第二章:灰空に疾る風 ―蒼雷の使い手
クロノクラッドの空は、相変わらず灰色に沈んでいた。
そこには雲ではなく、無数の記号と刻印が渦巻いていた。かつての空とは似ても似つかぬ、情報と異形の空。
ユウト:「っ……やっと……終わった、のか……?」
地面には、焦げた鉄の破片と、崩れた魔法陣の残滓。
さきほど倒した敵――あの鎧の男は、何も言わずに塵へと還った。
だが、勝利の余韻に浸る暇はなかった。
風が変わったのだ。
──ギュウウゥゥン。
耳をつんざく音とともに、空間の一角が歪み、そこに“何か”が着地した。
落雷のような閃光。そして、浮遊する電磁パネルが無数に空間を駆け巡る。
???:「ちっ……やっぱり間に合わなかったか。第一戦、終了済みとはな」
そこに現れたのは、ユウトと同じ年頃の少年だった。
短く切り揃えた銀髪に、青と白のコート。背には雷撃を帯びたカードデバイス。目はどこか冷たく、だが光っていた。
???:「……名前を聞いておこうか。さっき“魂の刻印”が発動したばかりの、火属性の新人」
ユウト:「なっ……なんで、それを……」
???:「俺は蒼嵐の契印者――氷雨ライゼ。属性:雷。ソウルゲージ残量100%。
デッキ名《雷刃ノ断罪》――刻印保持者、お前を試す義務がある」
ユウト:「ちょっ、義務って何だよ!?いきなりバトル!?」
ライゼは冷笑を浮かべた。
ライゼ:「この世界に義理も情もない。あるのは、“力”と“魂の刻印”だけだ」
ユウトの足元に、再び刻印の円環が浮かび上がる。
自動展開されたカードインターフェースが、手元に現れた。
ユウト:「くそっ……さっき使い切ったばかりなのに!」
ライゼ:「お前、さっきの戦い、契約カードを使ったな? ならばソウルも残り少ないはずだ。
……だが、俺は違う。“雷”は、最速で撃ち抜く。お前が反応する前に、終わらせる」
その瞬間、ユウトの耳元で警告音が鳴った。
【ライバルマッチ判定】
《雷刃ノ断罪》vs《灼魂ノ初撃》
戦闘形式:刻印デュエル / ソウルゲージ:8 vs 10
※敗北時、「魂記録」1層喪失
ユウト:「魂記録って……俺の“存在”の一部が……消えるってことか……」
だが、ユウトは震える指でカードを構えた。
ユウト:「……いいぜ。やってやるよ。雷でもなんでも、焼き尽くしてやる」
ライゼ:「なら始めようか、“火”の新人。お前の“魂の価値”を、試してやる」
次の瞬間、両者の周囲に召喚ゾーンが展開され、エネルギーフィールドが雷鳴と灼熱を呼び起こす。
──雷と炎、魂と刻印がぶつかる時、
《冥契トーナメント》の第一戦が幕を開けた――