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第十二話 愛の旅

「これで設置はできたと思われます」

 一ヶ月ほど経ってからディランがあたくしの部屋に装置を作ってくれた。

 大きな姿見の鏡で、ボタン一つで色んな場所と繋がって鏡に映し出している。

 そのボタンがついたネックレスを受け取った。


「もうすぐこのルートは他国がこちらに攻めてくるときに使う道なので、使わないでくださいね。

 貴方がこのネックレスに祈れば、座標を僕が覚えてそこに飛ばすこともできます」

「座標さえあればいいの? あたくしが祈れば、その場所が貴方の脳内に?」

「そうです。そして帰還も、その十字の片方を押せば、城に五分はかかるけど戻ってこれる」

「分かりました、旅の準備はしてありますわ。リリーナ! あとのことはお願いね」


 姿見の鏡を見てリリーナはハムスターによく似た小動物さを思い出させる涙目でぷるぷると震えて膨らんだ口もとをすぼめた。

「やっぱりやめましょうよ、姫様! 後が怖いですって!」

「スリルがあったほうが人生は楽しいのよ、あたくしはあたくしを助けてくれたシャルルのために頑張りたいの」

「……ひめさまあ」


 両手を握って祈るようなリリーナにリュックを持ってきてもらい、あたくしは事前に作っておいたいつものヘアと違わないかつらをリリーナに託す。

 あたくしは姿見の鏡に映った自分を見て、髪の毛をばっさりと切っていく。

 旅路は女性とばれるのは危険だから、男装をしていこうという話になったの。

 男としての名前は、ルル。がたんと扉が揺れ、一気にディランが警戒する。

 扉が開けばアルティスが旅の準備を完了していた。


「待っていたよ! この日の到来を! さあ今こそ大冒険だ!」

「えっ、アルティスもきますの?」

「当たり前だろう! グルメ温泉ぶらり旅までお任せの俺というガイドなくして世界はまわれませんよ!

 ポロリもおまけします!」

「困ったわ何を言ってるか全然わからないの」

「とにかく! 旅にはガイドをつけたほうがいいですってこと! 今まで温室にいた箱入り娘が突然旅なんて無茶でしょう!」

「……それは、そうね。ディラン、アルティスのぶんのネックレスあるかしら」

「あります、ではこれを。ロゼット様をお願いしますね。この方だけが今の僕の希望だ」

 アルティスはネックレスを受け取れば即座に首にかけて、わああいとにこやかだ。

 ディランは気配を探り、シャルル様の行動を読んで門限を決めようと目を瞑っている。


「そうですね、日が暮れる頃には絶対仕事は終わらせてますあの方はあれでも優秀ですから。

 なので日が暮れる前には絶対帰ってきてくださいね」

「分かったわ」

「いい? アルティス、貴方が姫様の盾となるのよ。鉄砲玉が流れてきたら喜んで当たるくらいの意気でいなさいよ!」

「分かったよ任せ給え! 姫様、ネックレスに鈴つけていい? なくさないための」

「勝手になさい。それじゃ行ってくるわ、まず最初にインリイ王国を探してみようと思うの」

「ああ、あの港町が盛んな国ですね」

「うん、ここからまず一番近い国なら安心でしょう?」

「では許可証はこれです、ルルの名でとってあります。アルティスの分はこれはありません」

「大丈夫、俺はどの国もフリーパス。顔が広いもんでね」

「さすが世界を股にかける詩人様。行きましょうアルティス」

「いってきまあす! お土産はやっぱり干物かな!」

「観光するわけじゃないでしょう!? 姫様ッくれぐれも、気をつけてください! お願いしますね!

 魔女様の特徴は、ブロンド赤目です!」


 あたくしはにこりと微笑むと姿見の鏡にチャンネルを合わせて、その中へ飛び込んだ。

 港町が姿見の鏡に映ればそれがまるでそのまま扉のように通り抜けられて、後ろを振り返ればみんながいなくなるのだから、すごいわ。

 アルティスが少し遅れてやってくる。

 アルティスは港町の潮風を胸いっぱい吸うと、さて、と荷物片手に腰を叩いた。


「さあ愛の旅を始めよう!」


 貴方が言うと語弊が生まれそうだからやめてほしいな、って思うの。


 

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