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第四十二話「覚醒の光、絆の力」

旧型重工業プラントの薄暗い空間に、張り詰めた空気が満ちていた。さきの体から放たれる、かつてない温かく、力強い『光』に、師匠である『ガーディアン』は、驚愕の表情を浮かべていた。


「馬鹿な……! それは、私の能力ではない……! 一体、何が……」


ガーディアンは、動揺を隠せない様子で呟く。彼の能力である『思考の読み取り』が、咲の心から放たれる『光』によって阻害され、まるでノイズのように掻き消されていた。


「師匠……もう、あなたの思考の檻には、捕らえられない」


咲は、静かに言った。彼女の心は、かつてないほどクリアで、迷いがない。彼女の『光』は、師匠の精神波だけでなく、彼女自身の過去のトラウマをも打ち破り、彼女を解き放っていた。


その時、咲の『光』に触れた詩音しおんの体にも、微かな変化が起こる。彼女の瞳が、普段よりも鋭く輝き、レミントンM700のスコープ越しに、プラントの構造や、敵の警備兵の配置が、まるで立体映像のように浮かび上がった。


「これは……!?」


詩音は、驚きながらも、その新たな感覚に戸惑いはなかった。彼女の『光』は、咲の光とは異なり、情報やデータを視覚化し、分析する『目』の力だった。


「咲、私に、見える……! プラントの構造、警備兵の配置、そして……師匠の思考のパターンが、線となって……!」


詩音の声が、インカム越しに響く。


「よし! 詩音、お前の『目』が、俺たちの道だ!」


咲は、力強く頷いた。彼女は、もはや師匠の思考の読み取りを恐れていなかった。詩音の『目』が、師匠の思考のパターンを読み、予測することで、彼女は師匠の能力を無力化できる。


「無駄だ! そのような能力は、この世界には存在しない! お前たちは、私の能力を誤解しているだけだ!」


ガーディアンは、動揺を隠すように、怒鳴りつけた。


しかし、咲は、既に動いていた。彼女は、ガーディアンの能力の**『死角』**を、詩音の『目』によって見抜いていた。


**CQCの「高速移動」**で、咲はプラントの巨大な機械を盾にするようにして、ガーディアンの視界から一瞬で消えた。


「どこだ……!」


ガーディアンは、焦り、周囲の思考を探る。しかし、そこには、咲の思考の『光』だけが、まるで太陽のように輝き、彼の思考の読み取りを完全に阻害していた。


「ここにいるぞ、師匠!」


咲が、ガーディアンの背後から現れた。彼女は、師匠の能力の唯一の弱点、つまり、視覚的な情報がないと思考の読み取りが困難になるという点を、完璧に突いたのだ。


ガーディアンは、驚愕し、咄嗟に銃を構える。しかし、その時、詩音の声が、インカム越しに響いた。


「咲! 右に三歩、そして頭上!」


詩音は、自身の『目』で、師匠の銃口が動くコンマ数秒後の未来を予測し、咲に指示を送ったのだ。


咲は、その指示に完璧に反応し、ガーディアンの銃弾を、わずか数センチの差でかわした。


「馬鹿な……!」


ガーディアンは、信じられないという表情で、二人の連携を見つめる。彼の能力は、これまで、誰にも予測されることはなかった。しかし、今、二人の『奪還屋』は、彼の能力を、真正面から打ち破ろうとしていた。


「師匠、もう終わりだ!」


咲は、ガーディアンの懐に飛び込み、**CQCの「関節技」**で、彼の腕を捻じ伏せた。


「ぐっ……!」


ガーディアンは、苦痛に顔を歪ませる。


その時、プラントの奥から、複数のエネルギー反応が検出された。


「まずいです、咲さん! ミダス・グループの残党が、光の心臓の模倣品の活性化を始めました! このままでは、大規模な記憶操作が開始されます!」


如月結人きさらぎ・ゆいとの声が、インカム越しに響く。


「そうはさせない!」


咲は、ガーディアンを無力化し、プラントの中央へと駆け出した。その光景を、ガーディアンは、動揺と、そして微かな安堵が混じった表情で見つめていた。


(私は……間違っていたのか……)


彼は、咲と詩音の『光』が、自分の能力を打ち破っただけでなく、彼女たちの心に秘められた、真の『力』を呼び覚ましたことを悟った。それは、彼が『光の心臓』を使って、世界を救おうとしたのとは、全く違う、温かく、そして希望に満ちた力だった。


咲と詩音は、プラントの中心部にたどり着いた。そこには、光の心臓の模倣品が、不気味な光を放っている。


「詩音、どうする?」


「この模倣品は、制御不能です。破壊するしかない」


詩音は、レミントンM700を構え、模倣品へと狙いを定めた。


「よし! やるぞ!」


咲は、詩音の言葉に力強く頷いた。


二人の『奪還屋』は、それぞれの『光』を、そして『絆』を信じ、闇の核心へと迫る。


二人の『奪還屋』は、師匠の遺志を胸に、世界の未来をかけた最後の戦いへと、再び足を踏み入れていく。

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