エルフもうアフターとか付けなくてもいいんじゃない? とりあえず会場入り
フォレストエルフの首都【カムエンペ】。
そこを含めた一帯を、人間は【迷いの大森林】と呼ぶ。
森の深さはもちろんのこと──非常に強力な魔獣に食人植物。
さらには地図やコンパスの類の一切を受け付けない。
刻々と変わる、【生きている】とさえいわれる地形。
踏み入る資格がない存在の、ことごとくを拒む。
あたかもそれが【森の意思】であるかのように……。
これまで、住人であるエルフ以外にこの場所を踏破できた人間は──
伝説の勇者であるセイヤ以外にいないとされていた。
「──なんていう大層な謳い文句だけどさ……。特定の魔獣にさえ気を付けていればスンナリ都入り出来ちゃうという、この現実。ああ、【ハイエルフ】の君らがいるからか」
「これまでは、我らを使って欲しいがために伏せておりましたが……」
「実は、すでにセージ様は【森の主】ですので、王都どころかどこへでもフリーパスです」
「は? なに言ってんの? 俺、初っ端から【エビルモンキー】に殺されかけたじゃん」
「あ、あれは~、そのう……」
「お、怒らないで聞いてくださいますか?」
「ことと次第によるかな」
「実はあの【エビルモンキー】、セージ様へ恭順の意を示しに姿を……」
「我々、なんといいますか。あの、王に良いところを、是非とも……ご覧になっていただきたかった、というか……」
次第に小さくなってゆく二人の声。
「………………」
「ああああ、あの?」
「おおお、怒っていらっしゃいますか……?」
「俺がいない状態だったら戦闘って、発生してなかった?」
「それはあり得ません。この森も基本は弱肉強食」
「結果的には変わらなかったでしょう」
「あぁ、それならいいよ。平素なら容赦なく殺られているシチュエーションなわけで、俺も別に絶対不殺の博愛主義者ってワケじゃないし。もちろん、快楽的な殺人とか残虐すぎる殺生は嫌だけどな。今回は弔おうにも、ちょっとアレか……」
この世界では、どちらかというと人間に至るまで弱肉強食思想の傾向が強い。
なので、セージのように家族ですらない敵にも関わらず、埋葬し追悼するという価値観を持つ人間は珍しかった。
余談だが、異世界人に【チート】が付けられがちな理由。
一部でそれは、精神的な弱さを補うためではないかとも言われていたりする。
元の世界の感覚のまま、綺麗事のみを胸に、不殺の気持ちのまま魔境へと足を踏み入れれば……いずれは土に還ってしまう運命なことは、想像に難くない。
……仮にどれだけ力があろうとも。
厳しい言い方になってしまうが、例えば【転生チート】を所持していたジーノ。
彼などがその代表格である。
つまり、ガキ大将のごとく暴れまわりこそするが──。
そこには命を獲る覚悟も、理不尽に殺られる覚悟も無い。
それはともかくとして、彼ら一行には【マッピング】スキルすら必要ない。
会話も早々に、当初【エルフの里】と呼んでいた【カムエンペ】の入口へと辿りついたのであった。
「あ、スーリオンさん。この前は伝言どうも」
「おぉ! そのような労いのお言葉──我ら、王のお役に立てることこそ無上の喜びにございますれば!」
恭しく頭を下げるスーリオン。
ちなみに、【会うたびに土下座や平伏】はセージの勅令により、すでに禁止されている。
エセ双子よりはかなりマシにも見えるが、彼もエルフ。
バーバリアンであることに例外はない。
「スーリオン、大儀です」
「もはや王のお通りに通行パスなど必要ございませんね?」
「いいよ見せるよ。ほらコレ、荷物も渡すから検めてくれ。二人の戯言は無視していいから。偽物とか出るかもしれんしな? 立派に仕事をしてくれてて何よりじゃないか」
「さすがはエルフの覇王。どこぞの姫とは違い、我が任務を誰よりも分かっておられる……! そういえばですが、【エルフ代表会議】は王のご到着次第、早々に開始される予定らしいですよ」
セージからの、仕事に対する姿勢に感激する門番。
『やはり彼こそが我らが至高の王なのだ』
その想いから、自然と敬礼の動作を彼にとらせる。
ついでに、元々は自分の主のハズのエセ双子の事はディスっていた。
「そ、そのくらいは私も気づいてましたけどね!」
「よくぞ罠を見破りましたね! スーリオン!」
「姫様方…………先日は聖剣のことで、泣き──」
「せせせ、セージ様っ!」
「そろそろ参りましょうか! 門など! 王がいつまでもいらっしゃる場所ではございません!」
「そんな急かさなくてもいいじゃん。つうか、なんなんだよ、その知られたくなさそうな態度。全く意味ないだろ。俺、その時の当事者だよ?」
コッテリ絞られた内容は──彼女らの名誉のために伏せておいた方が良いのかもしれない。
セージは前回、早く帰りたかった。
よって、休憩などを除けばほぼ【聖剣の間】と【古文書の間】にしか訪れていない。
エルフからの歓待。
実はマトモに受けるのはこれが初なのであった。
「無駄に先端の尖った城……飾りじゃなかったのか」
「はい、この【ホーリー・パレス】こそ王の居城」
「すなわち、王の玉座のあるべき場所です」
「え? いま何て?」
「【ホーリー・パレス】こそ王の居城」
「すなわち──」
「それだ、アイナ。【ホーリー・パレス】……? まるで悪の親玉が住んでそうなのが、この城の名前だと?」
「そ、そうですけど……」
「王よ! 私にも何か聞いてください!」
セージから【物言い】がついたのかと、ビクビクするアイナ。
隣ではエルフィが嫉妬心から、面倒くさい感じでゴネていた。
