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異世界に転移してカフェを開いたら、王子に迫られて、思ったより壮大な話に…あらやだラノベみたいな長いタイトル  作者: 井上さん


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2

続きです

 オープン当日。


 前日に、家具屋さんや大工さん達がお祝いの花をくれたので飾る。


午前中は、茶葉店の店員さんと友人が来てくれた以外は、誰も来なかった。


賄いをカウンターで3人並んで食べ、

午後。


 貴族っぽい人が来た。


「いらっしゃいませ」


「やぁ、オープンおめでとう」


 男が、ラグドールさんに話し掛ける。

無言のラグドールさんを見てから、カウンター席に座り、私を見る。


「やぁ、君が異界から来た娘か」


「はじめまして?」


 とりあえず、挨拶する。


「私は、ラガマフィン。よろしく!可愛いらしいお嬢さん」


「…よろしくお願いします」


 頭を下げた私に、横からラグドールさんがメニュー表を出し


「注文は?」


 と、不機嫌そうに言う。


「え?嫉妬?」


 ラガマフィンさんがニヤニヤしながら言う。


「注文しないなら帰れよ」


「客だぞ」


「注文しなければ客じゃない」


「ははは…じゃあ、おすすめは?」


 私に向かって言うのに、ラグドールさんが答える。


「全部だ」


「ははは…」 


 メニュー表を見て、じゃあこれとこれ、と注文した。


バーマンさんが、紅茶を淹れ、私はチーズサンドを作って出す。


じっと私を見つめていたラガマフィンさん。


「へぇ…慣れてるね。よく作ってたの?」


「一人暮らししてたので家事はだいたいしてました」


「一人暮らし?…家事はしてたんだ?メイドとかは?」


「一般庶民は、普通はメイドは雇わないです」


「一般庶民だったの?その割には、品や教養があるみたいだけど」


「子どもの頃から、読み書き計算を習います」


「貴族じゃないのに?」


「貴族はいません。私の国では、6才から9年間、誰でも教育を受けられるようになってました」


「へぇ…凄いな…それで、その教育は…」


「早く食べて帰れよ」


 横からまた、ラグドールさんが言った。


「良いじゃないか、他に客はいないし」


「けど…」


「追加注文するよ。この、プリンって何?」


「デザートです」


 保冷庫から出して見せた。


「じゃあ、それと、卵サンド」


 プリンとスプーンを渡し、すぐに卵サンドを作って渡す。


「もっと聞いていい?」


「お前…」


 ラガマフィンさんの発言に、ラグドールさんが睨みつける。


「相談料を払おう。それなら良いだろ? この娘にも紅茶を。私の支払いで。ほら、ここに座って」


 私は隣に座り、色々聞かれた。







「もう閉店です」


 ラグドールさんが、冷たく言う。

外はもう、真っ暗だ。


「え〜?じゃあ、明日も来るよ。明日は医療について聞かせてくれ」


 ラガマフィンさんは、金貨5枚を置いて帰っていった。


「金貨…これ、お釣り渡した方が…」


 私は、慌てるが


「もらっとけ」


 ラグドールさんが、不機嫌に言った。


「どうしたんですか?」


「どうもしない」


「…あの…あの人って…偉い人ですか?」


「…どうしてそう思う?」


「教育の仕組みとか、孤児についてとか、色々聞かれたから…政治に関わる人じゃなければ、興味無い話でしょ?」


「…」


「私の国の話を参考にして、この国をよくしたいのかなって」


「…あれは、この国の…」


 そこで、止まる。


「…本人に聞け」


「えぇ~」






 閉店作業を終え、施錠して、いつもの荷馬車で家に帰る。

夕食後、ソファで、チャイもどきを3人で飲む。


「お疲れ様」


「お疲れ様でした」


「変な奴に絡まれて、疲れただろう?」


「優しい方でしたよ」


 私が言うのに、ラグドールさんは眉根を寄せた。


「…あぁいうのが好みか?」


「好み?」


「好みの男か?」


 好みの男?…好きなタイプって事?


