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第百二話「記憶の砂浜」

光の『道筋』をたどって、咲、詩音、リノの三人は、嵐太の記憶の中に存在する砂浜に降り立った。そこは、現実の喧騒から隔絶された、静かで穏やかな場所だった。


「ここが……嵐太の記憶の中にある、砂浜……」


咲は、目の前に広がる景色に、思わず息をのんだ。波の音だけが響く静かな砂浜には、幼い嵐太が妹と二人で作ったであろう、小さな砂のお城が、完璧な形で残されていた。


「すごい……。こんなに綺麗なまま残っているなんて……」


詩音は、そう言って、砂のお城にそっと触れた。しかし、その砂は、触れるとすぐに、光の粒子となって消えていった。


「やっぱり、これは嵐太の『記憶』なんだ……」


リノは、悲しそうな顔で、そう呟いた。この砂のお城は、嵐太の『護りたい』という『心』が形になったもの。しかし、彼の『破壊』の『法則』によって、その記憶は、消えかかっているのだ。


「嵐太……! どこにいるの!?」


咲は、そう叫びながら、砂浜を走り回った。しかし、嵐太の姿は、どこにも見当たらない。


「咲、落ち着いて! 嵐太の『心』の『光』は、ここにある。きっと、この砂浜のどこかに、嵐太がいるはずだよ!」


詩音は、そう言って、咲の手を優しく握った。咲は、詩音の言葉に、少しだけ冷静さを取り戻した。


「リノちゃん! 嵐太の『心』の『光』を、道筋にして!」


「うん! 分かった!」


リノは、そう言って、目を閉じた。彼女の左腕から、淡い光が放たれ、砂浜に、光の『道筋』が姿を現した。


光の『道筋』は、砂浜を横切り、やがて、小さな岩場へと続いていた。三人は、その『道筋』をたどって、岩場へと向かった。


岩場には、一人の少年が、うずくまっていた。彼は、幼い頃の嵐太だった。


「嵐太……!」


咲は、そう叫びながら、少年に駆け寄った。しかし、少年は、咲の存在に気づかないかのように、うずくまったままだった。


「お兄ちゃん、お兄ちゃん! ほら見て! 嵐太が作ったこのお城、すごいんでしょ!」


幼い嵐太は、そう言って、自分の作った砂のお城を、嬉しそうに見つめていた。しかし、そのお城は、今にも崩れそうになっていた。


「くっそー! なんでだよ! 俺が作ったお城なのに、なんで崩れそうなんだよ!」


幼い嵐太は、そう叫びながら、砂のお城を叩き壊そうとした。しかし、その手を、咲が優しく止めた。


「やめて! 嵐太! そのお城は、あなたが護りたいと願った、大切な思い出なんだよ!」


咲は、そう言って、幼い嵐太の顔を見つめた。幼い嵐太は、咲の言葉に、ハッと息をのんだ。


「お前は……誰だ……!?」


「あたしは、未来のあなたを助けに来た、奪還屋の咲だよ!」


咲は、そう言って、満面の笑みを浮かべた。幼い嵐太は、咲の言葉に、戸惑った顔をした。


「未来の俺……? 奪還屋……?」


「うん! あなたは、自分の『護りたい』という『心』を、『破壊』の『法則』に閉じ込めている。だから、あたしたちが、あなたの『護りたい』という『心』を、『奪還』しに来たんだよ!」


咲は、そう言って、幼い嵐太の手を強く握った。幼い嵐太は、咲の言葉に、少しだけ涙ぐんだ。


「俺は……、俺は……護りたかったんだ……。このお城を……、そして、妹を……」


幼い嵐太は、そう言って、泣き出した。咲は、幼い嵐太を優しく抱きしめた。


「大丈夫だよ、嵐太……。もう、大丈夫だから……」


咲は、そう言って、幼い嵐太の背中を優しく撫でた。詩音も、リノも、その様子を温かく見守っていた。


その時、幼い嵐太の背後から、黒い影が現れた。それは、嵐太の『破壊屋』としての力だった。黒い影は、幼い嵐太を、そして、砂のお城を、破壊しようとしていた。


「くっそー! なんでだよ! 俺の力なのに、なんで俺を苦しめるんだよ!」


幼い嵐太は、そう叫びながら、黒い影から逃れようとした。しかし、黒い影は、幼い嵐太を追い詰めていく。


「やめて! 嵐太をいじめないでよ!」


咲は、そう叫びながら、黒い影に飛びかかった。しかし、黒い影は、咲の体をすり抜け、幼い嵐太に襲いかかった。


「駄目だ……! 咲の力は、物理的な攻撃にしか効かない……!」


詩音は、そう言って、絶望的な顔を浮かべた。その時、リノが、幼い嵐太の前に、立ちふさがった。


「嵐太! わたしが、『護りたい』という『心』の『光』を、あなたに届けます!」


リノは、そう叫びながら、幼い嵐太に向かって、全力を込めた『道筋』を放った。リノの『道筋』は、幼い嵐太の心の中に、温かい光を届けた。


「な、なんだ……!?」


幼い嵐太は、リノの『道筋』によって、自分の心の中にある『護りたい』という『心』の『光』を感じた。それは、彼がずっと忘れていた、温かい光だった。


「俺は……、護りたいんだ……! このお城を……、そして、妹を……!」


幼い嵐太は、そう叫びながら、黒い影に向かって、全力を込めた一撃を放った。しかし、それは『破壊』の力ではなく、『護り』の力だった。


「な、なんだと……! 馬鹿な……! 俺の『破壊』の『法則』が、効かないだと……!?」


黒い影は、嵐太の『護り』の力に、驚愕に目を見開いた。嵐太の『護り』の力は、黒い影を打ち消し、砂浜全体に、温かい光を広げた。


「嵐太……!」


咲は、そう言って、幼い嵐太を抱きしめた。嵐太は、咲の腕の中で、静かに、そして安らかに眠りについた。

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