マーメイドも、おこだった。~やっぱりエルフには違いなかった件~
怒涛の勢いで沙汰が下ってしまった【勇者裁き】。
慌ただしくあったが、話はこれで終わりではなかった。
ヴァンデリア王国の災難はまだ幕を引いてない。
ちなみにセージ達は、もう翌日にでも帰る予定である。
「陛下! 大変です! マーメイドから苦情が!!」
「なっ!? 先日、勇者様がお住いの【エルブリッジ情報】を持ってきた者がいたと申したが、まさか──!」
「【マーメイドこと、シーエルフの仕業だった】……ようです……」
「………………。ハ、ハハハ。これは──わが国、とうとう本当に詰んだかな?」
国王は乾いた笑いを発しながら言う。
王族を中心に浸透しているというエルフ事情。
実はフォレストエルフだけでなく──各エルフも込みだった。
国王は以前、『本気でエルフが攻めてきたら人類は三日で滅ぶ』とは言った。
さすがに人類が滅ぶは言い過ぎで、それはヴァンデリア王国に限った話とする。
この際、それが本当に三日か、それとも冗談かは置いておこう。
仮に、例えフォレストエルフが単一で攻めてきたとしても……。
さすがに籠城でもすれば、それ以上は持つ。
セージは以前、フォレストエルフのみの戦力だと思っていた。
だが、国王の言うエルフとは【エルフ全種族】である。
その連合が勇者の御旗のもとに集ってしまう。
為政者にとって、これ以上の恐怖はない。
なにせ……。
正面からやり合うフォレストエルフ。
ゲリラ戦や戦術を駆使するデザートエルフ。
以前の意味不明な弓や、武器の調達はマウンテンエルフが。
そして、情報および兵站をシーエルフが担う。
この面々が一致団結してくるのだ。
戦争ともなれば悪夢でしかない。
もともと、普段から仲が良い各種族。
それが──勇者が絡むと恐るべき集団に変貌する。
【勇者とはヴァンデリア王国において、国王より立場も発言力も上である】
この言葉。
例えば──上記の連合を一つの国として捉えてみたらどうなるか。
答えは明白。
もちろんフォレストエルフ単一でもバーサーカーとして恐れられてはいる。
それが、フォレストエルフなど単なる戦力の一つに過ぎず……。
徒党を組んだ連合だとしたら。
もはや、それ以前の話になってしまう。
まず、対抗する国力としてお話にならない。
具体的には三日ならずとも、超大国でも無ければ早晩──敵対した国は滅びの一途を辿るだろう。
やらかしてしまった王太子であるマティアスの発言。
『国を滅ぼすも存続させるも、勇者様のご意向次第』
この言葉は伊達ではなかった。
なお、セージ本人には未だそこまでの実感はない。
単純に『エルフやべぇ』くらいしか思ってなかった。
さて、その当の本人は──
「さーて、帰ったら誰に来てもらおうかな? アンダリエルさんは長老の立場があるから動けないか。んー……【お任せコース】もしくは【別種族のハイエルフ】と触れ合ってみるのもいいなー」
「王よ! お許しをおおおおぉおおおお!!」
「リコールだけはああぁあああ!!」
【勇者裁き】の時に口走っていたエセ双子のリコール。
国に迫っている事態など知らず、それを検討していたのだった。
すでに二人は半泣きで足に縋り付いている。
本気なのか、ただ戒めるためだけに言っているのか。
それは彼のみぞ知るところ。
まさかヴァンデリアに対し、(勝手に)自分の傘下に入っている【マーメイドが苦情を寄せている】とは思いもしていなかった。
「ゆ、勇者様ぁあああああ!!」
そこへ飛び込んでくるヴァンデリア王。
「あれ、国王様。ノックもせず──って、そんな立場じゃないな。そんな血相を変えてどうなさいました? あ、元王太子殿下の処遇が決まりました? なにもですね、薄暗い牢屋に閉じ込めろっていうわけじゃないんです。幽閉という条件を満たすなら、別に風光明媚な──」
「ち、違うんです! それどころじゃないんです!!」
「あれ、我が息子以上に大事なことですか? そんなことって、そうそうあります? 別にフォレストエルフが侵攻してきたわけじゃないですよね?」
「国が滅ぶかどうかの瀬戸際なんです!!」
「またそれですかー。そう言っとけば俺が簡単に動くと思われても困りますよ。前回までの件は本来、例外で──」
「そうではなく! マ、マーメイドです、マーメイド! お心当たりはございませんか!?」
「って、え……? マーメイド? フォレストエルフでなく? いや、そりゃ知り合いにマーメイドはいますけど。それがどうしました?」