「…愛想の良い、腹黒もいますからね…」


「腹黒…ははは…腹黒ね…」


 ラグドールさんが笑い出した。


「あの人が腹黒かは分かりませんが」


「腹黒だよ間違いなく」


 ラグドールさんの機嫌がなおったみたいだ。






「やぁ」


 次の日、ラガマフィンさんが来た。


「いらっしゃいませ」


「今日も可愛いね」


「え?…あ、女性は褒めないといけないんでしたっけ?」


 紳士は女性を必ず褒めるってコミックで読んだぞ。


「そうだけど…星は可愛いよ」


「ありがとうございます。可愛いって言われるの初めてです」


「ラグドールは言わないの?」


「…?言わないですね」


 見ると、ラグドールさんが、ラガマフィンさんを睨みつけている。


「男の風上にも置けないな」


「言われても困りますから」


「ここで暮らすなら、慣れないと」


「…そうです…よね…?」


「大丈夫。私が毎日言うから」


「…毎日?…あの…そちらの方は…」


 その間、後ろでずっと待っていた男を見る。


「こいつは私の側近」


「サイベリアンです。よろしく。確かに可愛いらしいですね」


「…よろしくお願いします」


「ふふっ…照れてる…」


 妹か娘を見るような、微笑ましく私を見るラガマフィンさん。


「…出入り禁止にするぞ」


 ラグドールさんが割り込む。


「私は客だよ。それに、新しい客も連れてきたじゃないか」


「はい。ありがとうございます」


 私はお礼を言った。


「君は素直で良い子だね」


「それは…褒めてるんですか?」


「褒めてるよ。妻がいなかったら、口説いてるよ」


「?????口説く??????」


 私の頭に?が溢れた。


「まずは紅茶とパンケーキ、2人分…じゃなかった3人分」


 ラガマフィンさんが、しれっと注文する。


気を取り直して、パンケーキを3人分作る。

その間に、カウンター席に座る2人。


「素敵な店ですね」


 サイベリアンさんが言う。


「ありがとうございます」


 できたパンケーキを2人の前に出す。


「もう1つは君の分だよ。ほら、ここに座って」


 サイベリアンさんが座っていない方の、ラガマフィンさんの隣の席を示す。


「今日は、医療についてだよ」


「あ…そういえば、昨日の…金貨は…」


「相談料だよ。ちゃんともらった?」


「私ですか?」


「君への相談料だよ」


「…」


 困ったように、ラグドールさんを見る。


「遠慮なくもらっとけ」


 ラグドールさんが言った。


「もらい過ぎです」


「いや、もっと払ってもいいくらいだ」


 ラガマフィンさんが言うのに、更に戸惑ってしまう。


「え…」


「ほら、時間無くなるから」


 まぁ今後、私みたいな人が来た時に、無報酬で搾取されたら困るから、もらっておくか。

ちゃんと報酬を渡す上司は、良い上司だ。


 ラガマフィンさんに問われるまま、医療制度について話す。


途中途中で、追加注文したり、家具屋さんの紹介で来た人が来たり、茶葉店の別の店員さんが来たりした。



 昼過ぎ、ラグドールさんと、 バーマンさんと私用に賄い、ラガマフィンさんとサイベリアンさんに注文用の卵サンドを作る。


「ところで、あそこの席は、何故壁に向いてイスが置いてあるんですか?」


 サイベリアンさんが聞いた。


「作業用席です」


「作業用?」


 私の答えに、ラガマフィンさんも聞き返す。


「読書したり、書類仕事したり、裁縫したりする席です」


「へぇ…」


「ラガマフィン様、書類仕事、しますか?」


「それも良いかもな」







「今日もお疲れ様」


 夕食後のソファ。

今日もラグドールさんがチャイもどきを飲みながら、話しかけてくれる。


「お疲れ様でした」


「ラガマフィンには、愛想振り撒かなくていいからな」


 私は首を傾げる。


「そうですか?」


「調子に乗るから」


「悪い人ではないですよ」


「…そうだけど」


 何か不機嫌そうな顔をするラグドールさん。


「ラガマフィンさんの事、嫌いなんですか?」


「苦手なんだよ」


「苦手?」


「俺は…家族と色々あって、家を出たから」


 ラガマフィンさんの話をしている時に、家族と色々あった、と言う事は、ラガマフィンさんは家族なのかな?


