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エルフ気まずいアフター・いざ魔法学園

「なんで俺は……魔法学園の問題なんかに首を突っ込んでるんだろう……」


 元に戻ったセージは(なげ)いていた。


「…………」

「…………」


 それに対し、気まずげにしているエセ双子。


「理性を失ったわけじゃないんだけど、何かがおかしいというか。何なんだろうな……。二人とも、何か知らない? って、スマン。さすがに、そんなこと言われても困るよな」


「えーっと。……エルフィ、これ、正直に申告した方がよいのでは……」

「ですね。下手に隠していて後でバレると、今回ばかりは本気でクーリングオフされてしまいます……」


「え、まさか知ってる?」


「すいません。決して……決して! わざとではないのです!」

「実は──」


 二人は、かくかくしかじかと経緯を説明する。


「なるほどなぁ。間違いは誰にでもあるし、そこは今さらしょうがないけど……せめて、話が決まる前に魔法薬の説明をしてフォローするとか、方法があったんじゃないの……?」


「本当に申し訳ございません」

「あの時は、私たちもあまりの嬉しさに浮かれてしまっていて……」


「まあそうか、そうだよな。普段の態度とのギャップもあるだろうし、そりゃあ仕方がないか」


「えっ! 許していただけるんですか!?」

「こんな愚かな私たちを!!」


「いや、別に怒ってはないから。二人とも良かれと思って、気を()かせてくれた上での行動。しかも暴力沙汰とも無関係。タイミングさえ悪くなければ、問題のある行為じゃなかったしな。でも、次は止めるか途中でフォローを入れてくれよな?」


「あ、ありがとうございます!」

「寛大なお心に感謝します!」


『喜びのあまり追加の魔法薬を求めたことは墓場までもっていこう』

 二人は心の中で、固く誓った。


「とりあえず過ぎたことを言ってもしょうがない。国王様とも約束しちゃったし……。魔法学園の問題をどうするか考えるか」


「あれ? そのままお引き受けに?」

「セージ様に過失はないわけですし、お断りなさらないんですか?」


「ん? そりゃ、一度は引き受けちゃったからな。力が及ぶかどうかはわからんが、ベストは尽くしてみるさ。確かに、仲良くなった相手じゃなければ辞退を考えるかもしれないけど」


「セージ様って、責任感が強いですよね」

「そういえば引き受けた案件を途中で放り投げるところ、拝見したことがないです」


「責任感よりも信用問題かな? 商人ほどじゃないにせよ、冒険者も信用商売な面があるんだよ。まぁ、俺の場合は元冒険者に近いから厳密には違うんだけど」


「うっ!」

「罪悪感が()()しに……」


「だからもういいって。それより、国王様から何か通達が届いたりしてない?」


「あ、それでしたら魔法学園に立ち入る免状とマニュアル」

「それから学園の制服が届いてます。制服は着ても着なくてもよろしいみたいです」


「国王様、至れり尽くせりだな……。学園が始まるのっていつだっけ?」


「明後日です。すでに入学の筆記選考は終わってます」

「なんでも、その日に実技の適正試験をして即日にクラス分けを行うらしいです」


「実技か…………。攻撃魔法オンリーだったらアウトだな。後でマニュアルに目を通しておくか」


「さすがに支援系もいるでしょうし、攻撃一辺倒(いっぺんとう)ではないと思いますが」

「仮に攻撃魔法の(まと)当てだとしても、我が王なら(まと)くらい覇気で粉々でしょうし」


「いっつも思うんだけどさ! ことあるごとに出てくる、その【覇気】ってなんなの! 万能なのソレ!? 料理が美味くなったり的を壊せたり──おかしいだろ!?」


「料理に関しては申し訳ございません」

「ですが──我が王は本当に覇気をお持ちなのです。エルフの目は誤魔化せません」


「えぇー……その目、むしろ節穴っぽいんだけど。とりあえず覇気を当てにするのは無しの方向で。問題児か──どう対処するかな。なんとか話し合いの説得で済ませたいけど、相手は暴力沙汰や器物損壊やらかしちゃってるらしいからなあ」


「シンプルに我々エルフをぶつければ良いのでは?」

「ほどよく王に屈服するよう、教育して差し上げますよ」


「目には目を、か……まあ、それは最終手段で。あとエルフィ、そういう調教めいたことは今回求められてないからな。どうしても矯正不可だった場合は問題改善の報告書でも提出するよ」


「では、必要でしたらいつでもおっしゃってくださいね」

「我々は王の剣であり盾でもありますので」


「ああ、そうしてくれれば最悪の場合でも何とか──いや待てよ。『それじゃあ場当たり的に(のぞ)んでも大丈夫かな?』なんて思い始めた時点で、二人に毒されて来てる気がするわ。俺も蛮族思想に片足を突っ込みかねない、ヤバい傾向だ」


「そんな風に頼りにしてくださるなんて!」

「我ら家臣、(ほまれ)に思います!」


「毒されてるっつったろ!? 都合の悪いところをスルーすんな!! 安易な暴力装置に頼りそうな自分に失望しかけてるんだよ!!」


「はい! 荒事に関してはエルフに万事お任せを!」

「王の手は汚させません!」


「いやお前らの手も汚すなよ!! ──あっ」


「どどど、どうなさいました?」

「せ、聖剣の時のような不手際、今回は無いハズ……ですよね?」


 セージの反応から、先日のことを思い出しオドオドする二人。

 二人は聖剣マサユキを鋳潰した件を、未だに引きずっていた。


「責める内容じゃないから心配しなくていいよ。いや、また一時(いっとき)家を空けるってなるとなあ。サスケと畑のこと、どうしようかなと」


「ああ、それでしたら」

「スーリオンに頼めばよいですよ」


「スーリオン? この前きてくれたのもそうだったけど、なんで彼に?」


「あれ、ご説明しておりませんでしたか?」

「彼は【韋駄天のスーリオン】の異名を持つほど、俊足の持ち主なのです」


「……それは結構なことだけど。何でそんな特技を持った人が門番やってんの……?」


「そこはまたの機会にご説明いたします」

「とにかく彼に、農林大臣への伝言を頼みましょう」


「農林大臣……って、キサラギさんか。さすがに頼りっぱなしは、申し訳ないな」


「では、エルフの一族に頼みますか?」

「王の頼みとあらば、一個師団編成で農地の世話に参りますよ?」


「ちょ、待てよ!! 師団って万単位の軍勢だろ!? 俺、戦争の依頼をしたいわけじゃねぇんだけど!?」


「ですが──農業とは、すなわち戦争のようなもの」

「大は小を兼ねるとも言いますし」


「大きすぎるわ! いくらなんでも限度ってもんがあるだろ! ……ふ~、仕方がない。四の五の言える余裕もないし、キサラギさんにお願いするか。報酬とは別に、せめて何か良い王都土産でも持っていこう……」


「では、【エルフ伝書鳩(でんしょばと)】で早速スーリオンに依頼しておきますね」

「我々は魔法学園の準備へと取り掛かりましょう」


「なあ。伝書鳩なんてあるんなら、わざわざスーリオン経由じゃなくて、直通でもいいんじゃね?」


「エルフィ。制服と私服、どちらにします?」

「愚問ですねアイナ。それは勿論、王がお好みの服装ですよ」


「だから!! 聞けよ!!!!」


 こうして──学園潜入への準備は着々(ちゃくちゃく)と進んでいくのだった。

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