やっとおうちに帰れ──ない。~武技・魔法チート ハルカの手紙~
「我が王セージ様万歳!」
「覇王閣下万歳!」
「セージ陛下~万歳~!」
エルフカーニバルは、恙なく終日を迎えた。
今まさに、家のある【エルブリッジ】の村へ帰らんとするところだ。
そして、
『今回はけっこう長期滞在したし、世話になったな』
と城門を振り返ると。
そこには各ハイエルフが万歳三唱をしていた。
エセ双子はもちろん帰りに同行する予定。
だがなぜか、セージの横で一緒になって万歳している。
頭を抱えて座っていると、その上に人影が差す。
エルフの長老【アンダリエル】だった。
「セージ様」
「アンダリエルさん……よかった、万歳三唱をしない常識のある人がいて」
「いえ、本当は加わりたいんですけど……要件がございまして」
『いや加わりたいのかよ! そんな、お姉さん風なノホホンとした空気しやがって! やっぱエルフはエルフなのか!?』
セージはそのツッコみを、なんとか堪える。
「要件、ですか?」
「はい。各エルフの王族が、本来はセイヤ様のお仲間から預かっている物があるのです。セイヤ様の次の王──つまりはセージ様宛てに。ですが……フォレストエルフのみ、聖剣と勇者の古文書がございましたので、その管理を王族である二人が。お仲間の預かり物は、代わりに長老の私が管理を」
「ん? そういえばアンダリエルさん。聞こうとは思ってたんですが、王族である二人と長老。どっちの方が偉いんですか?」
「それは──実は私も王族の末席に数えられてはおりまして、ハイエルフではあるのです。なので、かなり近いところで血の繋がりはございます。人間の尺度で申し上げますと……二人が王家、私は公爵か大公あたりでしょうか? ただ、エルフが暴走してしまうと周囲の人間族の被害が甚大ですので、平素の発言力は私の方が上です」
「我々、長には頭が上がりません」
「正直、『目の上の瘤』とはこのこと」
先日も正座をさせられたばかりだ。
無理もない話だった。
「けっこう言うね、君らも。まぁ何度もお仕置きされてるし、そりゃそうか。それで、アンダリエルさん。俺にってことですけど……いったい何が?」
そこで、アンダリエルは恭しく膝を付く。
「こちらでございます。フォレストエルフを武力で導いた、セイヤ様のお仲間であるハルカ様からです」
そして懐から一つの小箱を取り出すのだった。
その様子を見たセージは──
『えっ!? 今この人、【胸の谷間】から取り出さなかった!? マジかよ!? いや気のせいか!? そもそもそんな所に入る大きさの箱かアレ!? もしや、フォレストハイエルフは例外なくエロ……いやいや! 今のは──幻覚だ!!』
抱きそうになった疑念を強制的に追い払う。
そして、何事もなかったかのように箱を受け取った。
彼の【見ないふりスキル】は上昇の一途を辿る……。
ちなみにその別名を【スルースキル】ともいう。
単に言い方を変えただけが、要は彼なりの【エルフ耐性】だった。
「これは──緑色の小箱? これ、中身は?」
「残念ながら、各ハイエルフを始め、開けられた者は今までおりません」
中身については誰しもが未確認。
どうやらセージが初見となるようだった。
「はいはい、そんな聖剣や古文書と違って俺が都合よく開けられるわけ──開いたわ」
『できるわけないじゃん』
そんな風に言おうと、彼は箱をいじっていた。
すると、それを待っていたかのように開いた小箱。
思わず真顔になり『マジかよ……』と呟くセージ。
「あらっ……? さすがはセージ様」
驚くべき事態のハズがマイペースなアンダリエル。
「勇者様に不可能はございません」
「我が王ならば当然です」
エセ双子の言動はいつも通り。
「これが──我が王セージ様の覇業!」
「覇王閣下は無敵であります!」
「セージ陛下~素敵です~!」
そして万歳三唱をしていた他のハイエルフも寄ってくる。
アンダリエルと合わせて都合六人。
実に、かしましかった。
「いやいや、実は誰でも開けられるんだろ? 君ら、全員で俺を謀ってるだけだろ?」
疑心暗鬼になっているセージ。
そして、無情にも横に振られる六つの頭。
「マジかよ!? まぁ……中身、せっかくだから見るか。ご先祖様の仲間の人からだっけ? しかも武力チートでエルフを導いた人。どうせバーサーカーの源に相応しい、クレイジーな人なんだろ。はいはい、今度こそわかってるよ。えーと、これ大学ノートの一部を折りたたんであるな。手紙か? それから……翡翠色のイヤリング?」
とりあえず、畳まれた紙を開くセージ。
だが、エルフを導いたというだけで狂人扱い。
相変わらずバーサーカーには辛口の彼だった。
イヤリングの方は一旦、保留するようだ。
そして、パタパタとノートを開いていくと……。
そこに書かれていたのは、初代のセイヤと同じ文字。
つまり──【日本語】で、書かれていた。
『はじめまして、聖也の子孫。
まず最初に一言、コレだけは絶対に言わせてね。
聖 也 ヤ ベ ェ !
