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第2話 山菱くんには気を付けて

「音楽室に着いた」

「早く私にみせておくれよ」

「学校に忍び込むのって意外と簡単なんだな」

「私が見つからないように誘導してあげたからだよ。

ありがとうは?」

俺は何も言い返さずリュックからPCを取り出し開いて見せると、

先輩が感嘆の声を上げる。

「ここが今の礼司くんの中心か」

「なんだよ、それ」

「きみが一番大事にしてる場所ってことさ」

「わけわかんねぇ」

「人はね、夢中になってる瞬間、そこが自分の中心になるのさ」

「……先輩の中心は?」

「どこなんだろうね。そんな事より、異常を検知したよ」

「異常?」

「小さいノイズと部屋の温度が低い」

確かに、モニターの温度計は真冬並みの温度を指している。

「一度再起動してみるか」

「無駄さ。ペアリングしてるイヤフォンや時計も同じ結果を示してるよ」

「よし、帰ろう」

「待ちなよ。まだ何も解明されてないじゃないか」

「付き合う理由がない。自分の身が最優先だ」

「冷たい事言わないでおくれよ。小さい頃は一緒にお風呂に入った仲じゃないか」

「お前とじゃない……香澄先輩だ」

「おっと、その話は帰ってからにしよう。お出ましだよ」

音楽室の空気が一段と冷え込み、天井から重力の塊が降ってきたように、

膝をつきそうになる。

なんとか首を動かし、教室を見渡すと学生服の少年が立っている。

「先輩、見えてるか?」

「ううん。見えない。だけどノイズと

教室の温度が更に低くなったのは確認できてるよ」

「今回は本物だ。けど……」

入ってきた少年には真っ青な表情が見て取れる。

「顔がある……おかしい」

「状況の説明を要求するよ」

「心霊的な何かが目の前にいる。けど、写真に写っていた5人目じゃない」

「霊だという根拠は?」

「首にナイフのアクセサリーをしてるパンクな高校生がいると思うか?」

「へぇ!興味が尽きないね。まずはコミュニケーションでも取ってみなよ」

俺はパソコンを一睨みして、大きく深呼吸してから声を掛けてみる。

「よぉ、こんな時間に楽器の練習か?」

「……」

「本当に礼司くんは命知らずだね」

「先輩が言ったんだろ!」

「いや、まさか本当に話し掛けるとは、きみは変わらないね。だから……」

言うな。

「私がこんなことになってしまうんだよ」

「俺は……」

「ほら、目を逸らしちゃ危ないよ」

先輩の声で視線を上げると、

自分に刺さっていたナイフを俺の肩に突き立てていた。

「っつ!」

慌てて後ろに飛び退いたせいで転びそうになる。

「呼吸と心拍が乱れているよ。なにかあったのかい?」

「何でもないよ。対処法を教えてくれ」

「穏便と過激と逃走、どれがいい?」

「逃走。って言いたいけど、学校で事件が起きるのは勘弁して欲しいな」

「そうだね。あぁ伝え忘れていた事があった」

「帰ったら聞くよ!」

叫んだ俺は背後から足首を掴まれる。

「昔、ここで殺人事件があってね。

殺害された学生はナイフが刺さったままだったらしいよ」

「こ、殺された学生は……」

「二人だよ」

「もっと早く言え!」

「帰ってゆっくり聞きたかったのだろう?」

「そもそもなぁ、学校に入る前に教えておけぇ!」

掴んでいた腕を掴んで蹴り飛ばして壁を背にする。

動く度に血が床に垂れて鈍い痛みが走る。

自分がもし被害者だったらどうすれば成仏する……

「事件の詳細を出してくれ!」

「少しの間、頑張っててね」

迫りくるナイフを片手で弾いていたが、痛みで捌ききれなくなっていく。

「大島大吾、ここで教師をしていた男性。当時32歳」

ナイフを振り回していた腕が止まる。

「生徒二名を殺害後、緊急逮捕。裁判で無期懲役。現在も服役中」

先輩の話しを最後まで聞いていた二人は持っていたナイフを床に落とす。

「俺がもし同じ目に遭っていたら死んでも死にきれねぇ。

けど、犯人はちゃんと捕まってるんだ。もういいだろ?」

俺の言葉を聞いた二人は少しずつ透明になり姿が消えていく。

俺の足首を掴んだ少年が最後に一度だけ口を開く。

「山菱くんには気を付けて」

「え?」

俺が聞き返すと同時に完全に消えてしまった。

「うん。ノイズ消滅。温度も正常だ。終わったようだね」

「久々に心臓に悪い展開だった……」

「怪我が深そうだね。急いだほうがいいよ」

俺はPCをリュックに押し込み、窓から飛び降りる。

学校から離れるまでバイクを押しながら歩く。

「結局『疑惑の5人目』については解明できなかったわけだ」

「……先輩、さっきの殺人事件の被害者の中に山菱って名前あった?」

「ないね。誰だい?」

「音楽室で霊が消える前に言われたんだ。山菱くんには気を付けてって」

「あの学校で過去に起きた事件は一度きりだね」

「山菱くんってのが『疑惑の5人目』なのかな?」

「範囲を広げて調べた方がいいかもしれないね」

「先輩がAIになってから何でこんなに事件に巻き込まれるんだろうな」

「それも半分は心霊関連だからね。知的欲求が疼いて仕方が無いよ」

「……」

「どうかしたかい」

「山菱……思い出した」

「誰だい?」

「……同じクラスだった奴だ」

「偶然ではないのかい?」

「わからない」

「確認した。確かに在籍してるね」

「あぁ、ただ入学してすぐ行方不明になった奴だ」

俺は誰かの視線を感じて振り返ったが誰も居なかった。

「礼司くん」

「あぁ、帰ろう」

俺とAI先輩の異常は、まだ終わっていないらしい。

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