二人のリコールとは?~差し出す手紙と差し出される手紙~
「だから落ち着けよ! 【アンダリエルさんに託す二人のノルマ】が達成できたら挽回ってことで良いって言ってるだろ!」
「【ヴァンデリアへの謝罪】と【カムエンペの長の許し】が貰えたら本当に戻れるんですよね!? 嘘じゃないですよね!?」
「具体的に何日ですか!? まさか【ディネルース様やエイル様、さらには長も引き連れて、我々だけ置き去り】なんてこと、無いですよね!?」
エセ双子は必死になっていた。
とうとう里への返却を宣言されてしまった二人。
今や──というよりはリコール関連に関しては常に冗談で済まない。
しかし、冗談で済まないのは今回の件も同様。
なにせ、下手をするとマーメイド絶滅まで宣言されたのだ。
彼的には、里で少し頭を冷やしてもらおうと思った。
当初はお仕置きも兼ねての予定だった……のだが。
黙って返却だけすると──それはそれで精神を病みそうな雰囲気。
仕方なく、セージは早々に種明かしをすることにしたのだった。
最低限の措置だとはいえ、甘い話である。
「いやさすがに具体的な日数の明言は無理だろ! ──ヴァンデリアの方は向こうにも責任があるし、筋だけ通してきてくれたらいいから。それより、とにもかくにもエルフの種族間問題。俺には今回の事態がエルフ的にどれだけ重大か分からないから、フォレストエルフの長であるアンダリエルさんの指示を仰ぐこと。いつもくらいならともかく、今回は下手するとヴァンデリア滅亡どころかエアルウィンさんが自害──いや、マーメイドが絶滅の一大事だからな?」
「はぃ。そこは重々、反省しております……確かに、逆の立場でしたらフォレストエルフが絶滅してたかもしれません……普段、我々も何かと【自決】のことは申し上げているというのに……」
「ヴァンデリア滅亡はともかく、【ポロトコタム】へは近くまで来て合図を送れば問題ないと高を括っておりました……申し訳ございません……」
「あとさっきも言っただろ? 各種族のハイエルフから招待を受けた代わりに俺の村を案内はするけど、フォレストエルフと違って他の種族は長がいないんだから。引き継ぎも無しに長期間も滞在はできないって」
「それはそうなんですけどぉ……」
「そのまま捨てられないか心配で……」
「ああもうわかったよ! ほら! 本当はエアルウィンさんにお願いするつもりだった、【カムエンペ】への手紙! コレもう二人に預けとくから! これに【二人が挽回するための内容と、それが終わったら戻っていい】って意味合いの文を書いてるから、心配すんなって!」
ずっと泣きそうな顔だったエルフ二人。
だがそれを聞き、いくらか真実味を実感できたらしい。
すぐにキラキラした瞳へと変わる。
「な、なんと! 王から直々の書状を!!」
「我々も中身を拝見してもいいのですか!?」
「なんで二人が中身を見るつもりなんだよ!? お前ら宛てなわけねぇだろ!! アンダリエルさんにっつってんだろ!! ──よし、エアルウィンさんにお願いしてマーメイドの封蝋をしてもらうか。それ、信用問題ってことだから。届ける前に開いてたら……二人とも挽回どころか絶縁な?」
封蝋。
語るまでもないが、手紙に対する封の証。
要は、届ける前に開かれてないかの証拠である。
それと、出す側の立場によっては家紋を捺したりの身元証明にも使われる。
「!? 絶っっっ対に見ませんので!!」
「ぜぜぜ絶縁!? 恐ろしいことをおっしゃらないでください!!」
そして【絶縁】という新たな単語。
二人はその言葉の響きに新たな恐怖を感じた。
普通は──もはや、普通など意味のない言葉なのかもしれない。
世間において、男を振り回すのは美少女側なケースが多いハズである。
いわゆる美少女特権、とでも言ってしまえば身も蓋もないが。
「しかし──【二人以外のハイエルフを連れて帰宅】か。ふむ……」
「セージ様ッ!? お待ちを!!」
「そんな魅力的な提案みたいに検討なさらないでください!!」
「いや、ちょっと考えただけだって。さっきも事情は言ったけど、本当にそんなつもりはないよ。ただ何というか……個性こそあれど、外見が美人なのはハイエルフ全員同じじゃん? 現状、その上で二人ほど残念な人って他にいたかなって……」
「残念!? いま残念っておっしゃいました!? 我々、仮にも王族ですよ!? これでも高貴な立場なんです!!」
「こう見えて! カムエンペに戻れば『姫様姫様』ってチヤホヤしてくれるんですよ!?」
「それはあくまで立場上だろ。だから、外見や肩書きじゃなくて中身の話だよ。君らも俺を『王様王様』っていうなら、もっと平和的にチヤホヤしろよ。なんで毎度──こんな火事場みたいな所ばっかに行くハメになってるんだよ!!」
セージの言うことは至極、もっともだった。
王の立場で火中に飛び込んで行くのは──
