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第八十七話「三つ巴の激突」

咲、詩音、嵐太、そして空。四つの力が、今、この地下室で、激しくぶつかり合う。これは、伝説の『奪還屋』と、二人の強敵の、三つ巴の戦いの始まりだった。


「さあ、見せてくれ。君たちのつながりが、この『見る者』を、どうやって打ち破るのかを」


空が不気味な笑みを浮かべた。彼の目は、世界のすべてを見抜き、本当の姿を『探り』、変化を『なかったこと』にする、絶対的な力そのものだった。


「うるさいぞ、空! お前はただ見てるだけだろ! 俺は、この世界をぶっ壊して、新しく生まれ変わらせるんだ!」


嵐太が叫び、黒い大きな力を放った。その力は、空だけでなく、咲と詩音にも向かっていく。


「くっそー! やるしかないじゃん、詩音!」


「ええ、咲! 私たちがやらなきゃ、誰も止められない!」


二人は、嵐太の力に立ち向かうために、お互いの手を取り合った。その瞬間、詩音の左腕に、赤い不思議な印が浮かび上がった。それは、まるで炎のような形をした、美しい『聖痕』だった。


「これが……詩音の新しい力……!」


咲は、驚いて詩音の腕を見つめた。聖痕が光を放ち、二人の手から繋がる『絆』の力が、さらに強くなっていくのが分かった。


「咲、いくよ! 彼の攻撃は……右から来る!」


詩音は、そう言って、ほんの少し先の未来を見た。嵐太が右から力を放つ光景が、彼女の脳裏に焼き付いた。


「わかった! 右だね!」


咲は、詩音の言葉を信じ、嵐太の攻撃を右へ避けた。嵐太の黒い力は、二人のわずか数センチ横をかすめて、地下室の壁に衝突し、壁を消し去った。


「なっ……! なんでだ!? なぜ避けることができた!?」


嵐太は、自分の攻撃を避けられたことに驚き、信じられないという顔で咲と詩音を見つめた。


「へへっ! あたしたちのコンビネーションは、あんたの想像を超えてるんだから!」


咲は、嵐太にそう言い放つと、今度は空に向かってP90を構えた。しかし、詩音の声が彼女を止めた。


「咲、待って! その攻撃は無駄になるわ! 彼の力は、私たちの攻撃を『見ている世界にない』ものとしてしまう!」


「じゃあ、どうすればいいのさ!」


咲は苛立ちながら尋ねた。彼女の能力である『微細の雷』をP90の弾丸に込めるタイミングが分からず、焦りを感じていた。


「彼が『見ていない』場所を狙うしかない! 嵐太の力がぶつかった瞬間、彼の『見る力』は少しだけ乱れるはず!」


詩音は、未来の映像の中で、嵐太と空の力がぶつかる一瞬の隙間を見た。そのわずかな時間なら、空の『見る力』が弱まる可能性がある。


「わかった! 詩音、指示して!」


咲は、詩音の指示を待つために、P90を構えたまま構えた。その時、嵐太が再び叫んだ。


「うるさいんだよ、お前たち! 俺は、世界のすべてを壊す男だ!」


嵐太は、再び黒い力を放った。今回は、咲と詩音を囲むように、四方八方から力を放った。逃げ場はどこにもない。


「咲! 今よ! 嵐太の力がぶつかる一瞬の隙間を狙って、空に撃ち込んで!」


詩音は叫んだ。彼女は、左腕の聖痕を光らせ、嵐太の力に対抗するために、自らの『光』の力を放った。聖痕から放たれた光は、嵐太の力を少しだけ遅らせる。


「くっそー! やってやる!」


咲は、詩音の言葉を信じ、P90を空へと向けた。彼女は、弾丸に全身の力を集中させ、『微細の雷』を込めた。弾丸が、青白い光を放ち始める。


「あたしの雷を、くらえーっ!」


咲が引き金を引いた瞬間、嵐太の力が詩音の光とぶつかり、地下室全体に閃光が走った。空は、その閃光に一瞬だけ目を細めた。その一瞬の隙間を、咲は狙っていたのだ。


咲が撃った弾丸は、空の『見る力』に捕まることなく、彼の胸に突き刺さった。


「ぐっ……! 馬鹿な……!? なぜ、私の『見る力』をすり抜けた……!?」


空は、自分の胸に刺さった弾丸を見て、驚愕に目を見開いた。彼は、自分の絶対的な力をもってしても、咲の攻撃を止めることができなかったのだ。


「へへっ! どうだ! あたしたちの力は、あんたの想像を超えてるんだから!」


咲は、空に向かって叫んだ。その時、嵐太が、驚愕に目を見開いたままの空に向かって、黒い大きな力を放った。


「隙ありだ、空! お前も、俺の『破壊』の『法則』で、生まれ変わらせてやる!」


嵐太の放った力は、空の胸を貫き、彼を光の粒子に変えて消し去った。嵐太は、空を倒したことに満足したような笑みを浮かべる。しかし、その笑みは、すぐに消え去った。


「な、なんだ……!?」


嵐太は、自分の周りの空間が、再び歪み始めるのを感じた。そして、消えたはずの空が、再び姿を現したのだ。


「フフフ……。私の『探り』の『法則』は、そんな安っぽいものではない。君の『破壊』の『法則』は、確かに私を『無』へと還した。しかし、私の『探り』の『法則』は、私が『無』へと還った『真実』を『観測』し、『なかったこと』にできる。だから、私は、何度でも『再誕』できるんだよ」


空は、そう言って、不敵な笑みを浮かべた。彼の瞳は、世界のすべてを『観測』し、『真実』を『探り』、変化を『なかったこと』にする、絶対的な力そのものだった。


咲、詩音、そして嵐太の三人は、空の恐ろしい力に、再び絶望的な顔を浮かべた。終わらない戦いが、今、始まった。

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