「そうなんですね」


「聞かないのか?」


「話したいんですか?」


「いや…」


「なら、聞かないです」


「そうか…」






「やぁ」


 次の日も、ラガマフィンさんがやってきた。

昨日とは違う人を2人連れてきている。


「今日も可愛いね」


「本当に毎日言うんですね」


「そうだよ。今日はね、文官を連れてきたよ」


「ありがとうございます」


 文官の2人が挨拶をする。


「今日は、作業用席に座るね」


「早速ありがとうございます。使い心地を教えていただけると嬉しいです」


「うんうん。仕事熱心で良いね。ところで、作業用席、もう1つ作れる?」


「はい。イスを移動しますね」


 テーブルとイスを移動して、作業用席を3つにした。


 ラガマフィンさんを間に挟み、文官さんが、両隣に座る。


「今日は、紅茶とチーズサンドを3人分ね」


「はい」


 チーズサンドを持って行った時、書類が目に入る。


「それ、会計とかの報告書ですか?」


「…よく分かるね?」


「書式がまちまち、とか単位がまちまち、とか、よくある話を聞いたので…」


 コミックで、書類仕事を改善して喜ばれる、ってストーリーがあった。


「書式…?」


「単位…?」


 文官さん達の目が光ったような気がする。


「具体的に教えてください」


「え…?書類仕事はした事がないので、詳しくは分からないのですが…」


 タイトル、名前、書いた日付、いつの報告か、何の報告か、報告の内容、などの書く欄の場所を統一する…と説明する。


確か、そんな感じだったよね?


