表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界になりたかった日  作者: 花見和の如く
閑話 いつもみたいな日常
1/4

1.雪が降る夜

 あなたの知らぬ間に、時間は過ぎている。

 あなたの知らぬ間に、世界は変わっている。


 あなたはそんな世界でも、この世が好きだと言えますか?

 少し霞んだ真っ黒な夜空。賑わう夜の商店街。


「私、好きな人がいるの」


 僕に対して目を背ける君は、申し訳なさそうに呟いた。


「……そっか」

「ごめんね!」


 間髪入れずに出す君の明るい声も、どこか弱くて。

 僕の口はそっか、という言葉を繰り返す。


 君はまた俯く。少し困ったように辺りを見回す。

 辺りの雪は積もることなく、街の風景に彩りを添えていた。

 やがて君はまた僕を振り向き、今度は作ることなく、優しく言葉を放つ。


「……ね」

「……?」


「ちょっと今から、一緒に行きたい場所があるんだけど」


 少し戸惑う。そんな僕の手を、君が引く。

 君に引かれて歩くこの街は、いつもよりも美しくそう見える。

 まだ戸惑う。そんな僕に構わず、君は口を開く。


「ね、さ」

「……何?」


「雪って、綺麗だよね」

「……。うん、」


「よくお父さんお母さんから、昔はもっと降ったのにねぇとか言われるけど……やっぱり私、もうちょっと昔に生まれたかったなぁ」

「……そっか」


「ほら、雪だるま。とか。絶対可愛いもん。……作りたかったなぁ」

「…………」


 最近の日本で、雪なんか降りっこない。

 それは地球が温暖化してるとか、そういう理由ではないように思えるけど、なぜか、降らなくなった。

 昔は北陸だとか、北海道だとかだと本当に、異常な程に降っていたらしいのに、そのような地域差もなくなって。今の日本は本当に、降るとしてもこれくらい。降るのは大体、一年に一回あるかどうか。


 でも、だからな気がする。僕に雪が綺麗に映るのは。

 ここまで貴重だから、その貴重な雪が綺麗に見えるのだ。


「……そう、だね」


 小さな柔らかい雪は、まだ降り続ける。

 その雪は、とても「青かった」。

 次気がついたとき、僕は真っ暗闇の中にいた。

 そこにあるのは虚無で、動こうとしても動けないそんな空間。

 気付いた。ここには僕がいないということに。


 ……。え?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