エルフカーニバルその3 ずっとセージのターン・マーメイド(エアルウィン)の場合
「いや~まさか~……デザートハイエルフとマウンテンハイエルフのお二人へとプロポーズして、しかも最上の結果をおさめているだなんて~。さすがは我らが王の、セージ様~」
そして最終日である三日目。
本日は【シーエルフ】の日だ。
先日の一件は、すでにエルフ界隈に轟いているらしい。
未だにエセ双子は部屋から出てきてないが……。
それを聞いた時の反応が恐ろしいところである。
「ぷろぽーず……。今日が終わったら即アンダリエルさん案件だな。そういえばなんですけど、エアルウィンさん」
「? はい~?」
「わざとの上だったら聞き流してくださいね。素の口調で喋らないんですか?」
エアルウィンの口調について言及するセージ。
今回はどうやら、エイルの時とは違い確信がある模様。
「…………どうして、そうお思いに~?」
「なんと言いますかね、俺、そういうの、時々わかっちゃうんですよね。エイルさんの時はわからなかったんですけど、アレは本人曰く『もう素になりかけてるから』らしいんで」
ほんの一瞬だけ真顔になるエアルウィン。
先ほどまでの笑顔が嘘だったかのような変化だった。
「セージ様~。不躾で申し訳ないのですけど~、ちょっとお付き合いいただけませんか~?」
「かまいませんよ。一緒に行動が目的の親睦会ですし、エアルウィンさんの行きたい所があるんなら、どこへでも」
そうして、二人は連れ立って移動する。
エアルウィンの目的地は食事処だった。
大衆料理の店よりはお高い雰囲気。
そこに着くなり、迎えた店員から一番奥の個室へと通される。
どうやら、エアルウィンは、この店の常連のようだった。
席に着くなり、店員が確認を取りにくる。
「いつもので、よろしいですか?」
その尋ねる言葉はシンプルだ。
注文というよりは、確認の意味合い的な内容。
「それでよろしくお願いします~」
彼女が返事をしたのも、その言葉のみだった。
そして。
店員が去り、二人きりになった瞬間。
エアルウィンは先ほどと同じ真顔になる。
「……陛下。いつからお気づきで?」
神妙そうに問いかけるエアルウィン。
鋭利で聡明そうな口調。
先ほどまでの間延び具合は、欠片ほども残っていなかった。
「強いて言うなら初見の時から。なんか意味があるのかな? と思って黙ってはいましたけど」
「初対面から!? さすがは、我らが王。これまで、いきなり見破られたことはなかったのですが……まさか初見からお気づきだったとは」
「あ、もちろん他の誰にも言ってませんし、マズいようなら理由も聞きませんよ?」
「いえ。どちらにせよ本日、陛下には理由も込みで申し上げるつもりでおりました。ただ、すでに看破されているとは、お恥ずかしい。さすがに初見で看破されるなど、思いもしませんでしたが……。いえ、ここはお詫びが先ですね。拝すべき王を侮る無礼に謀る無礼。平に、ご容赦を。もしお怒りでしたら、どうぞこの首を」
「首!? そんなん要りませんて!! 何か、事情があるんでしょ? 俺は構いませんから、そんな深刻にならないでくださいって!!」
『首って。やっぱエルフだわ、この人も』
特定分野では全エルフ共通である。
つまり、専門分野での過激さでは全種族共通。
アンダリエルの言葉を、しみじみと実感するセージだった。
「……まずは海よりも広く、海溝よりも深い陛下の慈悲心に感謝を。では、さっそくですが、我々の事情をお話させていただきたく──」
そうして、本性ともいうべき顔を見せたエアルウィン。
彼女はその経緯を、訥々と語るのだった。
「なるほど……。一度、整理させてください。マーメイドはエルフの中でも最弱の種族。しかも女性しか生まれない。だから、種の存続をかけて男性に媚びるしかない。その結果──人心掌握や心理戦、政治なんかに長けるしか、種が永らえる術が無かった。かいつまんで言うと、それで合ってます?」
「はい。なので、エイル殿とはある意味で真逆と申しましょうか……。わざと愚鈍に思われるために、ああいった口調を演じているのです」
「そのこと、他の人には?」
「我が一族以外ですと、アンダリエル殿しか知りません」
「ああ、だからか。じゃあ、たまに船乗りと一緒になるマーメイドがいると言っていたのは……」
「そこは本当でもあります。大部分は子を成すための一時的な関係なのですが……中には相手と連れ添う者もいるのです。ただ、その場合は──絶海にあるシーエルフの海上移動都市・【ポロトコタム】へ永住していただくことになりますが……」
「そういう理由からマーメイドに関しては一部的な情報しかないんですね。あれ、でも。ん……?」