提出先ごとに分かるように、とか。


「なるほど…これなら見やすいし、記入漏れもない…」


「おや、今日も相談料渡さないとだね」


 ラガマフィンさんが、ニコニコしながら言う。


「さっさと仕事して帰れよ」


 ラグドールさんが眉間にシワを寄せて言った。


「まさか、使い心地を言わないといけないから、閉店までいるよ」


 ラガマフィンさんは、相変わらず笑っていた。







「今日もお疲れ様」


「お疲れ様でした」


 夕食後のソファ。チャイもどきを飲みながら、ラグドールさんとバーマンさんとノンビリするのも、何だか好きな時間だ。


「疲れてないか?」


「楽しいです」


「そうか?」


「でも、もうちょっと勉強する時間も欲しいです」


「勉強?」


 ラグドールさんが首を傾げる。


「この国の事とか…」


「ラガマフィンが聞いたら喜ぶな」


「まだ、字も読み書きできないし…」


「この国の平民は、そんなものだぞ」


「本が読めないじゃないですか!」


「本?」


「本が読みたいです〜。あいてる時間は本が読みたかったのに…」


「分かった分かった。じゃあ、今から少し教えるか」


 ラグドールさんは苦笑した。


「ありがとうございます!」






 ラガマフィンさんは、他の仕事で来れない時以外は、しょっちゅう来るようになった。

 もう完全に常連さんだ。


毎回ついてくる人が違ったりするものの、側近や文官も連れてきてくれた。


その側近や文官が、友人を連れてきたりして、お客さんが増えてきた。


「ありがとうございます。お陰様で、お客様が増えました」


 ラガマフィンさんにお礼を言った。


「良かったな」


「はい」


「そうなると、席が足りないな」


「席を増やせるように、配置に余裕をもたせてあるんです」


「なるほど…客がどのくらい来るか、最初は分からないもんな」


 頷きながら、ラガマフィンさんが言った。


「はい」


「君は賢いね。私の側近にならないか?側妃でも良いよ」


「おい…」


 ラグドールさんが割り込む。


「なんだ?優秀な娘は、ちゃんと捕まえてないと、取られるぞ」


「…」


「私、こういう店をやるのが夢だったので、叶えてくれたラグドールさんには感謝してるんです」


 ラグドールさんが黙り込んだので、私は話すことにした。


「夢?」


「知らない所に来て、夢を叶えられなかったなって思ってたら…ラグドールさんに会って…見ず知らずの私を住まわせてくれて、雇ってくれたから…恩返ししたいんです」


「…」


 ラグドールさんが、驚いた顔して私を見ている。


「良かったな」


 ラガマフィンさんがニヤニヤして、ラグドールさんに言った。


「…うるさい」


「素直にならないと、後悔するぞ」


「分かってる」


「お2人って仲良いですね」


 私が言うと、ラグドールさんが


「良くない」


 ラガマフィンさんが


「兄弟だからね」


 と言った。


「兄弟?」


「聞いてないの?」


「はい」


「私が誰かも?」


「本人に聞けって」


「ふぅん?」


 この際だから聞いてみた。


「偉い人ですよね?」


「偉い人?」


「政治に係る、国の偉い人」


「どうしてそう思う?」


「教育の仕組みとか、普通の人は興味持たないですよ」


「最初からか…やっぱり、私の所へおいで」


 突然何を言い出すやら。


「いや、ラグドールの妻でも良い。君がこの国から出ないのなら」


「?????」


 なんて?


「おい」


「ラグドールの事は嫌いじゃないだろう?」


「でも、ラグドールさんにも好みがありますし…」


 チラリとラグドールさんを見る。


「政略結婚は当たり前の世の中だよ」


「はっ!そうだった!」


 しんけ…異世界コミックで習ったとこだ!


「学校制度、上下水道、書式統一、食糧備蓄…君の知識で、この国は発展しそうだよ。そんな君の事を他国が知ったら、欲しいと思うだろうね」


「…」


「ちゃんと保護しとかないと、誘拐されちゃうよ?」


 おぅ…思ったよりも、壮大な話になりそうだ。







 荷馬車に乗って家に帰る時に、視線を感じた。


「振り向かないで、聞いてください。何か…見られている感じがするんです」


 ラグドールさんに、こっそり言う。


「見られている?」


 ラグドールさんは、私の顔を見た。


「気のせいかも知れませんが…」


「ラガマフィンが誘拐なんて言うから、気になったんだろ?」


「いいえ。気のせいではございませんよ、若」


 バーマンさんが小声で言った。


「え?」


「確かに視線を感じます。明日、ラガマフィン様がいらしたら、護衛を依頼した方が良いかも知れません」


「そうか…」








「こんにちは」


 サイベリアンさんが来店した。


「今日は、ラガマフィン様の代わりに私が参りました」


「いらっしゃいませ」


「今日も素敵ですね、星様」


「あ…ありがとうございます…?」


 サイベリアンさんは、カウンター席に座り、パンケーキと紅茶を注文すると


「ラガマフィン様からの伝言です。第2王子の動きが怪しい。注意せよ、との事です」


「昨日、視線を感じたと、星とバーマンが言っていた。監視されてるのか?」


 ラグドールさんが言う。


「可能性はありますね。ラガマフィン様に伝えましょう。星様。絶対に、1人にならないでくださいね」


「…はい」






 家に帰り、夕食後のお茶の後、自分の部屋のドアを開けた時、何か違和感を感じた。


何かとは言えないが、何か変な感じ…


「ラグドールさん」


 私は急いでラグドールさんの部屋に行った。


「どうした?」


「部屋が…何か…分からないけど…」


「部屋がどうした?」


「変な感じなんです」


「変な感じ?」


 私はコクンと頷く。


「見に行っても良いか?」


 私はまた頷く。


「バーマン!」


 ラグドールさんは、バーマンさんを呼んで、私の部屋まで来た。


ドアは開けっ放しにしていた。


「部屋を見た時に、何か変な感じがしたんです…」


「見ても良いですか?」


 バーマンさんが聞いたので、頷いた。

バーマンさんは、あちこち見て回り


「誰かが、部屋を荒らし回ったようですね。窓はきちんと閉まっている…入口も、閉まっていた。…裏口かな?ちょっと見てきます。それまで、ラグドール様の部屋でお待ちください」