「先日の勇者様に対する領主の横暴に対し、『我らが王になんという不遜な振る舞いを!! これは全エルフへの宣戦布告と取ってもよろしいですね?」』というメッセージが……」
「んんん!? 宣戦布告!? え、なんで!?」
セージはマーメイドの諜報員を使う際、ウッカリ忘れていた。
かつてダークエルフであるディネルースが語った言葉を。
その言葉とは──
『平時はフォレストエルフみたく、さすがに歩きながら全方位にケンカを売るマネまではいたしませんわね。あ、王が絡めば話は別ですけども』
これである。
これに近い発言はドワーフのエイルもしている。
『もしも今の発言を覇王閣下以外が行った場合──それを聞いたエルフは総力を持って相手を叩きのめすのであります……!』
この時の話の対象は【セイヤの魔法】についてのコメントである。
しかし、現勇者で王のセージが例外であるハズがない。
そしてマーメイドのエアルウィン。
先の二人のような、自ら戦争を仕掛けるような発言こそしてはいない。
しかし──セージの不興を買った場合は、自らの首を差し出そうとするほどだ。
方向性はそれぞれ違えども、過激さは同じ。
それが、エルフという種族。
「どうやらヴァンデリア担当のマーメイドから、あちらの首都【ポロトコタム】へ詳しい情報が行ってしまったようです……。こちらの返答次第では、【マーメイドが中心になって各種族へ通達する用意がある】と……」
マーメイドから各種族への通達。
他ならぬ、王のための一斉蜂起だった。
具体的にセージが受けた仕打ちを聞いたら……。
異を唱える種族などいないだろう。
「ええぇえええええ!! エアルウィンさん行動メッチャ早くない!? これはさすがに──迂闊にマーメイドを使ってしまった俺に非があるな。国王様、すいません。さすがに今回は勇者案件っぽいので、何とかしてみます。取り急ぎ手紙──は、下手すると逆にこじれる可能性もあるかな……? そうだ、マーメイドの長のエアルウィンさんに『セージが自分から説明しに行くって言ってるから、ちょっと待ってて』って使者を立ててくれません?」
「よ、よろしいのですか!? さすがに此度の一件で、勇者様を侮り気軽に使い過ぎたと反省していたのですが……」
「それとこれとは話が違いますし、強制じゃなく俺が自分から動くんですからいいですよ。それより、早く使者を向かわせたほうがよいのでは? 各種族の具体的な戦力って俺、知りませんけど……なんとなく、方針を決めてしまったら動きが早い気がしますし。あ、そうだ二人とも」
と、そこでセージはエセ双子に声をかける。
急にお声がかかり、二人はビクリとした。
「な、なんでしょうか」
「リコール以外でしたら何なりと」
「大体でいいんだけど、エアルウィンさん──マーメイドが本気を出して全エルフに号令を発したら、どれくらいの期間で集結、それから行動に移せるかわかる?」
「はい。エルフは各種族共通の情報網がございますので、どの種族が伝達するにせよ伝わるのは一瞬。比喩ではなく、遠方でも情報共有が出来るものとでも思っていただければ」
「集結と国攻めの実行動は連動しております。ですので──【各エルフの都市から現場までの距離】が集結にかかる時間であり、集った瞬間が行動の始まりです」
「マジで!? 現地集合とかアリなのかよ!? 一瞬で伝わる情報網とかいうのは気になるけど、それは今はいいや。二人とも、マーメイドの首都【ポロトコタム】へ道案内ってできる?」
「お任せを!」
「全力でお連れします! エルフハーブも使いませんし、お役に立ってみせますので!!」
「よし。じゃあ帰宅予定から行先変更。各種族の首都に行く約束も皆さんとしちゃってるし、それを果たしつつ停戦のお願いをしてくるか。ってことで、とりあえずリコールは保留で」
「本当ですか!?」
「ありがたき幸せ!! 王のために誠心誠意尽くします!!」
「あ、国王様。エアルウィンさんへの使者もですけど、俺の村にいるキサラギさんにも伝言をお願いできません? 『ちょっと帰りが遅くなりますけど、お土産もって行きますね。毎度すいませんが、サスケのことを見てやってください』って」
セージの言葉に、国王は神妙に頷く。
「必ずや。勇者様、このたびは──」
「謝罪や感謝はもういいですから。伝言と移動手段だけ用意してくだされば今回は文句もありません」
こうして、妙な流れからマーメイドの首都への遠征が決まったのだった。
※相変わらずです。
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