「疑問をお感じになるのは当然です。ご覧のように、我々は水陸両用で暮らせることのみが種族の強み。そうやって、各国の陸地とその海で──マーメイドの手が及ぶ全ての範囲で情報収集を行っているのです。当初に申し上げた吟遊詩人や船乗りの件も、意図的に情報を流しております」
「それは──苦労してるんですねえ……」
「あ、あの? 我々を、軽蔑なさらないので?」
「は? 軽蔑とはまた穏やかじゃないというか。なんでですか?」
「我々はフォレストエルフやデザートエルフのように戦えません。マウンテンエルフのように物を作る特技もございません。セイヤ様のお仲間からも、そういった得意分野を持つお方に来ていただきました。やっていることと言えば、エルフの容姿を利用したハニートラップや、人を欺くことです。決して褒められた生き方ではないと、自覚しております」
「……俺がどう思ってるかってことですか? そうですね、一言でいうなら【尊敬】ですかね」
事もなげに言うセージ。
「そっ……そ、尊敬!?」
その言葉に、心底、驚いた様子のエアルウィン。
「あれ、そんなに驚くことですか? どう言えば伝わりますかね。自分たちの持てるもの全てを使って──さっきエアルウィンさんは【ハニートラップ】って言いましたけど、それも好んでやる者ばかりじゃないでしょう? 想像でしかないですけど、中には泥水をすするような悔しい思いをしてる人もいるんじゃないかなと。それでも種族全体で一致団結、協力して生き抜いていこうだなんて。うーん……なんていうのかな。あぁそうだ、【信念】って言葉がシックリくるな。【なんとしてでも皆で生き抜こう】。そういった気高い信念みたいなのを感じるんですよ。そういう人は俺、押し並べて尊敬してるんで」
「セ、セージ、様……」
言葉に詰まるエアルウィン。
この時の気持ちを何と言い表せば良いのだろうか。
正直な所、エアルウィンは真逆の予想をしていた。
セージからは貶されると思いこんでいたのだった。
『王とは常に、王道を行く存在である』
彼女はそんな先入観を持っている。
ゆえに──搦め手が主な手段のマーメイド。
そんな存在は、てっきり嫌われると思い込んでいたのだ。
「あれ、まさかアイナとエルフィあたりに戦闘力の面で小馬鹿にされてるとか? もしそうでしたら、後で代わりにお仕置きしておきますけど?」
理不尽な冤罪をかけられるエルフコンビ。
なぜセージがそう思ったか?
それはエルフ同士の関係からではない。
道行く人間への因縁の付け方──
つまりは、戦闘力ありきのバーサーカー具合からだった。
「そのような! アイナリンド様とエルフィロス様からは良くしていただいております。といいますか、エルフは全種族、常に協力しあう程に仲が良いですよ。例外があるとしたら……王の寵愛の取り合いくらいでしょうか」
「あ、そうでしたか。確かに、今まで話をしたエルフで他種族を悪く言うのはいなかったな。……そういえば、アイナとエルフィかー……。今晩あたりにでも機嫌を直すよう、何か説得方法を考えとくか。さすがに引きこもりっぱなしはなぁ」
寵愛の取り合いに関してはワザと触れない。
「ふふふ、陛下はお二人のことが好きなんですね?」
「それ、本人らに絶対言っちゃダメですよ? すぐ調子に乗って何かやらかすから。そりゃ、いくらポンコツエルフでも、あれだけの好意を寄せられちゃあ俺としても悪い気はしませんよ」
「それじゃあ、情報戦が主戦場な私からも内緒話を一つ。今回集まった全ハイエルフですが、すでに陛下のことが恋愛的な意味で好きなようですよ。アンダリエル殿も込みで。ついでに言っちゃいますが、私も含め全員純潔ですのでご安心を」
「その情報は言っちゃダメなヤツでしょ!? プライバシーの侵害ですって!! というか、えっ! エアルウィンさんにアンダリエルさんも!? 冗談でしょ!?」
唐突に知らされるハイエルフ達の恋愛感情。
いつの間にか得ていた好意。
もちろんセージはそれに驚愕する。
「冗談だと──お思いになります?」
「すいません。もう、頭が追い付かないんで、とりあえず保留で。あ、そうだ」
「? はい」
「他のハイエルフ女性には、それぞれお菓子とプレゼントを上げたんで、エアルウィンさんにも何か渡そうかなと思って。お菓子のリアクションは想像がつくんで、持ち帰った後に召しあがってください。それと、事前に確認させてもらいたいんですが……【シーハイエルフ】に髪飾りを上げたからって【プロポーズ】はなりませんよね……?」
