婚約破棄という名の悲劇にして喜劇~エルフは観客~
「カタリナ! お前との婚約を破棄する!」
「そんな!? マティアス殿下!! なぜですか!?」
「このレナから話は聞いた。カタリナ……彼女を陰湿にイジメていたそうだな?」
「うぅっ、マティアス様……」
「そのようなこと! あ、あんまりです!! それに、よりにもよって勇者様へのパーティの中で婚約破棄など──」
王国を挙げてのセージへの謝罪パーティ。
なのだが、その最中、唐突な出来事が起こっていた。
「セージ様、あれは……?」
「我が王には無害そうですし、我々はどうでもいいですが……意味不明ですね」
エセ双子は心底、不思議そうにしていた。
「ああ、あれはね。多分──俺たちを楽しませるための寸劇だよ。ほら、【謝罪パーティ】だなんて、大それた事をやってくれてるし。ああやってね、王家の滑稽さなんかを演出して、謝辞を示してるんだと思う。国王様という方は……土下座のことといい、王なのに腰が低すぎるというか。そこまで王家の面子を損なうマネなんて、しなくてもいいのにな?」
『まったく、相変わらず気遣いの過ぎる国家元首だなあ』
そんな感想を胸に、セージは『やれやれ』と肩を竦めた。
王族がここまでやるのは過ぎた謝罪だと、感じはする。
だが、催された以上は素直に楽しむのが礼儀か、とも。
「な、なるほど」
「人間の国の謝罪習慣とは変わったものなのですね……。えっと、とりあえず滅ぼしておきます?」
さすがの二人も目を丸くしていた。
特に武に訴える場面でもなし。
なのに、とりあえずで【ヴァンデリア滅亡】を提案するエルフィ。
ここは普通、単純に驚いておくだけの場面だ。
セージの言う、バーサーカーの面目躍如だった。
「いやいや。人間の習慣というよりは、王家独特なんだと思うよ。あとエルフィ、ついでで国家滅亡を提言してくんのマジやめろ。現にほら、二人とも国王様の様子を見てご覧。恐らく、ニコニコしてるか苦笑いしてるか──あれ? なんか……顔色、真っ青だな」
『国王様ご自身の催しものなのに、何か不手際が?』
セージは、段取りに不都合でも生じたのかと思う。
そういえば、事前説明が別段あったわけでもない。
なにより、彼にはこういった寸劇の成否などわからない。
そういう想いから国王の方に疑問の目を向けていると。
その視線に気づくヴァンデリア王。
すると、セージに向かい口パクで何かを言い始めた。
『勇者様、少々、こちらへ』
なんとなく漂う不穏な空気。
セージと国王との距離は現在、そんなに近くない。
頭にクエスチョンマークを浮かべつつ、セージは移動する。
パーティの主人公的立場からか、彼の歩く先には道が空く。
そして、会話可能な距離まで近づくと。
「勇者様、本来そちら様への謝罪パーティなのに申し訳ございません!! 重ねてお詫びを申し上げます!! ですが、お願いします!! 厚かましいのは承知の上です!! 助けて下さい!!」
「はっ!?」
突然、セージに助けを乞う国王。
そこには王たる威厳など皆無。
なんとも情けない姿であった。
これでも一国の国家元首である。
そして普段、どうやって国家を運営しているのだろうという発言。
「あ、あれなるは我が子でヴァンデリアの王太子です。いわゆる国の世継ぎでして、【マティアス】と申すのですが……ご覧の通り──いきなり、乱心を!!」
「ちょ! 落ち着いてくださいって!! いや待ってください! 寸劇じゃなくて乱心なのは百歩譲って納得します! しかし! これ、俺は一切関係ありませんよね!? 『いきなり乱心』だなんて、そんな他人事みたいな言い方! 完全に王家の問題ですし、国王様が父親や国家元首として審判を下す場面でしょ!?」
「ハハハ、こんな愚王が国家を運営しているだなんて。我が子ですら御せないとは、度し難いものです。もういっそ、我々のような無能な一族などではなく、どなたか有能な方に王位を禅譲でもしようかなと……」
セージを見つつ、自嘲気味に国王は言った。
なにやら投げやりにもなっている。
「そんな目で見られても俺、国王はやりませんからね!? まさか! 俺にこのトラブルを処置せよと!? 嘘ですよね!? 無理無理! エルフにも言い聞かせてるんですけど、俺って一領民ですよ!?」
「でも、勇者様ですよね? 以前、この国において勇者様は国王より上で発言力もあると申し上げましたよね? つまり、アレを裁くには──この場において誰よりも偉く尊い存在である、勇者様こそが相応しいかと!」
国王は以前、自身が発した言葉を言質として取り上げ始めた。
だが、仮に勇者の発言力があるにせよ、話に無理がありすぎる。
セージにとってこそ、間違いなく他人事。
見た目こそ腰を低くしてお願いはしている。
にも関わらず、そこに存在する妙な圧。
これも職権乱用になるのだろうか。
もはや、完全なる暴論だった。
「それ他称ですってば! 俺自身は一度も名乗ってませんし! は!? 前回の魔法学園の問題児の件はまだともかく、この問題が勇者案件だとでも!?」
「あ奴らも、今でこそ、ああやって揉めておりますが──勇者様が一声かけさえすれば、魔法のように鎮まるでしょう……! 先ほども申し上げましたが、勇者様の地位とはこの国において、そこまでのもの。高位貴族や王族……立場が上がるほど、それは浸透しております。ささ! どうぞご遠慮なさらず、ご英断を!」
そのセリフと共に、セージをグイグイと押し始める国王。
そうやって、どんどん揉め事の中心へと近づく二人。
「待っ!? 押さないでくださいよ!! 無理がありすぎですってば!! そもそも、このパーティが何で起こったか、わかってます!? 俺が領主に対する発言力なんか無かったからでしょ!? だからそんな──アァッ!?」
ド正論を吐くセージ。
大体、彼は言及こそしてないが。
そもそも、謝罪相手に面倒事を押しつけるなど論外である。
それこそ、この上ない無礼だった。
エルフィの【滅ぼす発言】も、意外に的外れではないのかもしれない。
そして彼はトラブルが起こっている現場──
その真ん中へと踊り出される。
「ん!? なんだ貴様は!! 私をヴァンデリアの王太子と存じての狼藉──あっ、あなたは!! 勇者様!?」
どうやら国王の言っていることは本当のようだ。
王族や高位貴族に対する勇者の発言力。
とはいえ、セージにとっては全く嬉しくない話である。
正味、さすがの彼もこれには怒っていい。
例え激怒しても、彼を咎める者などいないだろう。
……彼的に、特に怒らなくてもいい理由があるのかもしれないが。
謝罪パーティのはずが、とんだ事態を招いていた。
混沌とする様子の場の状況。
そして、勇者による断罪劇が幕を開けたのだった────
※略
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