彼、常識人ぶってるけど……一番ぶっとんでるんだよ!?
あの人ね、
『俺、【非戦闘職】だからお前らと一緒にすんなよ!』
が口癖なんだけど……。
これ、一見すると支援職みたく聞こえるよね?
彼が言ってる意味、そうじゃないから。
それが意味するところは
【戦闘にすらならないから非戦闘職】
つまり
『戦い? そりゃ同レベルの奴らで発生するもんだろ』
ってこと。
手紙にも、そういう意味合いのこと書いてた。
『勇者っていうくらいだから戦いを楽しめるって勘違いさせちゃいそうけど、俺らは【非戦闘職】。戦闘能力なんかないから、そういうバトル漫画的な展開は期待すんな』
だってさ。
要は【ライバルがいない】って意味だからね。
それっぽく書いてるけど、わざと勘違いさせる内容。
勘違いさせるために書かれた内容は後に記しておくよ。
あの手紙からは、聖也の悪意しか感じない。
最初こそ
『ここ、不便だよなー』
とか言って【生活魔法】なんて名付けたモノを編み出してた。
エルフは【古代魔法】って言ってたかな。
あれ、彼が適当に作っただけだからね。
元の世界にあった商標から版権ギリギリで名付けたり。
『こう……俺も無駄に凝った魔法名、欲しいわー』
とか言いながら適当に名付けたり。
着火系の魔法名とか、無駄に凝ってた気がする。
ええと、彼って【ケセラセラ】とでも言うのかな。
あの楽天気質、なんなんだろうね?
おっと、話が脱線するところだった。
魔法の話だよ、【聖也の作った魔法】の。
身に覚え……ない?
そうそう、例えば【各種禁忌魔法】。
あんなので、【生活がちょっぴり豊かになるだけの魔法】は無理あるでしょ!!
私ら全員、一度はお仕置きとして聖也から【各種禁忌魔法】を食らっている。
男女関係なく平等に。
聖也曰く、【男女平等主義】らしい。
つまり女の子であろうが、非があれば容赦なし。
言葉の使い方、間違ってない?
まあそれはいいや。
なんでも
『だって俺と違ってお前ら全員、二重のチート持ちで頑丈だし卑怯だし。さっすがチート持ち! チートってズルって意味だって知ってた? その名に恥じないよなー。よっ! エルフの育成者!』
とか言って。
いやアナタそんなん必要ないでしょ!
というか、もはやアナタ、チートですらない理不尽だよ!
彼はマジな怒り方って滅多にしない。
だけど、その彼が本気で【理力解放】したら……。
それだけで私ら無条件ダウンだよ?
エルフは【覇気】だとか【王気】って呼んでたかな。
普段は、ほぼ出てないんだけど。
感情が揺らぐと少し漏れ出るんだよね。
封印……とはまた違うか、アレの状態でだよ?
いやいや、おかしいでしょ。
その上、終いにはさらに調子に乗り出した。
アレで力が抑えられてるのを良いことに
『いやーエルフって怖いわーとんだ戦闘民族だわーヤツらこそが魔王だわーそんなヤツらに祭り上げられても俺こまるわー』
とか、ヘラヘラしながら言い始めた。
魔王はアナタだっつーの!!
『俺は絶対に勇者なんかじゃない』
とは常々言ってるし、そこは本当だと思う。
他はどうなんだろうね?