「ふふっ、陛下ったら! 【シーハイエルフ】への求婚は七種類ほどの品を集めないと普通は無理ですよ。ああ、とある宝石でしたら一種類でも大丈夫ですかね。仮にその宝石が嵌ってるのなら話は別ですが。まあ、もし陛下から相応の品をプレゼントされでもしたら──問答無用でお受けしますので、お覚悟なさってくださいね?」
本来のエアルウィンは茶目っ気のある性格なのかもしれない。
舌をペロッと出し、そんな冗談を言い放つのだった。
「ははっ、それなら大丈夫そうだ。で、モノはさっき言った通り髪飾りなんですけど──これ、冒険者時代に海でゲットした綺麗な貝殻。それを磨いて加工して、髪飾りを作ったんですよ。マーメイドのエアルウィンさんにはお似合いかなと思って」
髪飾り。
それは、いわゆる【バレッタ】という髪留めだった。
特筆するような、奇抜な形はしていない。
プロポーズの件の話も事前に聞いた。
今度こそ、セージは軽い感じでホイッと手渡す。
が。
「──!? はぅええぇえええっ!?」
その反応を見た瞬間、セージは悟る。
これは──間違いなく、やらかした、と。
「待ってください! 一種類! 七種類なんかじゃなく一種類ですよ! 宝石でもない、素朴な民芸品でしょコレ!? その【思わぬプロポーズを受けた】的な他の二人と同じ反応!! 冗談ですよね!?」
テンパるセージ。
藁をもすがる思いで、否定の言葉を期待する。
「陛下、この【プロポーズ】……。喜んでお受けいたします!!!!」
「あ、あぁあ……! プロ、ポーズ──」
前回の二人と似た驚愕をするセージ。
本来、プロポーズ成功とは男にとって栄誉あることである。
なのに両膝をつく彼。
「ご説明いたしますね。七種類と申しましたのは……正確に言えば、【七色のプレゼント】が必要なのです。その理由は先に申し上げた情報収集に関係がございまして──【あなたの種族の生き方は、任務次第で態度を七色に変えるけども。その移り変わる全てを受け入れましょう】という意思表示なのです」
「いやでもほら。さっきも言いましたけど。コレ、一種類ですって」
「いえ……光沢を持つ貝は知っておりますが、この加工品は初めて拝見します──まさか宝石の【オパール】以外に、こんな形で条件を満たせる単品が存在するなんて……」
セージがプレゼントした髪留め。
それは家に伝わる文献を元に、好奇心から作った品物。
初代であるセイヤ出身の異世界では【螺鈿細工】と呼ばれるものであった。
『種族初会合で全ハイエルフの超高難易度プロポーズ条件をクリア。最上の形でどころか、その心の悉くをも射止めた恐るべきエルフの王』
ここに、覇王・セージのハイエルフハーレム(笑)の伝説が幕が開けてしまったのだった。
※略
まず最初に。
現在、切実なるブックマーク事情があることを明記しておきます。
うーん……これ、たまには他の方のも見習ってみるべきやいなや?
【★読者の皆様へ とても大切なお願いがあります】
現在、今作は累計ランキング圏外。
1位との差は「760000pt」です(もうぶっちゃけ計算してません)
もうあと一歩で、ずっと夢だった、
累計1位に手が届くのですが……
ここからの伸びが非常に厳しいのです……
次の更新が、
おそらく1位になるか、
【読者様エタざまぁ】になるかの最後のチャンスだと思います……
(しかし、これの大元の人、毎回最後のチャンスだけど、何回ラストチャンスがあるんだろう……)
おっと漏れてはいけないものが。
聞かなかったことにしてください。
落ち着いて。
さぁその通報ボタンから手を離すのです。
少しでも、
「待てさりげなくエタちらつかせんな」「おい待てふざけんな!」
「続きが気になる!」「そんなことより美味い米事情はよ」
「ざまぁも楽しみにしてるよ!」「エルフって(笑)」
と思っていただけましたら、
広告の下↓にある【☆☆☆☆☆】を、
【★★★★★】にしてポイントを入れてくださると嬉しいです!
★の数は皆さんの判断ですが、
★5000000をつけてもらえるとモチベがめちゃくちゃあがって、
最高の応援になります!
なにとぞ、ご協力お願いします!
ところで気づいたんですよ。
これをご覧になったかたって、
すごく親切でかなりの★を進呈なさってくれるんですよね。
ここで冒頭。
それとは裏腹に、ブックマーク数の方が
すでに頭打ちになっているということを!
(★にこだわるあまり、ブックマークを疎かにしすぎた……? いや、まさか……!)
これが……★の願いが叶えられた代償だとでもいうのか……!
どなたか【ブックマークボタン】を6000個くらいポチってくれませんかね。
あらやだ、ブックマーク数だけ
いやにリアルな数字!!





