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未来への投資

 私の提案に、お姉様は大変に驚かれているようです。


「……私が? 魔法を?」

「はい。その通りです」

「い、いや、それは無理だろう」

「何故でしょうか?」


 魔法なんて、まぁ、魔術も含めて、あんなもの、人間が使える技術の一種でしかありません。

 順路立てて学べば、それこそ子供でも使えるものです。

 実際、魔術の名家という物は、幼稚園ぐらいには教育が始まっています。


 そもそも魔力が無い、というのなら、分かりますけども。


「いや、何で不思議そうな顔をしているんだ。

 だって、私には魔力が無いのだぞ?」

「眠っているだけで、きちんとありますよ?」


 肌の触れ合いをしながら、私はお姉様の内面を探っておりました。


 そして、彼女の中に確かな魔力を見つけ出しました。

 本当に小さくて、一切活性化されていませんが、ある事はあるのです。


 ならば、目覚めさせてやれば済む事です。

 私の魔力を呼び水に汲み上げれば、多分、なんとかなると思うんですよね。

 刹那さんや美影さんは、超能力でそうしておりましたし。


「ぐっすりと眠っておりますが、ちゃんと持っていますからご安心ください」

「だが、私ももう18になるのだぞ?

 二十歳を超えて魔力を保持できるとは思えないが」


 そういえば、魔法少女は二十歳前後で急速に魔力を失ってしまうとか何処かに書かれておりましたね。

 意味不明な事に。


 まぁ、大体の原因は予想が付きますが。


「微睡んでいるだけではないのでしょうか?

 しっかりきっぱり叩き起こしてやれば、問題はないかと」


 尤も、これは希望的観測です。

 魔法少女たちの事を調べさせて貰えれば、詳しい事も分かるのですが、現在は知己を得ておりませんので。


 まぁ、その内です、その内。

 どうせ、近い内に接触するのですから。

 秘密のヒーローを気取る気なんて、更々ありませんしね。

 無意味に疲れるだけですし。


 駄目だったら駄目だった時です。

 その時は、私の魔力を分割して植え付けてしまいましょう。

 ふふふっ、私は星霊であるノエリアと繋がっておりますからね。

 そんな事も出来ちゃうんですよ。

 魔力に関する絶対権限を、疑似的に振るう事も出来るのです。


 否定理由を丁寧に潰していくと、遂に観念したのか、お姉様は静かに訊ねてきます。


「……何で、そうしようと」

「理由ですか?