手紙の内容にはその辺を主に盛り込んでる。
あの中身、叙述トリックって言葉に失礼すぎるんじゃないかな。
子孫の君。
『生活魔法って名前を受け継ぐ過程で、どうやら子孫は自分は非戦闘職で弱いって思いこむみたい』
なんて先見が仲間から出てるんだけど……。
嘘だよね?
本気なら言わせてほしい。
エルフは私らが育てた。
確かにメチャクチャ強い。
そこいらの人間じゃお話にならない程度には。
帝国以外の人間の国なら滅ぼせるかもしれない。
だけど……【君はそんなのがお話にならないくらい、ぶっとんだ存在】なんだよ。
あ、そっか。
聖也、あの状態を受け継がせるって言ってたっけ。
ということは、それで普段は力が抑えられてる……?
あっ! 先見の内容って、まさかそこから!?
そうなると……変質した魔力である【理力】を感じ取れるのは限られてくる。
そうだね、【感知系のチート持ち】かエルフくらいかな?
実はエルフって感知力に優れてるんだよ。
とある理由があるから、しょうがないんだけど……。
あと……聖也への恐怖も遺伝子レベルで刻まれてるかもね。
ははっ! なんちゃって! こっちは冗談だよ!
おっと、【理力】の話ね。
普通の人間がそのポテンシャルを感じ取るのは無理無理。
聖也の子孫。
君、これまで【自分が普通】って思ってた?
すぐに実感はできないかもしれないけど……。
それ、勘違いだから。
そういうわけで、いかに自分が非常識かってことだけは理解してね!
そだ、イヤリング入ってたでしょ?
それ、試作品の一つで私の力を少し入れといたから。
フォレストエルフの誰かにでもあげたら?
他はー……まあ、仲間の誰かが書いてくれてるっしょ。
なんか、聖也のヤバさを伝えるだけの手紙みたくなっちゃった。
だってさ、あんな先見でたら誰でも驚くって話だよ!
ってことで、こんな内容になっちゃった。
あっ、後の時代だったらお仕置きされる心配ないのかな。
ちょっとだけハッチャケとこ!
こんなんだけど、許してねテヘペロ★
聖也こわいよこわいよ 聖也と比べたら武技・魔法チート(笑)ハルカより』
「──ご、ご先祖様アァアアアア!?」
「!? え、なにゆえセイヤ様の御名が!?」
「ハルカ様の古文書ですよね!? まさか、前回の古文書と同じく何か不穏なことが書かれていたのでは……!」
「いや、それは大丈夫だ。でも内容は言えない。勇者の仲間はこの書の破棄を望んでいる」
「!?」
「かしこまりました! すぐに聖火の用意を!!」
初回の手紙の時にかなり近いやり取り。
今回は特に手紙の破棄については書かれていない。
だが、彼にとっては完全に都合の悪い話だった。
聖剣マサユキの時のエルフのことを言えない。
所詮は彼も同じ穴のムジナ。
セージにとって不都合な事実を……闇に葬ることにしたのだ。
※略。
前回のあらすじ。
後書きのせいで
ブックマーク・サブリミナルメッセージの被害者が現れた。
(書いてる本人にも被害があった)
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おひとりにつき【★★★★★】までしか評価を付けられないため、星55555万は冗談抜きでめちゃくちゃ大きいです!
感じたまま★777(ラッキーセブン)で構いません。
やったね!
ぜひ皆様の清き評価をお願いします!
あ、前回
ご飯の蒸らし方について感想欄にて教えて下さったメーカーの方。
この場を借りてお礼を申し上げます。
「はじめちょろちょろなかぱっぱ」を
少し言おうと思ったんですけど
火力炊飯の時代の言葉だから
電気炊飯は関係ないんですよね……。
ただ一つ言えること。
火力と火加減、マジ大事。
炊飯の各メーカー様はそれに随時、挑戦なさっているのです。
火力への挑戦者と申せましょう。
我々の食を支えてくれている生活の立役者。
ちなみに、
本日、【ご飯がメインなアナタは上の方のブックマークから追加】
逆に、【パンかそれ以外がメインなアナタは下の方のブックマークから追加】
ブックマーク職人からの……ワンポイントアドバイス!!!!





