深刻そうな帝国事情~なのにマーメイドは楽観的~
「率直にお聞きしますね。他でもない、手紙の内容のことです。ご先祖様の仲間が『マーメイドにヤベエ帝国を見張らせてるから現状どうなってるか聞いてみろ』みたいなこと書いてたんですよ。もし本当に動向を監視してるなら、ぶっちゃけどうなのかなって」
セージはエアルウィンへと切り出す。
現在は『王の間』と呼ばれる部屋に二人きり。
というのも、『間延び口調で言われてもシリアス感が薄れるな』というセージの考えからだった。
「はい陛下。こちらも率直に申し上げますと……危急の事態に近いです。ぶっちゃけ国力を回復してきて、今にも他国侵略に乗り出そうとしております」
エアルウィンはなぜか、ニコニコしながら言う。
さらにはセージの発言の『ぶっちゃけ』という言葉にものっかる。
丁寧な口調は外交関連と、王という目上の存在のせいかもしれない。
どうやら初回に見せた茶目っ気が、このマーメイドの素のようだった。
「そうですか、もうすでに他国侵略を目論んで。それはヤバ──は!?」
「チフユ様に申し付けられて大事なお役目として代々監視して参りましたが──そろそろ海を越えて進軍してきそうな勢いです」
「……いやちょっと待ってくださいよ。思ったより余裕がなさそうなんですけど! なんでそんなニコやかに深刻そうな内容を告げられるんですか!?」
「いえ……他ならぬ陛下のお力なら帝国など余裕で降せるかと。海で例えるなら、いわゆる雑魚かなと思いまして」
「雑魚て!! 俺をかいかぶり──クソ、初対面の知的っぽい雰囲気に騙された!! あ! その言い方エセ双子と同じだわ!! 所詮はエアルウィンさんもエルフってことか!!」
「はい、エルフでございますよ。他の種族同様、陛下に心酔して全幅の信頼を寄せております」
「エルフの信頼重っも!! 冒険者時代でも海の向こうの情報は無かったし……。いくらエルフが戦闘民族とはいえ、手紙内容的に相手はいかにも手強そうな雰囲気なのに……!」
「えっ?」
セージの言葉に不思議そうな声を出すエアルウィン。
「ん?」
そして二人して首を傾げる。
「あの……エルフは全種族、帝国民と戦えませんが……。チフユ様はお書きになってませんでした? セイヤ様の時代ですでに、なんというか、呪いのような制約がかけられてまして……」
「なん……だと……。そんなの一言も書いてませんでしたけど。確かに『エルフを守ってやってくれ』とは書いてました。でもそれって、比喩じゃないんですか? 旗印としてエルフを率いて帝国に抗えってことなのでは」
「いえ、お言葉通りです。陛下、我々を守ってください。ご協力はいくらでもできますが、帝国との直接戦闘は無理なんです」
「はぁ!? それじゃあアレですか! 下手するとエルフ抜きのヴァンデリア王国だけで帝国と開戦しろと!? エルフに容易く滅ぼされるレベルの国と、運命を共にしろと!?」
「あ……いえ……非常に申し上げにくいのですけど……ヴァンデリアの弱腰外交の国王が戦争に参加するとは考えにくいかと……。なにより、あの国はエルフと関わりたくなさそうですし」
「!? ちょっと待ってくださいよ! 相手は国家ですよ!? こうなったらギルド……ダメだ、戦争に関しては不戦条約があるわ。しかも、ご先祖様と違って俺にはチート持ちの仲間すらいない。え! 俺一人対帝国ってことですか!?」
「他ならぬ陛下のお力なら帝国など有象無象。雑魚同然ですよ」
「それさっきも聞きましたよ! もはや、遠回しに俺に死ねって言ってるのでは!」
「大丈夫です。万が一もございませんでしょうけども、もしも陛下が討ち死になさったら──全エルフが陛下の後を追いますので」
「責任重っも! 全エルフの命がかかってるて何それ! 全然大丈夫じゃないし! 俺、ウカウカ死ぬことすらできないのかよ!!」
