国王からお詫びの招待~エルフも添えて~
「どうか【家族】に幸せが訪れますように──」
セージは首飾りのような物を手に祈る。
それは沢山の球が連なり、十字の形のものが付いていた。
向かう対象は先祖代々、神棚と呼んでいる祭壇だ。
彼の言う【家族】の範囲は幅が広い。
「あのう、セージ様」
「いつも思うのですが、王は一体、何をなさっておいでで?」
「これ? エルフの会議の時の自己紹介で言ってた日課の祈り──って、その時は二人ともいなかったのか。いやいや、ていうか毎日見てない? 『いつも思う』ってんなら遠慮なく聞いていいよ? 俺、エルフと違って情報を小出しにはしないから、聞かれたことは答えるし」
情報について、軽く二人をディスるセージ。
「ぅぐ」
「ほ、本日の王は一層お手厳しいですね。しかし、日課のお祈りですか。今お手持ちの物と、そちらの箱のような物は?」
「あっ指差すんじゃない。それ、ご神体が入った神棚だから。この【祭具】を使ってだな、その中のご神体を通じて家族が幸せになるよう、祈りを捧げてんの」
「なっ!? そのような不遜な存在が!?」
「ご、ご神体!? 王であるセイヤ様やセージ様を差し置いて!? ──!! なるほど、その【ご神体】というのは【セイヤ様の英霊】、と」
「おま、なんでだよ! 第一、王や勇者は聞いたけど神扱いまでは、さすがに無かっただろ!? 俺やご先祖様を差し置いていいんだよ! ってか、初代の頃から欠かしてない祈りだからなこれ!」
「セイヤ様の代から……まさか! 異世界に召喚される時にお会いになったという【神】では!?」
「なるほど、アイナ。それは道理が通りますね。【農業チーター】キサラギや【武力チート】ハルカ様のように、お世話になったと」
「ああ、そっちの方は勘違いしても仕方がないか。どうやら召喚関係ではないらしい。というのも、ご先祖様はそういう存在にお世話にはなってないそうだよ。むしろ、先祖代々『【ソイツは拉致誘拐犯】の烙印でも押しとけ』って言い伝えが」
「【拉致誘拐犯】!? 仮にも神を名乗る相手に!?」
「さすがはセイヤ様!! そのような胡乱な存在など歯牙にもかけぬ、気高きお志し!」
「……逆に聞きたいんだけど。エルフって、宗教──っていうか崇拝してる神っているの?」
「もちろん、ございますよ」
「その御名は、セイヤ様とおっしゃ──」
「結局、ご先祖様じゃねーか!! なんなんだよお前ら、もったいぶりやがって!! だから! 今まで一度も神扱いまではしてねえだろ!!」
エルフィのセリフ遮られ率は高かった。
最後まで言わせてもらえないことも多い。
二番目に発言的な役割ゆえである。
「あれっ? 【ホーリー・パレス】には神であるセイヤ様の肖像画がございませんでした? 思わず、祈りを捧げたくなるような」
「セイヤ様がエルフを支配者から脱出に導いた、【出エルフ記】の著述はあまりに有名です」
「あれご神体だったのかよ!? んで【出エルフ記】ってまた初耳なんだけど!! ……えっ? エルフって、どっかから脱出してきてんの?」
そういえばであるが。
セージが激しくツッコみを入れる際のことである。
二人が怯えることは、大体ない。
怒っているようで実は全く怒っていない状態。
彼にとって、冗談と本気で分けてでもいるのだろうか。
……一部のツッコみには例外があるが。
案外、【覇気】とは便利なバロメーターなのかもしれない。
「勇者であるセージ様もご存じの通り」
「エルフとは美しくも弱く、儚い存在」
「おう待てやコラ。ご存じじゃないんだけど。美しさしか認める点がないんだけど」
「う、美しいなどと!」
「我が王からの、そのセリフ──」
「もうそれホントいいから。話進まないから止めてくれる? てかさ、二人の【エロさ】と【恥じらい】の価値観、逆じゃないの? 尺度、バグってない?」
「では、【出エルフ記】からの歴史を少々、申し上げます」
「その昔──エルフは人間に支配され迫害され、家畜のように扱われておりました」
価値観については釈明を放棄するエセ双子。
何事もなかったかのように、話を進め始めた。
たまに怯えを見せるクセに、この二人も意外に図太い。
それも彼への好意ゆえと言えば、それまでであるが。