 ラグドールさんが何か言いたそうにしたのを


「廊下は冷えますので」


 ラグドールさんは、私を部屋に連れていってくれ、ソファに座らせてくれた。

毛布を肩から掛けてくれ、お茶を出してくれた。


「ありがとうございます」


 しばらくすると、バーマンさんがやってきた。


「裏口を開け、侵入したようです」


「…第2王子か?」


「そこまでは…今日は、念の為、この部屋で過ごした方が良いでしょう」


 ラグドールさんは、何か言いかけ…やめて、また口を開いた。


「…ベッドは星が使え」


「え、でも…」


「俺とバーマンは、交代で番をする」


「…」


「心配するな。ラガマフィンが護衛をよこしている。何かあれば知らせてくれる。明日はラガマフィンが来るかも知れないから、ちゃんと休んどけ」


「…はい」


 部屋に戻りたくないので、そのまま寝る事にした。


「お休みなさい」


「お休み」


「お休みなさいませ」






「やぁ、無事に会えて良かったよ。昨日は眠れたかい?可愛いお嬢さん」


 翌日、ラガマフィンさんがやってきた。側近のサイベリアンさんと文官のアビシニアンさんも一緒だ。


「いらっしゃいませ」


「おや?元気ないね?何かあった?」


 バーマンさんが、裏口から侵入され、私の部屋を探られた事を話した。


「そうか…」


 ラガマフィンさんが深刻な顔をして、サイベリアンさんに何かを指示した。

サイベリアンさんは、また後で来ます、と言って、店を出ていった。


「紅茶と、チーズサンド2人分ね」


「はい」


 私がチーズサンドを、バーマンさんが紅茶を淹れている間に、ラガマフィンさんがカウンター席に座る。隣にアビシニアンさんも座る。


「敵がいつ来るか分からない。なので、念の為に毎晩罠を仕掛ける」


「罠?」


「大切なお嬢さんを奪われないようにね」


 何だか大変な事になってきた。


「あの…第2王子って言ってましたけど…どういう事になってるんですか?」


 私の発言に、ラガマフィンさんが


「聞いてないの?」


 呆れた顔で、ラグドールさんを見た。


「実は、私はこの国の王太子でね」


「おうたいし…王太子?次の王様になる?」


「そう。その王太子」


 おっと…貴族どころか、王太子だったよ…


「すみません…今までご無礼を…」


「大丈夫だよ。気にしないで。それでね、第2王子は、自分が王太子になりたくて、裏で色々やってるんだ」


「…思ったより壮大な話だった…」


 私は遠い目をする。


「ははは…ラグドールに捕まったんだから、仕方ないね」


「???」


 私は首を傾げた。


「ラグドールは第5王子でね」


「だいごおうじ…第5王子?…王子?ラグドールさんが?」


 ラグドールさんは、視線を逸らしている。


「第2王子が弟達に、味方になれと脅したり、毒を盛ったり、ハニートラップ仕掛けたりしてね」


「うわぁ…」


「ラグドールは、王位継承権を放棄した。味方にしたいけど、味方にならないなら殺す…って感じの第2王子に、追いかけられて…逃げた時に、星と出会ったらしい」


 やっぱり追われてたんだ。警戒心凄かったもんね。


「星は私に色々な知識を与え、功績を上げた。第2王子は、私がこれ以上功績を上げないように、星を奪おうとするだろうね」


 後継者問題だったのか…


「ごめんね。星の事、隠しきれなくて。スパイが沢山いてね、ここまで連れてきちゃって」


「スパイ…?」


 凄い…本当にいるんだ…


「私を奪おうとするって、どうやると思いますか?」


「誘拐だね。言う事を聞かないからって、さすがに殺しはしないだろうけど…」


「誘拐…」


「おい、まさか…」


 ラグドールさんが話に割り込む。


「だから、囮をわざと誘拐させようと思う」


 ラガマフィンさんが、小声で、きっぱりと言った。


「囮?」


「そう。星の髪色と同じで、背格好が似ている女騎士がいる。今、こっそり家に入ってもらうように手配した」


「家に?」


「星の部屋で寝てもらって、誘拐されてもらう。騎士に後をつけてもらって、犯人の所まで案内してもらう」


 誘拐を目論む犯人が、そんなアホな事する?


「本当は、城で保護したい所だけど、いつ来るか分からないからね…。ここは、客が来るから手が出せないだろ。あとは、家とここの往復。護衛をわざと見せて、誘拐を諦めさせる」


