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第九十四話「消えた嵐太」

「嵐太……! どこに行ったんだよ……!」


空は、嵐太が消えた扉を見て、驚愕に目を見開いた。彼の『観測』の『法則』をもってしても、嵐太が消えた『事象』を『なかったこと』にすることはできなかった。


「フフフ……。結人か……。君の『案内屋』の力は、私の『観測』の『外』にあるというのか……」


空は、そう言って、不気味な笑みを浮かべた。彼の目には、結人という存在が、世界の『真実』を大きく歪ませる『不確実性』として映っていた。


その時、地下室全体に、嵐太の『破壊』の力が、まだ残っていることに、空は気づいた。それは、まるで嵐太がそこにいた痕跡のように、地下室の空間をわずかに歪ませていた。


「フン。嵐太は消えたが、彼の『破壊』の『法則』は、まだ残っているようだ。この『歪み』を、私が『観測』し、『なかったこと』にしよう」


空は、そう言って、嵐太の力の痕跡に向かって、力を放った。すると、嵐太の力の痕跡は、まるで最初から存在しなかったかのように、光の粒子となって消えていった。


「フフフ……。これで、嵐太の存在は、この世界から完全に消えた。そして、次に消えるのは、君たちの『つながり』だ」


空は、そう言って、再び不敵な笑みを浮かべた。彼の目には、まだ地下室に残っている、もう一人の存在が映っていた。それは、嵐太の力を受け止めていた、『護り屋』だった。


「護り屋……。君という『壁』も、私の『観測』の『外』にはない。君の存在も、ここで終わりだ」


空は、そう言って、『護り屋』に向かって、力を放った。しかし、『護り屋』は、空の力に動じることなく、静かに、そして圧倒的な力で、その力を受け止めた。


「フン。お前の『観測』は、あくまで『事象』を『なかったこと』にするだけの力だ。しかし、俺の『護り』は、『事象』そのものを『受け止める』力だ。お前の力は、俺の『壁』を、破ることはできない」


『護り屋』は、そう言って、空の力を掌で完全に受け止めた。空は、自分の力が『護り屋』に通用しなかったことに、驚愕に目を見開いた。


「な、なんだと……!? 馬鹿な……! 私の『探り』の『法則』が、効かないだと……!?」


空は、信じられないといった顔で、『護り屋』を見つめた。彼の『探り』の『法則』は、この世界のすべての『事象』を『なかったこと』にできるはずだった。しかし、『護り屋』の『護り』の『法則』は、空の力を完全に受け止めていた。


「フフフ……。面白い。君の『壁』は、私の『観測』の『外』にあるようだ。だが、君は、この地下室から逃げることはできない。嵐太という『不確実性』を逃がした君は、私の『観測』の『外』にはいない。君の『存在』は、私が『探り』尽くし、『無』へと還そう」


空は、そう言って、再び不気味な笑みを浮かべる。空と『護り屋』の二つの力が、再び激しくぶつかり合う。


その時、地下室全体に、嵐太の妹の声が響いた。それは、嵐太の記憶に残っていた、幼い頃の妹の声だった。


「お兄ちゃん、お兄ちゃん! ほら見て! 嵐太が作ったこのお城、すごいんでしょ!」


空は、その声を聞き、驚愕に目を見開いた。彼の『探り』の『法則』をもってしても、その声がどこから聞こえてくるのか、『観測』することができなかったのだ。


「な、なんだと……!? この声は……!?」


空は、そう言って、声の聞こえてくる方向を見つめた。しかし、そこには誰もいなかった。


『護り屋』は、その隙を見逃さなかった。彼は、空に向かって、全力を込めた一撃を放った。空は、その一撃を避けようとするが、彼の体は、妹の声に驚いて、一瞬だけ動けなくなっていた。


「フフフ……。面白い。君たちの『つながり』は……本当に……面白い……」


空は、そう言って、再び光の粒子となって消えていった。


『護り屋』は、空が消えた場所を見つめていた。彼の表情は、無表情だったが、その瞳には、何かを深く考えるような光が宿っていた。


「嵐太……。お前は……まだ、壊れていなかったのか……」


『護り屋』は、そう呟くと、地下室の入口に向かって歩き出した。彼の背後には、嵐太の『破壊』の力の痕跡が、わずかに残っていた。


結人が用意した扉をくぐり抜けた咲と詩音は、森の中の開けた場所に出た。


「はぁ、はぁ……! 助かった……!」


咲は、詩音をそっと地面に寝かせ、安堵の息を吐いた。詩音は、まだ意識を失ったままだ。


「詩音、詩音! 目を開けてよ!」


咲は、詩音に必死に声をかける。しかし、詩音の瞳は、もう何も映していなかった。その時、咲の左腕の聖痕が、完全に消え去った。


「うそ……!? 聖痕が……消えちゃった……!?」


咲は、驚きと不安で、詩音の顔を見つめた。詩音との『つながり』が、途切れてしまったのだ。


「そんな……! 嘘でしょ……!? 詩音……!」


咲は、詩音を抱きしめ、声を上げて泣いた。彼女は、もう二度と、詩音と話すことができないのかもしれないと、恐怖を感じていた。

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