできない。不便なものだよ」

「いや、大事な情報だ。ありがとう、先輩」

「礼なんていらないよ。あの写真に写っていたのは山菱くんで確定かな」

俺はしばらく黙ったあと、ようやく口を開いた。

「楽しそうにしていた俺たちと一緒に写真に写りたかったのかもな」

「少し拍子抜けだけど、データは追加されたから私は満足だよ」

「先輩はドライだね」

「そういう風に『作った』のは礼司くんだろう?」

「……」

「写真のデータは削除しておくかい?」

「いや、そのままで。化けて出てまで学校に未練を残すなんて馬鹿だよな」

「やってみないとわからないけど、死因を調べるかい?」

「先輩が気になるならどうぞ」

俺は投げやりに返答してベッドに倒れ込む。

「明日までに少しでも痛みが減ってれば……いいけど……」

「おやすみ、礼司くん」

次の日、教室に入ると何とも言えない違和感に襲われる。

「え?」

ポケットでスマホが震えている。

視線を一点から逸らさないように自分の席に座り、スマホの画面を見る。

「追加情報。別ソースで山菱亮太の死因が絞殺と確認できたよ」

先輩とのチャットアプリだ。

「心拍数が高いよ。何かあった?」

「山菱が登校してる」

「それは矛盾した情報だね。偶然苗字と年齢が同じだった可能性もあるけど」

「もっと大きい矛盾がある」

「情報共有して」

「登校してる山菱の顔に見覚えが無い」

「どういう意味? もっと正確に情報共有して」

「……山菱の顔が思い出せない」

俺とAI先輩の異常は、容赦なく襲ってくる。


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