「陛下。この時のためにシーエルフは応援部隊を用意してございます。マーメイド以外で呼ばれているシーエルフの別名──ご存じではないですか?」
「応援部隊って言われましても……。仮に支援魔法や兵站の用意があっても単騎には変わりないんでしょ? マーメイドの別名……ええと、確か船乗りから聞いたことがあるような。……【セイレーン】ですか?」
「おっしゃる通りです。我々は戦闘力こそ低いものの、歌を得意としております」
「!! 確か魔性の歌声で海へと誘うという、あの! そうか! 海戦に持ち込みさえすれば、帝国兵を海に沈められるのか! そうなると……いかに相手を海の戦いへと誘いだせるかが、勝利の鍵に──」
「えっ?」
「ん?」
再び傾げられる両者の首。
またも、考えの行き違いがあるらしい。
「そのような恐ろしい力はございませんよ? その噂はシーエルフの工作員による、他種族への牽制です。侮られて攻められないための。応援は文字通り、陛下への応援です。すでに陛下専用の応援歌を作っておりまして、後方から歌で励ますのです」
「もう言っちゃいますけど、エルフ役立たずじゃないですか。むしろ想像するだけでシュール過ぎなんですけど。帝国軍団対俺一人。俺の後方では歌の応援のみ。なんですかそれ。そんな、子ども向けのヒーローショーじゃないんですから」
「陛下は全エルフのヒーローです……!」
「そういう意味で言ったんじゃないんですけどね。そうか、この世界は俺のことが嫌いなのか。エルフ美女達に言い寄られる代償に爆発でもしろと。なんだろうこれ。フォレストエルフを中心に普段は全方向へケンカを売ってるクセに、肝心な状況では俺一人。俺ってこんな境遇を生み出すほどの悪事を働いたのかな……?」
「陛下ほど世界に祝福された存在はいらっしゃいません」
「むしろ俺ほど呪われた存在はいないとすら思えるんですが。もうちょっとこう、頼りになる支援が欲しい……」
「それなら物理的に支援できる種族がエルフ内にございますよ。お忘れですか?」
「歌とかじゃなくて物理的……? 戦えないのに? パッと思い浮かびませんね」
「エイル殿がいらっしゃるでないですか。マウンテンエルフ一同が──陛下の望む、あらゆる武器をご用意できるでしょう」
「なるほど、エイルさんは確かに聖剣マサユキのこともある。それは心強──いやいや、あらゆる武器を用意されても。使うのって俺一人でしょ? 知ってます? 人間って手が二本しかないんですよ」
「他ならぬ陛下なら──」
「エアルウィンさん。唐突ですけど、一つ聞いていいですか?」
そこで、セージはエアルウィンの発言を遮った。
水掛け論のような問答は、もうご免だとばかりに。
それは──とても穏やかな声による問いかけだった。
「はい? なんでございましょう。情報はシーエルフの武器。出し惜しみなどせず、なんでもお答えいたします」
「シーエルフの苦手なものって何ですか? 生き物でも環境でも、まあ何でもいいので」
「我々の苦手なモノ……。寒い環境ですかね。陛下にだからお話しますけど、シーエルフって、あまりに冷たい海へは行けないんですよ」
「そうですか。禁忌魔法・【冷えピッタリ過冷却】」
「き、禁忌!? そ、それだけはご勘弁を──なななんですかこれ!! 寒むむいいい!!」
禁忌魔法・【冷えピッタリ過冷却】
それは生活魔法の延長線上。
食材の鮮度を維持するための冷蔵魔法・【ヒムロン】。
冷凍保存するための冷凍魔法・【キープフリーズ】。
それを応用して、始祖であるセイヤが創り上げた魔法だった。
禁忌とは言え、これはあくまでもお仕置き用。
この禁忌魔法には殺傷能力はない。
ただ──シャレにならないほど寒いのだ。
かなり強制力が強く、正気が保たれ発狂はできない。
雪山のような眠気さえ許されない。
殺傷能力なしとはいえ、食らう方としては割りと深刻な魔法である。
