魔王の呪い
注意書き:魔王が悪魔の夢の中に現れるシーンがあります。悪魔役と魔王役は1人2役の掛け合い。人間の女役が演じるのも可能
0:異質な空間で悪魔は目を覚ました。
悪魔:「ここは……?」
魔王:「ようやく気づいたか……待っていたぞ……」
0:悪魔の目の前には自分と同じ顔をした何者かが立っていた。
悪魔:「お前は誰だ。どうして俺と同じ姿をしている?」
0:間
悪魔:「なぜ何も答えない?」
魔王:「お前はどうして人間と一緒に暮らしているんだ?」
0:間
悪魔:「? 死にかけたところを助けられたからだ」
魔王:「怪我が治ったのだろう? 人間からは離れればいい」
悪魔:「酒瓶の弁償をしなければいけなかった」
魔王:「もう返済しただろう?」
悪魔:「ああ」
魔王:「お前は悪魔だ。闇から生まれし、呪われた命」
魔王:「お前もいつか忌み嫌われ人間に殺される」
悪魔:「そんなことはない」
魔王:「勇者は魔王を殺しただろう?」
悪魔:「魔王は関係ない……魔王は人間たちを苦しめた! 自業自得だ!」
魔王:「人間は悪魔を嫌う。悪魔を殺す。お前は悪魔というだけで殺されそうになった」
悪魔:「は?」
魔王:「思い出せ! 思い出せ! 思い出せ! お前は人間に殺されそうになった」
悪魔:「違う! 俺を殺そうとしたのは同じ悪魔だ!」
魔王:「思い出せ! 思い出せ! 思い出せ! お前は人間に殺されそうになった!」
悪魔:「俺は………人間に殺されそうになった?」
魔王:「何も悪を働いてないのに関わらず、人間はお前を殺そうとした!」
悪魔:「何もしてないのに?………何も悪いことなんてしてないのに!」
魔王:「お前は人間に殺されそうになった。お前は人間に何をする?」
悪魔:「人間を…………殺す!」
魔王:「そうだ! 闇から生まれし我が息子よ! 人間を殺せ!」
魔王:「…………………父である我は勇者に殺された。全ての悪魔は我の仇を討て」
0:朝になり、人間の女は目を覚ました。
人間の女:「あれ? マー君?」
0:悪魔はどこにも居ない。
人間の女:「マー君?」
0:人間の女は寝巻きのまま外に出る。
0:悪魔は家に居なかった。バンダナが悪魔のベッドの横に落ちていた。
0:外で悪魔の姿を見つけた。
人間の女:「マー君!」
悪魔:「お前……」
人間の女:「マー君、血! 怪我!?」
悪魔:「返り血だ………」
人間の女:「え?」
0:間
人間の女:「どうして………?」
悪魔:「俺は………」
0:人間の女は道端に倒れている男を見つけた。背中には包丁が刺さっている
0:その男は顔見知りどころではない。
人間の女:「店長!」
0:人間の女は倒れてる店長に駆け寄る。
悪魔:「俺が殺した…………」
0:人間の女はあたりを見回した。
人間の女:「え……?」
0:あたりには倒れた村人たちの姿がいくつもあった。
人間の女:「どうして!? マー君! どうしてみんなをこんな目に!」
悪魔:「分からない………命令された。人間を殺せと!」
人間の女:「一体誰から………?」
悪魔:「魔王だ………全ての悪魔は魔王によって造られた………。死してなお、悪魔達を支配する……」
人間の女:「私はどうして生きてるの? あなたの隣で寝ていた。一番最初に殺せたじゃない」
悪魔:「目が覚めて、隣のベッドで寝る姿を見て、俺はお前を殺そうとしたよ。なんとか耐えて家を飛び出した……外には人が沢山いた……その人達を俺は次々殺していった……!」
0:間
悪魔:「ああ、これが俺の本当の姿なんだ……」
人間の女:「………して」
悪魔:「………え?」
人間の女:「私を殺して」
0:人間の女の声は震えていた。
悪魔:「…………どうしてだ……?」
人間の女:「私への罰よ。人を殺した悪魔を引き入れた罪で、村で罪人として死刑になるの」
人間の女:「私、あなたを最初に助ける時に村長と契りを結んだの。あなたの正体を隠して村に置く代わりに、あなたの村での行動の責任は、私が取るって」
悪魔:「俺に罰せと言うのか!? 俺のせいなのに!」
人間の女:「お願い。私はこの責任をとらなきゃいけない………」
0:間
人間の女:「あなた、私が目の前に居て、その殺人衝動を抑えてるんでしょ? あなたならできる」
悪魔:「ううう………!あああ!!!」
0:悪魔は人間の女を包丁で突き刺した。
人間の女:「あ…あ……(痛みの演技)」
0:人間の女は倒れ、出血していく。
0:横たわり、音にならない声で人間の女は口を開いた。
0:悪魔にはこう言ってるように見えた。
人間の女:「あ……いしてる………!」
0:悪魔は人間の女の絶命を見届ける前に歩いて行った
0:人間たちは羊のツノの悪魔を指名手配した。
0:遠い地の荒野を悪魔は歩いていた。
悪魔:「俺もお前を愛していたよ………」
悪魔:これはバッドエンドではない
悪魔:取り返しのつかない罪を犯しても、一生は終わらない
悪魔:これは一匹の悪魔の償いの物語
0:続く