「つまり、家で誘拐せざるを得ないと言う訳か」


「そう。直接第2王子の所へ行くのか、他の誰かを身代わりにするのか」


「他の誰か?」


 私が考えている間に、話は進む。


「あいつが、簡単に尻尾を掴ませるわけないだろ」


「確かに…」


「今夜からは、ラグドールと一緒に寝てね、星」


「おい」


「万が一があったら困るだろ。それとも、バーマンと一緒に寝るか?」


「…」


 ラグドールさんが、ラガマフィンさんを睨む。


「次は、誘拐された後の話だ」


「誘拐された後?」


「囮が連れて行かれた所に犯人がいるとする。どうやって、犯人だと自白させるか。もしくは、共犯者を割らせるか」


「共犯者?」


「第2王子は、共犯者を身代わりにして、自分は罪を逃れるだろうと思ってね」


「そうだな」


「共犯者…犯人に仕立てられる人物は誰か」


「第3王子か?第4王子か?」


 ラグドールさんが言う。


「どちらも見張りをつけている」


「裏口は、あえてそのままにしています。侵入に気付いていないと、油断しているでしょう」


 バーマンさんが言う。


「あとは、誘拐の実行犯を尾行して、犯人の所まで案内させた後、実行犯を捕らえる」


「実行犯を始末される可能性もある」


 ラガマフィンさんの言葉にラグドールさんも意見を言う。


「始末されるとしたら、下っ端だ。誘拐のリーダーは、第2王子の所へ行ける人物だ。そいつは始末されない」


「第2王子が見ていない所で、囮を取り戻し、その裏で、堂々と本物の星を王と謁見させたら、驚くだろうね第2王子は」


 うわぁ…腹黒…


「そこで、第2王子を断罪するのか?」


「確証が取れたらね」


「あいつは、罪を認めないだろうな」


「そうだな」


「嘘の情報を渡しましょう」


 私は思い付いた。


「嘘の情報?」


「学校制度みたいな情報を、誘拐犯に教える。犯人は、嬉々として、その情報を使うと思いませんか?」


「良い考えだ。情報はどうする?」


「う〜ん」


医大や看護学校

裁判制度

三権分立


実力主義


「実力主義はどうです?」


「実力主義?」


「王は、長男ではなく、実力がある者が継ぐ。実力がある者が、役職に就く。それが実力主義です」


「ふむ…」


「第2王子は、次男だから、王太子になれない。でも、実力主義なら、実績さえあれば、王太子になれる」


「なるほど…」


「功績を上げて、実力主義を主張させれば、誘拐犯だと言っているも同じ」


「功績か…」


「功績は、医者を育成する学校か、学校の教師を育成する学校…裁判制度……調理師資格…職業訓練校…洪水対策…」


 思い付いた事を言っていく。


「待て待て待て」


 ラガマフィンさんが止めた。


「どれか1つで良い。残りは私に教えろ」


「分かりました」


「どれだけ進んでるんだ、星がいた国は」


 ラグドールさんがぼやいた。


「アビシニアン、私用の覚書にしてくれ」


「かしこまりました」


 私は、さっき思い付いた事を1つずつあげていく。アビシニアンさんがメモする。


「1つを第2王子の功績にしよう。どれにする?」


「功績が分かりやすいのが良いな」


「結果が早く出るのは?」


「う〜ん…職業訓練校かなぁ…」


「職業訓練校…学校か?」