 まぁ、端的に言えば、お姉様の身を守る為です」

「守る……?」

「はい」


 自衛手段があるのとないのとでは、安全度は大いに変わりますからね。

 大恩あるお姉様を守る為ならば、私は手段を選びませんよ。マジで。


「まぁ、自衛手段は本当に最後の手段です。

 ぶっちゃけ、私の構想では、お姉様が自ら手を下さなければならない状況になった時点で、十割がた負けていますので。

 もう素直に逃げた方が良いでしょう」

「……とても不安な事を言うな」

「色々と、私は悲観的な見方をしたくなる性質でして。

 それはさておき、これから私が用意する本気の護衛は、はっきり言って魔力がないと色々と問題が起きてしまいます。

 なので、魔力を身に付けて戴きます。

 戦えとか言いませんから。

 国がなんか言ってきても守りますから、ご安心ください」

「……そこで、国を当たり前のように引き合いに出せる辺り、お前の異常性が垣間見えるな」


 そう言われると、そんな気もしますね。


 あちらでは、大概の勢力からもう諦められておりますから。

 危険人物認定されながら、完全に放置プレイですよ。

 いや、まぁ、法律の壁を突破する気はないので、別に良いと思いますけども。


「まぁ、お姉様が戦いたいと仰るのであれば、手取り足取り戦の心構えを伝授しますが、出来ればそんな血生臭い世界に、こちらのお姉様には来て欲しくないですね」


 平穏で平和な日常を送れるのならば、それに越した事はないのです。

 間違っても、私の様に日常に違和感を抱いてしまう様な、そんな救い難いウォーモンガーになってはいけません。


 私の言葉に、お姉様は困ったような顔をしました。

 濡れた手で私のスベスベの表面を撫でてきます。


「お前は優しいな……」

「私の優しさは、お姉様に全額振り込んでいますので。

 他の方には、そこまででもありませんよ」


 心は有限なのです。

 私の様に、一度は完全に壊れてしまう程に消費した身ですと、文字通りに身に染みて理解せざるを得ない言葉ですね。


「……そうか。だけど、そうだな。

 そんな優しいお前の世界を、私も見てみたいと、そう思うんだ。

 見られるものなら、な」

「…………見ていて楽しい世界ではありませんよ?」


 多分。

 いえ、私は楽しめますけど。


 それは、どんな相手(例外あり。美影さんとか、無理ゲー)とどんな状況で戦っても、自分だけは確実に大丈夫だと、理不尽なまでに強大な力を宿しているからでしょう。


 命を天秤に乗せた、一瞬の生死を争う者たちにとっては、反吐の出る物だと思うのです。


「それに、私はお姉様の本当の妹ではありません。

 似たような名前と姿を持っただけの別人です。

 無理に付き合う必要はありません」

「それでも、だ。

 我が儘だとは思うんだがな。

 何と言えば良いのかな……。

 うん、お前とも、ちゃんとした姉妹になりたいんだ」


 僅かに悩んでから、お姉様は嬉しい事を言ってくれます。

 とはいえ、だからと言って、簡単に頷いてあげられる話でもないのです。


「……見れば分かる通り、私、ナチュラルに化け物ですよ?」


 プルプルと、粘体となった私を主張します。


 ほ~ら、怪獣なんて目じゃない正真正銘の怪物ですよ~?

 放っておくと、マジで星を滅ぼしちゃうんですからね~?(実績有り)


「……良いじゃないか。

 可愛いと思うぞ?

 手触りも良いしな」


 冗談めかして、お姉様は笑みを浮かべながら私の身体をむにょむにょと揉みました。

 くすぐったいです~。


 決意は固そうですね。

 強引にやり込めてしまうのは趣味ではありません。


 鋼の意志で突き進む者こそが最も偉大である、とは、あちらの世界の教訓です。


 お姉様も、ノエリアも、美影さんも、美雲様も、他の皆様も……刹那さんだって、誰にも負けない強き意思で道を貫き、結果として世界を救ってみせたのですから。


 それに、お姉様の意志を、私が捻じ曲げる事も黙殺してしまう事も、望む所ではありませんし。


「…………仕方がありませんね」


 嘆息して言うと、お姉様は身を乗り出しました。


「じゃ、じゃあ!」

「はい。ただ魔力を持たせるだけでなく、しっかりと戦闘技能まで仕込みましょう。

 そして、共に困難へと立ち向かいましょうか」

「ああ! 必ず、お前と一緒に戦うとも」


 笑顔でそんな事を宣言してくれました。


 なんと眩しい真っ直ぐな瞳でしょうか。

 いえ、決して本当のお姉様が薄汚れているという訳ではないのですが。


 何と言えば良いのでしょうね。

 本当のお姉様が清濁併せ呑む事を知っているとすれば、こちらのお姉様は清のみとでも言うのでしょうか。


 こう、綺麗過ぎて悪玉な私として溶けて消えてしまいそうです。


 それはともかくとして、私と一緒に、ですか。


 なんと無茶な。

 私と同じ戦場に立つなど、今となっては魔王のお歴々でも難しいというのに。


 まぁ、一応は期待しておきましょう。


「戦闘まで仕込むのでしたら、私は厳しいですからね?

 中途半端は危険なのです」


 他者を害し、殺す為の技ですから。

 やるなら徹底的に、です。


「ああ、分かった。

 存分にしごいてくれ」


 幸いにも、頼もしいお返事をいただけました。


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