「わかったわかった。そうだな……エルフィ。セイヤやセージに共通する【聖】って字なんだけど、君は知ってるか?」
「いえ、存じ上げませんが……まさか……!」
「そのまさかだ。よし、じゃあ俺、散歩してくる」
「これは──放置プレイ!?」
「王よ!? さすがにご無体が過ぎやしませんか!?」
「笑止! 君らはすでに一人前のエルフ。なんでも簡単に──答えてもらえると思うなよ?」
「なっ!? これは!!」
「アイナ! 王の──試練です!!」
セージは不敵に微笑んだ。
もちろん、面倒なので適当なだけだった。
それに驚愕するエセ双子。
その様子を見て、セージは『笑止って言葉、便利だな。これからも無駄に使うか』という決意をする。
「答えを出せたら、そうだな……。俺がこの前作った──聖剣・【お掃除棒mkⅡ】を下賜しよう。ストックの都合上、限定一本までな」
聖剣・お掃除棒mkⅡ。
より細かい場所に届くよう、棒の先に可変機構が搭載されている。
要は掃除に特化した、ただただ木の棒である。
「ななななな!?」
「そっ、せっ、えっ!?」
想像の遥か上をいく褒美の品。
混乱しまくるエルフの二人。
ねだった当人のエルフィなどは、目がグルグルしている。
「まぁそんな感じで。頑張ってくれ」
無駄にアワアワしている二人を置き去りに──
彼はエルフの里の散策に出るのだった。
「あらっ、セージ様ではありませんか?」
鼻歌交じりに散歩をしていると、エルフの美女から声をかけられるセージ。
「んっ? ──おお、【アンダリエル】さん。こんにちは。エルフの首都ですもんね。そりゃ当然のごとく、いらっしゃいますよね」
アンダリエル。
セージが普段、文通をしているエルフの長老の名だ。
エルフという種族の特徴から、その見た目は非常に若々しい。
エセ双子の姉妹でも通じるくらいに。
長老はただの役どころの名で、実は若いとも噂をされているが……。
その年齢はヴェールに包まれている。
「あらあら、相変わらずご丁寧に。王なのですから、口調など崩してしまわれても構いませんのに」
クスクスと笑いながら、冗談めいた会話を交わす。
そこに存在するのは、どこか和やかな空気感。
二人は性格的な相性でも良いのか、良好な関係だった。
「なんというか、アンダリエルさん相手だと、どうしてもといいますか。かたっ苦しくしてるつもりもないんですけどね……。なんか、『近所の美人なお姉さん』って感じなんだよなぁ」
「まあっ! お姉さんだなんて! こんな年寄りを捕まえて、どうしようっていうのかしら? ……なんなら、双子から私に乗り換えます?」
「はは、それもいいかもしれませんね。アンダリエルさんもエルフの例に漏れず美人だし。そうだ、今回、エルフの各種族の長が集うって聞いたんですが……ご存じの通り、あの二人はあんな感じなんで。良ければ詳しい情報を教えてくれません?」
「あら? そういえば、あの子らは……。はぁ、自分の王を放って何をやってるんだか……。ご説明よりも、ご自分の目でご覧になった方が早いかもしれませんよ? もう会場の席は整ってるので、後は王のお越しだけなのですけど──そのご様子ですと、まだご存じないようですね。では私が案内しますので、会議室に参りましょうか?」
「あれ? もう集まっちゃってるんですか? 二人からは一言も聞いてないんですけど。いや、門でスーリオンさんがそんなことチラっと言ってたか……。案内は助かりますけど、アイナとエルフィは?」
「段取りの不手際から自分の王の案内不足。諸々を含めて、罰としてしばらく放置しておきます。気づいたら焦って勝手に来ますので大丈夫ですよ。私が代理を務めても、他部族に対し失礼にも当たりませんし」
「現状ソロで散歩してるのは、俺のせいでもあるんですけどね。さすがに罪悪感──いやまあ……居てもそんなに変わらないかな? なにかと情報を小出しにしてくる、エセ双子だし」
フォレストエルフ代表であり、進行役でもあるハズのエルフコンビ。
彼女らの不在で、種族代表会議の開始が決定してしまう。
さすがに可哀そうであるが、ここにソレを止める者は皆無。
まさかの展開である。
※もちろん冗談の以下略。
現在、この作品は累計総合ランキング圏外。
1位とのポイント差はたぶん「760000ptくらい」です(計算が面倒になった)
もはや秒読み。
とうとう僅差で、
ずっと夢だった、1位(届いたらそれはそれで逆に怖い)に手が届くところまで来ているのですが……
ここからの伸びが、非常に厳しいのです……
次のランキング更新が、
この作品が打ち切りになるかどうかの、最後のチャンスだと思います……
少しでも
「宇宙ってロマンがあるよね」「アイキャンフライ!」
「そろそろ新作書いたら?」「おはぎ、うまいよね」
「毎秒更新しろよ!」「粒あんよりはこし餡派かな」
と思っていただけましたら、
広告の下にある【☆☆☆☆☆】を、
【★★★★★】にしてポイントを入れてくださると嬉しいです!
★の数は皆さんの判断です。
もちろん、★を一億個付けるか
2000個付けるかは自由です。
でも「粒あん派」の人だけは★2億個つけなければいけません。
★をつけてもらえるとモチベがめちゃくちゃあがって、
最高の応援になります!
なにとぞ、ご協力お願いします!
ちなみに、おはぎなんですが……
完成させるまでの工程により
「半殺し」「皆殺し(全殺し)」
の種類があります。
物騒ですね。
え? そんなこと知ってた?
すいません!!!!