「はい。仕事が無い人に、専門の仕事を教える学校です。土木工事とか、物作りとか、事務や会計業務とか、試験で資格を取れるようにして、資格があれば、就職に有利になるように、企業にも協力してもらわないといけないですが」


「資格の話以降は、私がもらう。あいつには、仕事内容を教える学校、までで十分だ」


 腹黒だなぁ…


「それは良いですね。後から、実は、もっとこうすれば良くなるって上書きしてあげれば、相手はお手上げですね」


「だろう?星は話が早い」


 腹黒に褒められた。私、腹黒の才能あるのかもしれない。


 嬉しいかは別として。


「では、実力主義と、職業訓練校の前半部分を、囮の人に説明しましょう」


「それを提案した人物が、誘拐犯だ」


「もっと話せと言われた時の対応は?」


「…ふむ…我儘を言って、焦らそう」


「無理難題を押し付けましょう。時間稼ぎが必要です」


「さすがだ星。バーミーズに会わせたいよ」


 ラガマフィンさんが言った。


「誰です?」


「妻だ」


「妻」


「星の話をしたら、星の国の化粧品事情を知りたいと言っていた」


「あ〜女性が気になるのは…そっち…」






「怖いか?」


 ラグドールさんが聞く。

ソファに座り、2人で紅茶を飲んでいる。

バーマンさんは、自分の部屋で、敵の動きを警戒している。


「囮の人が怪我しなければ良いなって」


「そうか…」


「上手くいくと良いですね…」


「…もう寝ろ」


「…」


 実は、ラグドールさんと2人きりで、緊張しているのだ。

誘拐のこともあり、余計に身体が、ガチガチに固まっている。


「強がるな」


 ラグドールさんが、私を横抱きにして、ベッドへ運ぶ。


わぁお、お姫様抱っこだぁ…


初めてされた…

する人いるんだなぁ…と現実逃避する。


 ラグドールさんは、優しく私をベッドに横たわらせると、掛け布団を掛け私の隣に横になり、腕枕をした。


「え?」


 さすがに予想できなくて、動揺した。


彼氏いない歴=人生なので、パニックになる。


「あわわわわ…」


「静かに…ほら、もう寝ろ」


 ラグドールさんは、私の髪を撫でた。

思わず、ラグドールさんを見つめてしまう。

ラグドールさん、そういう事もできるんだ…


25才だしね…女性経験あるかぁ…


「目を閉じろ」


 髪を撫でながら、私の瞼に口付けをするラグドールさん。

瞼に触れられて、目を閉じてしまう。

ぎゅうっと身体に力が入る。

 溺愛物の小説のようだ…また現実逃避した。


「ふふっ…お前でも、動揺する事あるんだな…」


 ラグドールさんが、声を殺して、クックックッと笑っている。

笑い過ぎでは?


私は目を開けて、ラグドールさんを睨みつけた。


「笑い過ぎ」


 小声で文句を言うと


「目も口も閉じろ…次は、口を塞ぐぞ」


「!?」


 マジマジとラグドールさんを見てしまう。


口を塞ぐ…?


ラグドールさんて、そんな冗談言えるんだ…


「…期待してるのか?」


 しばらく、ラグドールさんと見つめ合った。


期待?何のこと…?


考えていると、ラグドールさんに抱きしめられた。


 うん?何故?


抱きしめられて、温かくて心地よくて、眠気が来た。


「くそ…生殺し…」


 ラグドールさんが、何か呟いたが聞き取れず、私は眠りについた。


読んでいただきありがとうございます

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