表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/14

集合写真から消えた私

 部署で、集合写真を撮ることになった。


 異動してくる人の歓迎会のあと、店の前で全員並ぶ。


「はい、詰めて詰めてー」


 カメラ係が声を上げる。


 私は端に寄り、隣の同僚と肩が触れるくらいに立った。


「そこ空いてるよ」


「大丈夫、入ってるって」


 笑いながら返す。


 フラッシュが光る。


 それで終わりだった。



 翌日。


 社内チャットに写真が上がった。


 何気なく開いて、指が止まる。


「……あれ?」


 私が、いない。


 私が立っていたはずの場所だけ、

 ぽっかり空いている。


 隣にいたはずの同僚同士が、

 不自然な距離で並んでいる。


 まるで、

 最初からそこに誰もいなかったみたいに。


「ねえ」


 隣の席の同僚にスマホを見せる。


「これ、私どこ?」


「どこって……」


 同僚は画面を覗き込み、首をかしげた。


「いないね」


「いや、いたでしょ?」


「え?」


 本気で不思議そうな顔をする。


「その日、体調悪くて休んでなかった?」


 笑いながら言う。


「……は?」


「歓迎会も来てなかったじゃん」


 冗談だと思った。


 でも周りに聞いても、同じ答えだった。


 歓迎会の日、

 私はいなかったことになっている。



 スマホの写真フォルダを開く。


 昼に撮ったはずの料理の写真がない。


 同僚と乾杯した動画もない。


 その日の記録だけ、

 綺麗に消えている。


 でも。


 鞄の中には、その店のレシートが入っていた。


 日付も時間も、その日のもの。


 私は確かに、そこにいた。



 翌日、出社すると、

 どこか空気が変だった。


 自分の席に座ろうとして、

 手が止まる。


「……あれ?」


 机の上に、

 知らない人の名前が貼られている。


「この席、前から空いてたっけ?」


 誰かが言う。


「前の人、いつ辞めたんだっけ?」


「結構前じゃない?」


 会話が遠くで聞こえる。


 私は立ったまま、

 誰にも気づかれない。


「……あの」


 声を出したはずなのに、

 誰も振り向かない。


 その瞬間。


 社内チャットに、新しい写真が上がった。


 昨日撮った、

 部署の作業風景。


 全員が写っている。


 ただ一箇所だけ。


 私が座っているはずの席だけ、

 最初から誰もいなかったみたいに、

 空いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