「ほぼ体感だけで、害も後遺症もないから安心してください。まさか──エセ双子より先にマーメイドをお仕置きすることになるとは思わなかったわ」
「すいませんんん!! 無責任に言い過ぎました!! どうかお許しをおぉおおおお!!」
「ちゃんと反省したら許してあげますよ。ただし──俺主観でね」
と、そこへ部屋の外で待機していたエセ双子が飛び込んでくる。
「セージ様! なにごとかございましたか──って、エアルウィン様っ!?」
「我が王よ! いま、エアルウィン様の叫び声が──あああぁあああ!?」
状況を目にした瞬間、二人は惨劇──これがどういう場面か悟った。
「ああ、アイナにエルフィか。ついでだし……君らも禁忌、食らっとく? 今なら魔法、安売りする気分なんだけど──」
「いいいえええええ!!」
「お邪魔しましたあああぁああ!!」
まさに無情。
エルフに刻まれたトラウマのせいだろう。
二人はお仕置きをされているマーメイドを見捨て、退却を即座に決めた。
「エイルさんか……彼女は今のところ、俺の一番の癒し。エアルウィンさんを家に招待した後は、ドワーフの温泉都市【ウフィーピラ】に行ってみようかな」
なぜかいつも名前の挙がらない存在がいる。
そう、ダークエルフのディネルースである。
フォレストエルフに比肩する、戦闘民族というせいなのか。
セージ的にはフォレストエルフに近い印象を抱いているのかもしれない。
口調といい丁寧で貴族っぽい彼女だが、セージにとってエセ双子の存在は強烈すぎた。
「そそそそれは結構ですけども! さむさむ寒い!! この愚かなシーエルフをお許しくださいませえええぇええ!!」
勇者である覇王の玉座がある【ブレイブ・パレス】。
そこに、海の一族の長の叫びが響きわたっていた。
一見するとセージが酷く見える光景だが……。
彼こそが、一番の被害者なのは間違いないのである。
※略です。
今回、投稿した理由。
それは──他ならぬ【レビュー】をいただいたから!!
現在、この作品は累計総合一位との差は
たったの「760000pt」。
もう見えてきましたね、頂が。
あと一歩のところまで来ております。
しかし、頂とは見上げるだけのもの。
そこに挑戦するのは「そこに山があるからさ」という冒険者のみ。
この更新が最後のチャンスです……。
毎度毎度、最後のチャンスですいません……。
この作品を読んで少しでも
「まぁチャンスくらい、くれてやんよ」
「ただし、やるだけだがな」
「ところで誰が更新休んでいいっつったよ?」
「お前は奴隷のように毎日投稿してりゃいいんだよ」
「執筆がんばってね!!」
と思った方は、
↓の☆☆☆☆☆を★★★★★★★★★にして、
ついでに【ブックマークに追加】と【レビュー】をお願いします。
これは、ご存じかもしれません。
レビューは【文字の制約】という厳しい条件がございます。
具体的に言うなら
【空白・改行含まない150文字以上、空白・改行含む400文字以内で入力】
という。
いやあ、厳しいですね。
それゆえ、中々いただけない。
なので、いただいたら更新せざるを得ない。
なぜなら超嬉しいから!!
あ、別に文字数を埋めるために『あああああああああああ』と150文字くらい打って、
最後に『おすすめだよ?』って書いてくれても嬉しいです。
むしろおススメすらします。
他ならぬエルフが、それで良いと言ってました。
あまりに嬉しかったのでポイント乞食からレビュー乞食へとランクアップ(という名の闇堕ち)をしてしまいました。
なにとぞお願いしますね。
そして★とブックマークを付けてくれている方。
もしくはこれからの方、いつもありがとうございます。
マジで感謝しております。
ところで、【マジ】って言葉、実は江戸時代からすでにあったそうですね。
そんな事どうでもいい?
ハイ、すいません。