侵略国くらいだろう。
いや、侵略国ですら王が先陣を切るケースは少ないのかもしれない。
「外見や肩書きでなく中身……っ!? これは──エルフィ!!」
「ええ!! いま、気づきました! もしや、私たち──【普通に美人っぽく振る舞えば、魅力的な女性として受け入れられる】のでは!!」
「ああ、改めて二人がアホだと認識したわ。それ、今さら言う? おかしい……他の人の証言だと、『賢く気高い姫君』みたいな評価なのに……なんで俺だけには罰ゲームみたいな感じなんだろう。というか、そんな自明の理をドヤ顔で語られると、さらに残念さが増すんだけど。『太陽が東から昇る』って話くらい当然の話じゃん。あ、そういえば、ご先祖様の世界でも太陽は東から昇ってたらしいよ。案外、世界って共通してんのな?」
「王よ! いまは太陽の話などしておりません! そんな事はどうでもよいのです!!」
「我々が子どもを無事に産めるかどうかの瀬戸際に追い詰められてるんですよ!?」
「子ども!? ちょっと待てよ! まだ始まってすらないのに、そんなこと言われても! 仮に順調だとしても、君ら何段階くらいすっ飛ばしてんの!?」
「すっ飛ばすと申しますか──」
「王の承諾さえ得られれば今すぐにでも入籍からOKなのですが」
「まだ懲りてないみたいだな。アンダリエルさんに頼むハードル、上げてもらおう」
「あぁあっ!? エルフィ! なんてことを!」
「アイナこそ! 発言の順番が違ったら同じことを申し上げてたでしょう!?」
とうとう発言の順番という配役にすら言及し始める二人。
とはいえ、すでにセージも【エセ双子】という扱いをしている。
今さらどころか、とっくに双子的なメッキは剥がれていた。
「あ、あの~……」
そして今回、当事者であるハズのエアルウィン。
なのだが、エセ双子の勢いに押され、存在感が薄れてる。
「あっ、エアルウィンさんスイマセン。決して、ないがしろにするつもりでは」
「あ、いえ~。そういうことではなくてですね~、陛下にコレをお渡ししようと~」
彼女は三人で騒いでいたことを気にしていたわけではないらしい。
控えめに声を発しつつ、ひざまずく。
そして、その懐から一つの小箱を取り出した。
その様子を見たセージは──
『はっ!? この人も【胸の谷間】から取り出さなかった!? アンダリエルさんといい──そういう決まりでもあんの!? そろそろ箱の大きさについてツッコみを──いや待て! スルー……スルーだ俺!!』
アンダリエルの時と同じである。
セージは頭を過ぎりそうになった雑念を、強制的に追い払う。
「これ、アレですよね。フォレストエルフの時と同じやつ。ただ……単に色が青いだけで、デザインが一緒というか」
内心など一切悟らせず、ごく自然な口調で彼は言った。
戦闘力ではないナニカが確実に上昇している。
「はい~、アンダリエル殿のものと同じ~──セイヤ様のお仲間である、チフユ様からのものですね~」
こうして──エセ双子へフォレストエルフ宛ての手紙を預ける前に、セージ自身がセイヤの仲間である先人の手紙を受け取るのだった。
前回までのあらすじ:
死にかけてた後書きが賢者たちによる復活の呪文で蘇生した。
そうそう、ハイファンタジーランキングで
【生活魔法はハズレスキルじゃない】というタイトルがあったので驚きました。
しかも、ちょっと冒頭を拝見したら生活魔法のせいで追放されてたという。
でもエネミーサーチとかできるんだ!?
すごい! うちの主人公、そんなんできない。
※略
現在、累計総合一位とのポイント差は「760000pt」
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あと一歩で夢だった──夢、か……。
あの、全然関係ない話なんですけど聞いてくれます?
起きる直前に夢を見てですね。
たぶん声には出てない(と思う)んですけど、その時の私のセリフが……
「すいません! 遅刻しました! アァッ!? もうバレーの試合が始まっちゃってる!! すぐに着替えを──って着替え家に忘れたああああぁああ!」
って感じで目覚めたんですよ。
私、バレーなどやっておりません。
バレーチームに所属したこともないです。
もちろんユニフォームすら持ってませんし。
こういう夢見ってなんなんですかね?
コートに潜んでいる魔物にでも惑わされたのだろうか。
いや待ってください、慌ててはいけない。
皆さんの持つ恐るべき分析力はすでに存じております。
ですが、夢分析とかしなくて大丈夫です。
なぜかというと……なんかネガティブな結果が出そうで怖いので。
常にニコニコと笑っている、そんな人に私はなりたい。
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