「……マジで? 逆じゃないの? エルフが人間を武力で脅してたんじゃないの? ほら、首都【ヴェルフラード】に行った時、ヴァンデリア国王様にやってたみたいな感じで」
「アッ! エルフィ!」
「そうでした!」
「は?」
急に何かを思い出したかのようなエセ双子。
全く心当たりがなく、短い疑問の声を上げるセージ。
「えっと、実はセージ様がお出かけになっていた早朝、ヴァンデリア国王から遣いの者が参ってまして、その者が──」
「『勇者様に対する、先日の無礼のお詫びをしたいので、どうぞ【ヴェルフラード】へお越しください。今回の件は王家総出で謝罪せねばなりますまい。先日よりも大きなパーティも開きますので、是非とも。勇者様を呼びつける非礼、お許しください』とか申しておりました」
「それ、いの一番に言えよ! なんでここに至るまで黙ってたんだよ!!」
「ですが、たかが国王の遣いからの伝言程度」
「正直、夕飯を囲みつつ『ワハハ』と笑いながら話す雑談レベルです」
「あのね、何べんも言うけど──国王様ってね、この国で一番偉い方なんだよ? 君らは俺を勇者とか王に認定してるけど、ヴァンデリア王国においては俺って一領民なの。つまり……【雑談レベル】じゃなく【何よりも優先する事項】ってことだよコンチクショウ!!」
「で、では再び参りますか! 【ヴェルフラード】へ!」
「アイナ! 今、私が提案しようと思っていたところですよ!」
二人の間で醜い非の押し付け合いが始まっていた。
「もういいから、分かったから。仲良くしろよ」
四日後。
「………………」
「王よ、此度の旅はいかがでしたでしょうか?」
「快適にお過ごしいただけたと自負しております」
「ねえ、【エルフハーブ】なんだけどさ……本当に人体に安全なの? あれ使うのやめない? つか、一服盛るなって俺、言ったよね?」
「お久しぶりですね、門番」
「伝えなさい。エルフの覇王で勇者──セージ様が参ったと」
エルフを見た門番は相変わらず怯えていた。
「聞けよ! 聞けよ!! だから話を!!! 聞けよ!!!!」
虚しく木霊するセージ怒涛のツッコみ。
門番はそれよりもエルフ恐ろしさに、城内へと急ぐ。
すると──王城から慌ただしく大量の人が押し寄せてきた。
しかも、国家元首である国王を筆頭に。
「勇者様! この度は! 申し訳ございませんでしたアァアアアア!!」
人の目があるのに土下座する国王。
普通、国王とは人前で頭を下げてはならない人種である。
エルフの脅威度とはそれほどまで、ということだ。
この国王に限っては勇者への畏敬の念もあるのだが。
王家にも異世界文化である【正座】や【土下座】は伝わっていた。
「ちょ!? 国王様!? 人前で頭を下げちゃダメでしょ!! 怒ってませんし大丈夫ですから! 頭を上げてくださいって!!」
「お、お許しいただけるのですか……? 何でも、そうとう横暴な振舞いをされたとお聞きしたのですが……」
「国王様に悪意がないのは分かっていますし、恐らく事情があるんだろうなと思ってましたから!! それより頭を上げてくださいって!!」
「うぅっ! 勇者様の度量にはなんと感謝を捧げればよいのか……。下手をすると今頃この国は滅ん──そうだ、お伝えの通り、このまま城内にて歓待させてください。すでにパーティの準備に取り掛かっておりますので、明日にでも【国王謝罪パーティ】を開ける予定です!」
「わかりました、ありがたく賜りますから。せめて、その緊急会見みたいなパーティ名は変えましょうよ……」
そのままセージとエセ双子は城内に一泊。
そして、翌日。
【勇者様へのお詫びパーティ】が始まりを告げる──
※略
現在、累計総合一位との差はおよそ略。
「続きが気になる等 略」
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励みがうんたら略。
素早く入眠したい時は
吸い込む空気を冷やすと深部体温が下がるらしく、
そして身体は暖かく、
手足からは放熱できるようにして
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(作者の)快眠が得られるというのが最近の主流のようです。
入眠法は本当です。
他にもありますが略。
なんか寂しいですが以下略。
ブックマークボタンと★への感謝だけは略しません。
まことにありがとうございます。





