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166.『大剣豪』戦・後編

 同調法を使えば押し切れる。

 そんなハッチェマヒオの思惑は外れることになる。


(流石は『大剣豪』。一筋縄ではいかないか)


 同調法を使った、ハッチェマヒオの攻撃。その威力と速度を、どうやら『大剣豪』は学習したようだった。

 攻撃を与える度、時間を経るに従って、的確に対応してくるようになった。

 このままでは、遅かれ早かれ、完璧に対処されてしまうだろう。

 しかしハッチェマヒオは焦らない。

 ハッチェマヒオは、以前にバジゴフィルメンテと戦った際に、既に同調法を対処される事態を経験している。

 その経験から、『大剣豪』が対処してくるであろうことは、予想済みだったのだ。


(ここからが、僕様の真価が問われる)


 単に同調法を使うのでは、『大剣豪』に勝てない。

 その事実を前に、ハッチェマヒオは打開する方法を考え始める。

 同調法を維持するためには、ハッチェマヒオは『斧術師』に体を預け続ける必要がある。

 そのため『斧術師』の行動から外れるような手段は選べない。


(バジゴフィルメンテ式なら、ありとあらゆる手段が取れるのだろうがな)


 ハッチェマヒオは、その自由度こそがバジゴフィルメンテ式の真骨頂なのだろうなと考えつつ、参考にならないと判断した。

 それならばどうするかと考えていたところで、『斧術師』が行動パターンの中で珍しい仕草を行った。

 ハッチェマヒオは、その動きを完璧に把握していなかったため、同調法を切って『斧術師』に体を動かすままにさせた。

 そのとき、不思議な現象が起こった。

 同調法を切ったことで、『斧術師』の攻撃の威力と速度が低下した。すると『大剣豪』が、防御に合わせようと剣を構え、少し間を置いてから斧と剣が衝突した。

 この『少し間を置いて』という部分に、ハッチェマヒオは引っかかりを覚えた。


(間を置いていた時間があれば、防御じゃない行動を『大剣豪』なら取れたはずだ)


 例えば、剣を少し引いてから前に突き出すことで、斧を弾くことが出来ただろう。

 しかし現実は、少し時間を置いてでも、『大剣豪』は防御を選択した。

 この不可解な現象の原因について、ハッチェマヒオは閃きをもって悟った。


(そうか。『大剣豪』は同調法の威力と速度を学習した。その学習した速度を参考にした最適最善の動きを選んだから、僕様が同調法を切って『斧術師』の動きが遅くなったことで、行動に狂いが出たのか)


 前提条件が少しでも変われば、最適最善の動きは変わるもの。

 だから相手が次の動きを決定した後に、ハッチェマヒオの行動が変われば、相手の動きは最適最善ではなくなる。


(だが、狙ってやるには、なかなかに難しいぞ、これは)


 それはそうだろう。

 『大剣豪』が行動を決定するのは、ハッチェマヒオが動き出した直後だ。

 つまりハッチェマヒオは、『大剣豪』の行動の裏をかこうとしたら、動き出した後で再び行動を変える必要がある。それも『大剣豪』に変化した行動を悟られないためには、微妙な変化に収める必要すらある。

 無理難題に感じる前提条件だが、既にハッチェマヒオには光明が見えていた。


(先ほどのように、行動の途中で同調法を切ったり、あるいは同調法を行ったりすればいい)


 この方法なら、行動の途中で急に威力と速度を上下させることが可能だ。

 そうと分かったのならと、ハッチェマヒオは行動に移ることにした。


(同調法を行うか否かは、僕様の意識次第でどうにでもなる)


 それこそ斧と剣が打ち合う直前に、同調法を切ったり行ったりすることだってできる。

 そして『大剣豪』は、ハッチェマヒオが同調法を使っているか否かを、その動きから判断することができなくなる。

 同調法を使っていると思わしき速さで斧が振るわれていても、剣を合わせると軽い。かと思えば、次の攻撃では同調法を使った威力になっている。

 同調法を使っていない動きだったはずが、途中から急に速度を増してくる。その逆もやってくる。

 動き方自体は今までと同じなのに、速度と威力だけが可変する。

 そんな戦い方に、『大剣豪』は最適最善を旨とする天職であるからこそ、翻弄されてしまう。

 こうした状況に陥ったからか、『大剣豪』が急に攻勢に打って出てきた。


(防御すると翻弄されてしまうのなら、強引にでも攻撃に移れば翻弄されなくなる、という考えか?)


 ハッチェマヒオは、『大剣豪』の行動の思惑を、そう読み解いた。

 天職の本分は、魔物に勝つための力である。

 だから敗戦濃厚な状況になったら、生き延びるための方法ではなく、起死回生の決死の行動に打って出る。

 そういう性質があることを、ハッチェマヒオは模擬戦で何度も『斧術師』が『大剣豪』に負けた状況の中で把握していた。


(そうした無茶な攻撃をしようとしているということは、僕様の勝勢だってことだ)


 ハッチェマヒオは戦況を正しく理解し、同調法を使った攻略を進めていく。

 『大剣豪』は無理矢理に攻勢に出たが、『斧術師』の速度と威力の変化に終始ついていけていない様子のままで変えられず、攻勢が再び防御へと変化してしまう。

 ここからはもう、『大剣豪』には起死回生の手がないのだろう、無茶な攻勢に出てくることはなくなった。

 そうしてハッチェマヒオが『斧術師』と共に戦況を詰め切り、模擬戦に勝利した。

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― 新着の感想 ―
すごいなハッチャン!勝てたんだ〜!!w
今までは天職は最適最善な動きをしつつ、魔物にダメージを与えられる特性が乗るってだけだったのが、何故か力倍化の法みたいな意味不明な効能が出てきたのがハッチェマヒオ方式だからなぁ。 バジコフィルメンテは動…
大剣豪が剣聖に負けたのであれば使ってる本人は納得するだろうけど 格下である斧術士に大剣豪が負けてしまった事で使い手の心境変化はあるだろうか。 パシゴフィルメンテと違って本当にハッチェマヒオは困難だら…
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