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第1話「無音の引き金」


東京の夜は、まるで呼吸を止めたかのように静まり返っていた。雑踏の音も車の走る音も遠く、どこか現実から隔絶された空間が広がっている。そんな街の片隅にひっそりと佇む小さなバー『RETRIEVER』。扉の向こう側には、裏社会に生きる者たちの秘密が集約されていた。


そのバーの入り口を開けて入ってきたのは、身長147センチの小柄な女性、さき。黒いショートヘアに鋭い瞳。彼女は奪還屋――失われたものを取り戻すために戦う者だ。今夜もまた、命をかけた依頼を受けていた。


「遅かったな、咲」

カウンターの奥から現れたのは、情報屋の如月結人きさらぎ ゆいと。長身でクールな表情の男だ。彼は街の情報を束ね、咲に有益なデータを提供する役割を担っていた。


「今回の依頼、詳しく教えてくれ」

咲は黙って頷き、小型のデバイスを取り出す。画面には怯えた少女の映像と、彼女の状況が詳細に記されていた。


依頼内容は――「声を奪われた少女」の救出だった。


少女は、声帯を破壊されて話すことができなくなっていた。

事件は裏社会の闇組織『Voice Sinker』によるもので、音を武器にする異能者たちが背後にいるという。


「警察じゃ太刀打ちできない相手だ。奴らは音を自在に操る異能者を抱えている」

如月の言葉は重く、緊張を孕んでいた。


そのとき、店の隅から静かに足音が近づいた。銀白色の長髪を持つ女性、鳴瀬詩音なるせ しおんが姿を現す。彼女は冷静沈着な非殺傷狙撃手であり、咲の最良のパートナーだ。


「全て非殺傷装備で揃っている。長距離用のレミントンM700、中距離のP90、近距離のCZ75――すべてゴム弾仕様だ」

詩音の声は無感情に聞こえたが、その眼差しは揺るがない決意に満ちていた。


「殺す必要はない。相手を止めるだけで十分だ」

咲は詩音の言葉を胸に刻み、依頼の現場へ向かう覚悟を決める。


彼女たちが向かうのは、都内の廃墟と化した地区『MUTE ZONE』。音が遮断されたかのように静まり返り、足音すら聞こえない異様な空間だった。ここでは声を出せば即座に敵の標的となる。


咲は身のこなしを最大限に活かし、狭い路地を音を立てずに移動する。合気道の技で相手の動きを利用し、音を出さずに敵を制圧する。


詩音は遠くの屋上から狙撃銃を構え、必要な時だけ非殺傷の麻酔弾を発射。無音の銃声が闇に溶けていく。


進むごとに敵の強さが増し、ついに現れたのは音波を操る異能者「ユグ」。彼は高周波の音波で攻撃し、二人を追い詰める。


咲は激しい振動に耐えながらも、合気道の技で攻撃をかわし、反撃の隙を探る。詩音は狙撃銃で精密射撃を続け、麻酔弾でユグの動きを鈍らせていく。


壮絶な戦いの末、少女の声は奪還される。咲は少女の手を握り、静かに誓った。


「奪われたものは、必ず取り戻す」


夜空の星が二人の上に輝く中、咲は呟いた。


「無音の引き金は、静かに真実を撃ち抜く」

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